第21話 GPT3の脅威
人工知能型の会話ソフト。ChatGPT。
OpenAIによるチャットが、恐ろしく良く出来ているという、今話題のチャットAIである
もうすでに試した人も多いのかもしれない。
私は触ってはいないのだけど、使った人たちの話が彼方此方に出ていた。
このOpenAIが出してきた答えが、場合によっては人間が書いた文章と見分けがつかないという。
このAIの前に、暫く前だがマイクロソフトが出した「Tay」というチャットボットがある。
これはTwitterによって教育されるようになっていた。
しかし「Tay」は荒らしのユーザーたちによって不適切な調教が行われて、あっという間にサービス停止に追い込まれた。
この原因は暫くの間、AIがこうした荒らしに対して、まったく無抵抗のまま、全て覚えてしまって無作法になったと、論じられていた。
この本当の原因は、"Repeat After Me"という、『私の言った言葉を繰り返して』
というコマンドにあったということが分かってきているが、このコマンドを実装した技術者たちは、荒らされることをまったく考慮していなかったのではないかという、別の批判を生む切っ掛けとなったようだ。(元々、このAIは中国発らしいので、あの国の様な言論統制が罷り通っていることが前提だったのであろう。)
chatGPTは短文の詩や、かなり短い小説、ショートショートだと優れた物も出るとの事。
このOpenAIはまだベータ版だけど、これが正式サービスになった時、比較的短い小説はこれの生み出したもので、埋めつくされる可能性もある。
文章で答える試験の問題も解いてしまうらしいし、今後これは荒れそうである。
"StackOverFlow"という、プログラム系のサイトでは、質問と回答の場所で、このチャットソフトに答えさせたプログラムコードが大量に、投稿されたという。
間違っているモノやそのままでは使えないものなどがかなり混ざっていて、それを無チェックで投稿してきたため、運営サイトがそのコードが妥当なのか調べる羽目になり、運営のキャパシティを越えてしまったため、GPT3により生成したコードは禁止というお達しが出たほど、見た目はまともそうなコードも出すという。
絵を描く人および小説の投稿サイトであるPixivで、AI生成の画像データで埋めつくされたことがあり、現在はそれを分離しようとしてはいるが、サイトはAI物を拒絶はしないといっていて、状況はカオスである。
その波が小説サイトにも来る可能性がある。
もっとも、異世界物をAIは理解できていないらしく、もっと普通の、現代もの小説に押し寄せる可能性は高い。
ただし、文章自体は綺麗に出来ているので、作家性というべき部分は、むしろ無個性である。
それ故に、それを読んだ最初の人物がその文章を土台に彼方此方、変更、あるいは偏向させて、色を付けていくと、もう元の文章がAIだったのは判らなくなるだろう。
ただし、今の所、長編小説はまったく無理のようで、前後のつながりを長いスパンで保ちつつ、そこに起伏を付けるというのは、AIにはまだまだ大きな課題のようだ。
従って、1話ごと、短編のオムニバスの様なものをAIで書かせては、それを少しだけ変えて、常に一人の人物がそこにいる、というような物は可能かもしれない。
まだザックリとした感想でしかないのだが、膨大な知識を持ってはいるのだが、創造という部分は、まだこれからなのと、そこに一貫した論理はあっても倫理は別である事。(知識の多くをWikipediaに頼っているので、その危険性も指摘されている。)
あるいは、犯罪系、ノアール系小説の場合は、それをAIは倫理問題から作品として提示できない。(ここはまだ、今後変わる可能性もある)
作っていく文章が、小説として長くなった場合、かなり先の文章は最初のほうの文章との関連性が続いていなければ、長編娯楽小説足り得ないという、『理解』が決定的に欠けていて、この部分は今のAIで解決するのは相当難しい事のようである。
このOpenAIが小説専用に、かなりの長編も書けるようにチューニングが施された場合は、その限りではないかもしれないのだが、間違っている場所を探す、編集? と校正を行う人の苦労が膨大なものになる可能性が高い。コスト的に見合わなければ、こういう長編をAIで造るのはやらないだろう。
絵の方のAIはまるで小学生の描いたような素描を一時データとして入れて、数秒程度できちんとした線にするものが現れてきている。
これをさらに二次データとして入力すると、さらにブラッシュアップされる。もう一、二段、これを繰り返して、漫画で良いんじゃないかと言い出す作家まで現れる始末。
そうなればストーリーも、元になる部分をOpenAIに入れて、展開をAIにやらせる作家も出てきそうである。
これを、日本の「漫画」と呼んでいいものか、私には分からない(し、心の中では思いっきり否定している)が、たぶん漫画家が手で漫画を描かなくなって行く未来も、そこにはあるのだろう。
アニメは、技術者が高齢化してしまったため、若手に技術がうまく継承できていない。(特に背景が壊滅的らしい。)そのうち全て3Dで、人物を作るようになるだろう。
3Dで造った人物が動くストーリーを、アニメと呼ぶ時代が来るのかもしれない。
そうなれば、実写ものと、どう区別を付けるのかすら、曖昧になるだろう。
AIは、進歩を続けている。
どこまで創造分野に入ってくるのかは、今の所、学者にも判っていない。
ただ、哲学者は、ソレが音楽であれ、絵画であれ、小説であれ、根本的な部分で人間への『理解』が出来ていないAIが造り出すものは、深い物には絶対にならないだろうと述べている。
結局のところ、何かを造り出す行為は、膨大な、膨大な知識と言葉をうまくつなぐ、あるいはうまい位置に点を打つ(線を描く)、人工知能は機械学習によってソレを行い、表面上そういう風に見えるモノは出来ても、そのAIは中の物や事物を『理解』して書いて(描いて)いる訳ではないから、パラメータが一億あろうが、二億あろうが、暗くて深い「溝」か「崖」が存在しているのである。
ここを無邪気に、無視して喜んでしまえる人は多い。
だが、そこをAIサイエンスが解決してしまったら、もうAIと人間の区別はつかないだろう。
しかし。そこを解決するのは相当先であろう。人間の感情や機微を文字通り『理解』しなければならないのだ。
それまではAIの造り出した「不気味の谷」を内包する「何か」を見続けることになる。
そして、案外近いうちに人の手で考えだして作り出される物に、再びスポットライトが当たるのではないか? と思い始めた。
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