第3話
¶第4期東国【マリオネット】¶
1
「では、そうね。早乙女くん、自己紹介を頼めるかしら」
そう言って、干支君は俺を手で指す。
あんまり目立ちたくないんですけど。
段々視線が怖くなってきたので仕方なく自己紹介をすることにした。
「早乙女零です。魔法は『引力』といって自分になんでも引きつけることができます。応用はかなりきくのでおいおい話そうと思います」
終えると干支君はこちらへ視線を移し口を開く。
「早乙女くんは後で集合ね。時間がかかってもかまわないから可能な限り話してもらうわ」
「りょーかいです」
少し不服そうに答えると結城が頭を撫でてくれた。
うん、もう帰りたい。
「はいっ!私は結城凛、魔法は『言霊』で魔力を込めて言葉を発するとその言葉に由来する力が使えるの。〝あー〟とか〝うー〟とかはダメだけど例えば『
ほう。
「遠西の顔は微妙!あ、ホントだ今可愛いって言おうとし…たぁッ!」
「あとで戦おう!早乙女くん!」
「現在進行形で頭吹き飛ばされそうになったんですけど!」
「今のは早乙女くんが悪いでしょ」
最後は結城のダメ押しと干支君の視線で俺がヘタレてこの戦いは幕を閉じた。
それから、名前と魔法だけを喋っていき約30分が経過した。
もちろん不良男も不服そうだがちゃんと喋ってくれた。
すると、教室の前扉が開き若い女性が1人入ってくる。
「席につけ。ホームルームを始める」
2
前扉から入ってきた若い女性は生徒が着席したあと教卓に上がり話を始めた。
「まずはお前たち、入学おめでとう。早速で悪いが今日はやることが多い。業務連絡に入ろうと思うが異議のあるやつはいるか?」
けっこう雰囲気あるな。というかホントに若そうなんだが。
みんなが黙っていると1人、俺の後ろのやつが手を挙げた。
さっきの自己紹介で
「先生の名前を知りたいです。それから年齢も」
お、いいことを質問してくれた。
雰囲気的に話しかけやすそうな先生じゃないから素直にありがたい。
「
めちゃくちゃ若いな。第一期生ってことは1ヶ月前までここで戦ってたってことか。
「他に聞くことがあればあとにしてくれ。とにかく12時半までに終わらせないといけないことがある、優先したい」
そう言った桜川先生は生徒が黙っているのを確認し話を続けた。
「それではまず班決めを行いたいと思う。班を簡単に説明すると今後行う特別戦で行動を共にする3人組のことだ。1年間は変更が効かないので慎重に行いたいが決め方はお前達に任せようと思う。決め方について意見、案のあるやつはいるか?」
干支君が手を挙げ、起立し口を開く。
「先程、桜川先生が不在の間にお互い軽くですが自己紹介をして魔法の共有は済ませました。ここに私が考案した相性のいい3人組が書いてあります。これをプロトタイプとして決めていくのはどうですか?」
桜川先生はそれをきいて少し嬉しそうに答える。
「そうか、それはかなり順調だ。私はお前のやり方で構わない。他に異論のあるやつはいるか?」
先生、その質問無意味です。もう干支君さんにこのクラスの生徒は脅されてます!って言ってやりてぇ。
生徒たちに異論がないのを確認した干支君は教卓へ上がり黒板に生徒の名前を書き始めた。
3
まもなく、干支君が黒板に名前を書き終えると教室がザワつく。背中を任すのがコイツでいいのかとかだろう。
俺の見解だと全く文句がない配置だ。
俺たちの班は少し強引な気がするが他はバランスがきちんととれてる。
「改善案がある方はいますか?」
干支君のその質問に結城が手を挙げた。
「全体的には凄くバランスがとれてると思うんだけど桜花のトコがちょっと心配じゃない?」
やっぱり言うと思った。他の班は近接、中・遠距離、サポートで上手くバランスがとれてる。
でも俺の班は干支君、俺、久宝の3人。
久宝の魔法は癖があるが俺が近接、干支君がサポートだったとしても中・遠距離がいないとなると仲間の死亡率が格段に上がってしまう。
「いや、問題ないわよ?だって私がいるもの」
そう、『なに当たり前のこと心配されてるの?』って感じの顔で干支君が答える。コイツの場合、本気だから怖い。
「んー、でも死なれたくないし」
1年間、変更が効かないというところに引っかかってるのだろう。結城が予想以上にねばる。
あんまり早い段階で言いたくなかったんだが仕方ない。
「ちょっといいか?」
干支君が顎を引く。
「結城、この班でも問題ないと思うぞ」
「でも、桜花がサポートと近接でしょ、久宝くんは癖があるけど中・遠距離ではないし、早乙女くんも聞いた感じだとサポートと近接って感じじゃん?中・遠距離いないとやっぱりきびしいよ?」
「いや関係ない」
「どういうこと?」
結城が不思議そうに言う、周りの生徒も似た感じだからはっきりと言っておこう。
「俺、負けることないから」
そう、言うと一同は静まり返るがここまで防寒していた桜川先生がいきなり笑いだした。
「はははっ、そうだな。結城、それから疑問を覚えるものたち、零は強いぞ?」
この人俺のこと知ってるのか?
「まあ、よく分からないが先生のお墨付きだ。干支君もかなりやれるし久宝も魔法を考えれば死亡率はかなり低い。問題なくないか?」
「そこまで言うなら信じるけど」
きっとさっきの魔法の『真』がまだ持続されてるから嘘ではないと思ったんだろう。
「よし、では班はこれで決定する。そして次にこの1年東国の団長と副団長を決めていきたい。まずここまでの過程をみていて団長は干支君で問題ないと思うが異論のあるやつはいるか?」
先生、ここで異論なんて言ったら殺されますって言ってやりてぇ。
誰も異論を言わないのを確認し、干支君は話を引き継ぐ。
「それでは副団長ですが私は早乙女くんを指名します」
「は?」
思わず声が出た。
干支君に睨まれた。怖い、帰りたい。
「副団長は団長会議に同席できるらしいから護身用でお願い」
「なにかめんどくさくなることはあるか?」
「副団長なんてただの飾よ、大したことはないわ」
教室がザワつく、きっと干支君が俺を護身用と言ったのが原因だろう。たしかに俺、見た目弱そうだしな。
「なら、やってもいい」
「異論のある人は?」
誰も手を挙げない、それどころか驚きで忙しいんだろう。
「それではこれより干支君桜花筆頭、第4期東国。名を『マリオネット』とする」
4
「お疲れ様。時間内に終われて良かった。もし過ぎてたらペナルティがあったからな」
おい、先に言えよ。きっとみんなそう思っただろう。
「すまない、ペナルティのことは言えない約束なんだ」
声に出てたかと思って少しヒヤッとした。
「では次に入学式で一ノ瀬が話してた監督生について紹介する。入ってこい」
すると前から同じローブを纏った人達が入ってきて前に横一列に整列した。
「名前を呼んだ順に前に出て左から詰めていけ。目の前の生徒が監督生になる」
なるほど、おそらく2年生だろう。数は26人か。4人死んだんだな。
「名前を呼んでいく、早乙女零」
俺からか。
意外だったので少し動揺した。
前にいるのは横に1つ結びをした髪型の女生徒。
まあ、遠西よりはかわいいな。
「久宝灰流、霞暁人、城守…」
「私の名前は
桜川先生が呼名してる途中でそこそこ大きな声で榊と名乗ったその先輩はそういうと俺に抱きついてきた。
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