第26話『ねこぴょいレジェンド』
ここは競ねこ場だ。ねこ娘たちが緑の芝生のうえを疾走ている。
「いけッ! そこだ、差せっ!」
「ねこさん、がんばってーっ!」
手に汗にぎる熱いねこ娘同士の競い合い。少額でも身銭を切っているせいか熱が入る。
「「いっけぇー!!」」
後続から一気に加速。次々と他のねこ娘を追い抜き、抜き去り、勝利! グレーターサムライとの戦いなみに熱い勝負であった。
俺とステラは勝利を祝うためにハイタッチ。賭けた金額が少なかったらリターンもそれほどではないが、楽しかった。
◇ ◇ ◇
ここは踊って歌ってたのしいねこぴょいが見れると評判の酒場。ねこ娘たちのレースに賭けていた人たちが集まるのでそれなりの広さの酒場だ。。
「では、勝利を祝して」
「「かんぱーいっ!!」」
エールがキンキンに冷えてやがる。この村でもウルタールと同じように蜂蜜酒を勧められたが、やはり最初の一杯はエールだ。
「このお店、すごく活気あるね」
「うむ。随分と繁盛しているようだな」
さすがに黄金の英雄亭ほどの広さではない。だが、村の規模を考えたら相当な大きさだ。この酒場は海産物がメインだ。
新鮮なエビとかカニとかも出てくる。海産物は毎日、魚人が持ってきてくるらしくとても新鮮だ。料理も酒場の雰囲気にあわせてパンチが効いた物で食が進む。
そうこうしているうちに、村の名物がはじまった。ねこぴょいだ。舞台の上で、キャットレースを競いあっていたねこ娘達がかわいらしい衣装をまとい、歌い、踊る。
「すごいね。かわいい衣装を着たねこさんが歌って踊ってるよっ」
「うむ。走って、踊って、歌う。なかなかに芸達者だな」
走って、歌って、踊る。そんな生き方もアリだな。俺はそんなことを考えた。
「とことで、ステラ」
「なになに?」
「ねこ娘はギルドの情報にも無かったが、ステラは知っていたか?」
「うーん。私も聞いたことないねっ」
「そうか、世界は広いな」
この世界で冒険者が必要とされている理由のひとつでもある。この世界は広く、未知の部分も大きい。それゆに冒険者にたくされた役割は大きい。
「そえにしてもこの村の男は働き者だな」
「そだね」
この村では、男は働き、ねこ娘はねこぴょいをし、魚人は食料を持ってくる。誰一人損のないWin-Winな関係。完璧なエコシステムが成り立っている。
「どうやらねこ男はいないようだな」
「みたいね。女の子しか産まれない種族なのかなっ?」
「かもな。雪女みたいな感じかもな」
「雪女?」
「うむ。あくまでも噂だがな。雪山とかでそういうのが居るらしい」
この村は人族だけではなく、エルフ、ドワーフ、ノーム、ポークル……。数え切れないほどの種族が共生している。
グレーターサムライを倒せる強者のみが集っているせいか、ウルタール村の一件のような話も聞かない。
この階層の男たちが迷宮攻略に本腰を入れたら飛躍的に攻略が加速しそうなのだが、まぁなさそうだ。
「たのしんでますにゃん?」
*おおっと!*アッシュは背後からハグされた。ちなみにこのねこ娘は村を案内してくれた子だ。どうやら、ここで働いているようだ。
「あっ、ニャコト写本の司教さん。会いにきてくれたのかにゃんっ?」
「いや、偶然だ。それと、ナコト写本だ」
このねこ娘。ボディータッチがすごい。ねこ娘はそういうスキンシップをする種族なのかもしれない。服越しに猫のノドのゴロゴロ音みたいなのが聞こえる。
「あっ、すみません。えっーと、ごめんなさい。いや、失礼しました」
ねこ娘が俺の手首に巻かれたミサンガを見て詫びる。
(司教さん、さきに言ってくださいよっ!)
ねこ娘が小声でささやく。
(なにを?)
(その手首の飾り。ポークルの女の子が大切な人に贈るものじゃないですか?)
(そのようだな。もちろん俺にとってもステラは同じように、大切な人だが)
(もー。このっこのっ! ノロケちゃってぇっ!)
ヒジでつつかれた。
(どこまで行ってるんですか? Aですか? Bですか? まさかC!? どういう関係か教えてください!)
なんだろう。まるで中学生女子トークみたいな流れになっている。ABCとか言われても、俺にはまったく分からないのだが。
(ステラとは同じ馬小屋でともに寝起きをする仲だ。それがどうかしたか?)
(きゃーっ!!/// 馬小屋で寝起き、このいけずっ! あやうくドロボウ猫になるとこでしたよっ!)
二の腕に猫パンチをくらった。それなりにはやいジャブだ。女性とはいえ人パンチなのでそれなりに痛い。それにしても馬小屋はロマンチックだろうか?
(語尾がなくなっているようだが。大丈夫か?)
(あっ。にゃっはっははははは。にゃぁー☆)
とりつくろってももう遅い。まあ誤魔化された感じはするが、どうやら語尾は種族固定ではないようだ。
「にゃっ。司教さんの彼女さんにもお酒お注ぎしますね」
「あっ……。私のっ、ジュースっ」
ステラの飲みかけのジュースの色がエールっぽい色だったせいか勘違いをして注いでしまったようだ。
混ざってしまったものは仕方ない。酒の飲めないステラの代わりに、俺が飲みほした。トロピカル味のエールだ。めっちゃ甘い。
「追加注文だ。一番高いジュースを2つ頼む」
ねこ娘はグラスを2つ持って猫のようにキャッと去っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます