個食のススメ

八百十三

個食のススメ

 個食こしょく。あるいは孤食こしょく

 そんな言葉がSNSや飲食店のポップに並ぶようになって久しい。悲しいかなテレビではなかなか話題にならないし、取り上げようという気も無いようだけれど。

 つまるところは一人で食事をすること。会食しないこと。言ってしまえばソロ外食。これである。

 一人ででもお店を訪れて飲食すれば、自分は飲食店に金を支払える。お酒が飲めるならお店で保管するお酒もそこそこ減らせる。そして飲食店が仕入れざるを得ない食材をそこそこ食べて消費できる。

 お店の側もフードロスを減らせる。お客さんとの会話も最小限で済ませられる。そして何より働けるから給料がもらえる。

 いいことなのだ。


 さて、本題に移るとして、個食の何がいいか。

 いくつかある。他人との会話に気を取られて、食事が疎かにならないこと。自分の好きなタイミングで、好きなように食べられること。食事の合間に何かをしていても、誰にも文句を言われないこと。お酒の管理を自分でしなくていいこと。そして何より、周囲の人間から距離を取って、基本的に一人でいられること。

 ぱっと思いつくだけでもこれだけある。

 世の中の一般的な人間という生き物がどういう理屈で動いているか、自分には推し量れないところではあるので可能性の域を出ないが、おしゃべりに夢中になって料理が冷めたり酒がぬるくなったり、ということは個食ではなくなる(スマホに夢中になっている場合はこの限りではない)。

 食べる順番だとか速度だとか姿勢だとか、そういうことに口うるさく言われたり神経質なまでに気にしたりしなくてもいい。姿勢がいいことに越したことはないが。

 食べながらスマホをいじっていても特段怒られることはない。なんなら筆者は居酒屋で酒を飲みながらスマホで小説執筆ということをよくやる。

 日本酒のような管理が面倒なお酒を自分で管理するのは面倒だが、お店で飲むならその心配も要らない。保管場所についても考えなくていい。

 そして今どきのお店の中は結構スペースが広く取られているから、隣の席の会話が近くて集中できない、ということが無い。肩や手がぶつかることもほぼ無くなった。

 結果、非常に精神的に楽な状態で食事ができるのだ。お店によっては個室や半個室が用意され、明確に区切りが出来ていることも多い。

 自宅で食事をするような調理、配膳、片付け、洗浄を考えなくていいし、少しだけでも店員と会話ができるというのは、非常に楽なことだと思う。


 ところで、どうしてここまで個食について筆者が語れるか、だ。

 実際、昨年の一度目の緊急事態宣言の頃こそ外食などけしからんという風潮ではあったが、此度の緊急事態宣言の前後、いや昨年の秋ごろから、「けしからんのは会食、パーティー、会合その他の密接な距離で他人と接することであって、外食を利用することそのものは悪ではない」という空気が広がってきた。

 飲食店側も昨今は「5人以上でのご利用はお控えいただいています」という対応や、「少人数でのご利用でしたら歓迎します」という対応が目立ってきている。

 つまるところ、個食は誰にとって悪いことでもない。大いに行うといいと、個人的には思っている。

 何故か。

 筆者はもうかれこれ8年は、個食を趣味として率先してやって来たからだ。


 筆者の青い鳥のSNSや赤いカメラのSNSのアカウントを知っている方ならご存知のことと思うが、自他ともに認める酒好きで、かつ美食家である。

 特に日本酒、ワイン、ウイスキーに明るく、同時に東京都内の鶏料理を出す居酒屋と、ワインバルについては、確度高く美味しい店を案内できる自信がある。ショットバーについては引き出しが少ないのであれだが、初めての店にも臆せず足を踏み入れることは出来る。

 筆者の友人にも酒飲みはたくさんいるし、筆者以上に酒を飲む友人は多い。

 だが、「そのお酒美味しいよ」「そのお店の店員さんいい人だよ」と案内できる店の幅広さに関して言えば、友人間でも上の方に位置する程度だと思っている。


 何しろ酒飲みによくある「一種類のお気に入りの酒を連続で何杯も頼む」という頼み方をせず、店にある様々な酒をとっかえひっかえ頼むスタイルの酒飲みなのだ。加えて飲んだ酒はほぼ必ずラベルを撮影し、青い鳥のSNSに味と風味の感想をつけて投稿する。それに加えて外食の記録用ブログにも記載する。

 おまけに基本的に一人で黙々と飲み、食べ、醜態をさらすことなく一人で帰る。

 酒も料理もよく味わって、風味や感触を分析しながら飲食する。

 店内の様子、店員の動き、キッチン内部の様子をつぶさに確認する。これは小説執筆の資料集めのため、という側面が大きいが。

 そういう飲み方をしているものだから、店長さんや店員さんにはよく顔と名前を覚えられるのだ。覚えられたらこちらも大事にしないと申し訳ない。

 結果、自分のSNSの画像欄は酒の写真と食事の写真でいっぱい。小説について知りたい人については探しにくくて申し訳が無いが、こちらも作品本数が多いし更新頻度もまちまちだから、なかなかツイートで案内できない。


 そんな状況だから、よくSNS上の友人からおすすめのお酒を聞かれたり、おすすめのお店を聞かれたりするのだ。自分がおすすめしているお店の名前を憶えられて、友人がふらりと訪れたりすることもある。

 結果として、自分が友人間での飲み会を企画することが、コロナの前は度々あった。そして大概、自分が飲み会を企画すると「美味しいところに連れて行ってもらえる」と喜ばれたものである。

 特に自分は「安さ」「速さ」「量」はもちろん考慮に入れるが「味」「種類の豊富さ」「店員の動き」「清潔さ」の方を重視する。飲み放題でソフトドリンクをしっかり提供してくれて、料理が美味しいお店ならばお酒を飲めない人でも楽しめるからだ。

 そういうチェックも、一人でなら気楽に隅々まで見える。友人と連れ立って行かないとコース料理をチェックできないという場合もあるが、大概のメニューはアラカルトでも注文できるからさして問題はない。


 コロナが収まった後も日々は続く。そしていつ収まるかは未確定。

 そういう状況で、日本に深く根付いた外食産業を、どこまで維持して盛り立てて行けるか。

 その鍵は、如何に我々個人が飲食店を利用し、支えて行けるか。

 そこにかかっていると、最近とみに思うのだ。


 筆者のおすすめのお店を知りたいということであれば全力でお教えするので、筆者ユーザーページに記載されている青い鳥のSNSのアカウントを参照するなり、この短編に応援コメントを残すなり、していただければ幸いである。

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