異世界転移しています!〜ここは「白銀の狼」の世界です〜

砂漠の使徒

白銀の世界へ

第1話 黒髪の猫娘

「フンフンフーン♪」


 私は鼻歌を歌いながら、今朝作ったジャムとパンをかごに入れて家を出る。

 今日も彼に会うために森に急ぐ。


「佐藤〜!」


「あれ?」


 誰かの声がする。

 村の子供が迷子になっているのかな?


 私は心配になって、声が聞こえる方に急ぐ。


「うわ〜ん!」


 茂みをかき分けた先には、私よりちょっと年下の女の子が泣いていた。


 頭にはオオカミの耳……?

 なんだがちょっと違うような……。

 しっぽは……オオカミじゃない。

 人狼じゃないのかな?

 それじゃあ、人間?

 ううん、人間にはこんな耳やしっぽはないはず。


「お姉さん、誰?」


 目の前の少女は涙をためた目をこすりながら、私を怯えた目で見つめている。


 誰かはわからないけれど、泣いている子を放っておけない。


「どうしたの?」


「ここ、どこ?」


「どこって人狼の村よ」


 少女は首をかしげた。


「人狼?」


 人狼を知らないの……?

 ということは、やっぱり人狼じゃないの?

 別の種族?


「どうしてここに?」


「わかんないよ〜!」


 少女は再び泣き出した。

 とりあえず泣き止んでもらわないと話が進まないみたい……。

 なにより彼女はとても不安そうだ。


「そこに座ろう」


 私はちょうどいい大きさの切り株に少女を座らせた。

 そして、かごを開けてパンを取り出す。


「なにしてるの?」


「これはね、私が作ったとってもおいしいジャムよ」


 私がジャムを塗り始めると、少女は泣き止んで、私が持っているパンをじっと見つめている。


「はい、どうぞ」


「わー! ありがとうー!」


 パンを受け取ったときの笑顔が明るくて、先ほどまで泣いていたとは思えない。


 かわいい女の子。


 私は心の中でそう思った。


「いろいろ訊いてもいいかな?」


 あっという間にパンを食べ終えた彼女に、私は語りかけた。


「うん!」


「じゃあ……」

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