第2話 人狼は狼に……

「あなたの名前を教えてくれる?」


「私はシャロール!」


 シャロールちゃんね。


「私はレティリエよ」


「レティリエさん!」

「よろしくおねがいします!」


 シャロールちゃんは礼儀正しく頭を下げた。


「どうしてここに来たの?」


「わかんない!」


 わかんない……か。

 自分の意志でここに来たわけじゃないのかな?


「……迷子なのね?」


「そうかも」


 シャロールちゃんの顔が暗くなる。

 彼女自身も状況がわからず、不安なのかもしれない。


「とりあえず、人狼の村に行きましょ」


 私は立ち上がって、手を差し出す。


「人狼って?」


 シャロールちゃんはキョトンとして、私を見つめる。


 彼女は人狼を知らないのかな。


「私みたいに狼の耳としっぽがある人のことよ」


「こんなの?」


 シャロールちゃんは興奮気味にしっぽを左右に振っている。


 かわいいな。

 孤児院の子どもたちを思い出す。


「シャロールちゃんとはちょっと違うわね」


「?」


「ほら」


「わー! モフモフー!」


 私がしっぽを見せると、シャロールちゃんは目を輝かせて見つめている。


「触ってもいい?」


「ええ、どうぞ」


「へへへー、ありがとうございます」


 嬉しそうになでている。


 このままずっと触らせてあげたいけど……。


「早く行きましょ」


「はーい」


――――――――――――――――――――


「あら、どうしたのレティリエ」


 孤児院の入口でマザーに出会った。


「この子が森で迷っていて……」


「こ、こんにちは!」


 シャロールちゃんは緊張している。


「かわいい子ね」


 マザーはシャロールちゃんの頭をポンポンする。


「でも、この耳は人狼とは違うわね」


「しっぽも違うのよ、マザー」


「あら、ホントだわ」

「このしっぽは……」


 そこで言葉が途切れた。

 何かを思い出そうとしているみたい。


「とにかく人狼じゃないわね」


 すると、シャロールちゃんは私とマザーを交互に見て、こう尋ねた。


「みんなは人狼なの?」


「えぇ、そうよ」


「だから、そんな耳としっぽがあるんだ!」


「それだけじゃないわよ」


「え?」


「こんな風に狼になれるのよ!」


 マザーが珍しく狼に姿を変えた。


「わー! すご~い!」


 シャロールちゃんは興味深そうにマザーの周りをグルグル回っている。

 しかし、おもむろに私に目を向けた。


「レティリエもできるの!?」


「え……」


「こ〜んなにきれいなしっぽのレティリエはさ!」


「……」


「きれいな狼になれるんでしょ!?」


「私は……」


 シャロールちゃんの憧れの視線が痛い……。


 なんて答えたらいいの……?


「ああ、レティリエも狼になれるぞ」

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