第2話 Detest
言葉は嫌いだ。嫌いなのに、ある日夢の中で手にした武器は、持ち手が杖のように長いスピーカーハンマーだった。
──夕暮れ空の夢には、廃墟のようになった建物が点々としている。
その中で、夢に入り込んだ魔物が幼い少女を狙っていた。
(とめないと)
私はスピーカーハンマーをしっかりと握り、魔物に向かって走り出す。
幼い少女に伸びた腕に、全身を使いながらスピーカーハンマーを振り落として切断した。
間髪いれずに土を踏みしめ、横に振り、魔物の腹へと攻撃を繰り出す。穴を空けたところでスピーカーを振り上げる。地面に向かって大きく下ろし、その体躯を真っ二つにした。
魔物が消失する。
私は慌てて振り返り、幼い少女の安否を確認した。
幼い少女は目を丸くして、こちらを見ている。外傷は特に見当たらない。
私はほっと胸を撫で下ろした。
スピーカーハンマーを拳から消して、幼い少女の頭を撫でる。抱きしめ、背中を優しく摩った所で、幼い少女の姿も消えた。
(良かった)
そう思った所で視界に影が射す。
振り向けば、先程と同じような魔物が私を見下ろしていた。
近づいてくる腕を見て、咄嗟に横へと飛び退り、再びスピーカーハンマーを召喚する。隙も与えずに振りかぶり、魔物を滅多打ちにした。
ふう、と息を吐くと、後には静寂だけが残る。
私は手元にあるスピーカーハンマーを見やった。
(夢は、理想か本質を表す……か)
喋りたくない私にとって、これはどちらにも当てはまらないような気はするのに、このスピーカーハンマーは最初の日からずっと召喚される。
言霊を使うにも、口を開かなきゃいけない。とことん私には不向きな武器だとは思う。
(言霊を使う気にはなれない)
私はスピーカーハンマーを消し去った。
(現実に戻ろうかな)
そう思いながら顔を上げると、とある学校が目に入る。
『ばっかじゃねーの?』
記憶の中で、先輩達が笑った。
(馬鹿は、どっちだ)
思い出して不機嫌になってしまう。
簡単に人を傷つけるから、言葉は大嫌いなんだ。
(帰ろう)
現実に帰るよう願って、私は夢から脱出した。
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