第3話 湧き上がるこの気持ち
「え?」
振り向くと、そこには……。
「グレイル……」
「なあ、レティリエ」
彼はまぶしいくらいの笑顔で私に語りかける。
「私は……狼には……」
「まだなれないけどいつかきっとなれるさ」
「……」
彼の……優しい言葉を聞いて、私の目が潤んできた。
「わー! それなに!?」
シャロールちゃんがグレイルを見て、大きな声をあげた。
「さっきそこで見つけたうさぎだ」
グレイルは右手に持ったうさぎを高く掲げる。
「すっごーい!」
シャロールちゃんはグレイルに歩み寄る。
「名前、なんて言うんですか?」
「グレイルだ」
「グレイルさん、腹筋さわってもいいですか!」
「え、ああ、もちろんいいぞ!」
グレイルは勢いに押されて、了承している。
その顔はまんざらでもなさそうだ。
「佐藤と大違いだー! ガチガチー!」
「でも、しっぽはモフモフー!」
「ヘヘヘ、そうだろ?」
なんだろう。
この胸のうちから、湧き上がる感情は。
「グレイル!」
思わず声が出ていた。
「な、なんだ?」
「レティリエさん?」
私が突然大声を出したので、二人共キョトンとしている。
「うさぎ……置いてきたら?」
「……台所に」
「そう……だな」
「わりぃ!」
グレイルは孤児院に入っていった。
「シャロールちゃん」
「は、はい!」
「怖がらせちゃってごめんなさい」
私が謝ると、シャロールちゃんも下を向いて返事をした。
「私こそ、レティリエさんを怒らせちゃったみたいで……ごめんなさい」
気まずい空気が流れている。
私、どうしてあんなこと言っちゃったんだろ。
「シャロールちゃんはご飯はまだなんだろう?」
沈黙を破ったのは、マザーの一言だ。
「今から食べていきなよ」
「え! いいんですか!?」
マザーを見て、シャロールちゃんはよだれを垂らしている。
「もちろんだよ」
「わーい!」
「さ、こっちだよ」
二人が孤児院に入っていった。
私はその場で立ち尽……。
「おーい! レティリエー!」
「飯食わねーのかー?」
彼が呼んでる。
「あ、今行く!」
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