第5話 衝突
「こっちからシャロールの匂いがするぞ」
「うん……」
私は狼になったグレイルの背中に乗って、シャロールちゃんを追っていた。
グレイルの背中、暖かい……。
「ただ、人狼じゃない匂いもするから気を付けろよ」
「え……!」
それって、人間……?
緊張しながら、シャロールちゃんと出会った森に入る。
「そろそろ見えるはずだ」
話し声が聞こえる。
「それでね! 人狼の人達に会ったの!」
「へー、人狼か。僕も会いたいな」
森の開けた場所に出ると、シャロールちゃんと……。
「人間……!?」
「しっぽがないな」
私達が驚いていると、向こうもこちらに気づいたようだ。
「なんだ!? 狼!?」
「あ! レティリエ!」
どうしよう……!
「シャロールちゃん、人間は危ないわ!」
「そうだ、離れろ!」
しかし、シャロールちゃんは戸惑い、なぜか怒り出した。
「だから佐藤はそんな人じゃないって!」
この人が佐藤なの?
そんな人じゃないってどういうこと?
「仕方ない! レティリエ、降りろ!」
グレイルは私が降りると、人間に向かって走りだした。
なにをする気なの?
「うわ!」
人間は恐怖で頭を抱えている。
このままじゃ、グレイルに襲われちゃう。
「ダメー!!!」
今にも噛みつきそうなグレイルの正面にシャロールちゃんが躍り出る。
「うお!!!」
「キャッ!!」
二人がぶつかる。
しかし、シャロールちゃんは後ろの人間に優しく受け止められた。
「大丈夫か?」
私もグレイルに歩み寄り、心配する。
「大丈夫?」
「ああ、これくらい大丈夫だ」
よかった。
「それより、シャロールが心配だ」
人間に抱きかかえられたシャロールちゃんは気を失っているみたい。
すると、人間は私達に話しかけてきた。
「君達が人間に敵対的なのはわかった」
「けど、まずはシャロールの手当をさせてくれないか?」
「……」
どういうつもり?
私達を騙そうとしているの?
「ダメ……かな?」
人間は私達をじっと見つめる。
その表情は困っているように見える。
「どうする、レティリエ?」
グレイルも困っている。
私だって、わからない。
でも……。
「……いいわ」
「え!? お前……!」
「シャロールちゃんがあんなに信用してる人なのよ」
「信じてみましょう?」
もしものときは、グレイルがいるわ。
「ありがとう!」
人間は深々と頭を下げた。
なんだか悪い人には見えない。
「付いてきて」
来た道を引き返す。
「え、どこに?」
「ここじゃあ、ベッドもないわ」
「きちんと手当できる場所まで案内するわ」
「本当に……ありがとう……!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます