ソロ〇〇!

てこ/ひかり

プロローグ「出会い」

「うぉおおおおッ!! 喰らえェええッッ!!」


 より疾く!


「しゃらくせええぇぇェッ!! そんな技、あたいに通用するとでも思ってんのかよぉぉオッッッ!!」


 より、強く!!

 熱気の篭る道場に、少年少女の声が響き渡る。


 ソロ太は、その勢いに圧倒されていた。

 震える手で、ランドセルを胸の前でぎゅっと抱きしめた。目の前の光景が、信じられなかった。


 なんだよ、これ……。

 ちょっと、出来心で、道場に見学に来ただけなのに……。

 

 目下、演武……いやもはや実戦形式と呼べるほどの戦闘が、今もなお続けられている。

戦っているのは、恐らくこの道場の門下生であろう。

目の前にいる二人はまるで、気合いで空中に浮いているように、ソロ太にはそう見えた。


 いや、実際浮いていた。


 気合い……全身から溢れ出る生命エネルギーで、少年少女は空を飛んでいたのだ。


 ソロ太から見て右側、赤いオーラを身にまとった少年が、不敵に笑う。

「こないだみたいに、簡単にやられないでよね!」

 すると、左側にいた青いオーラの少女が、激情を露わに睨み返す。

「ほざけ! つい最近、あたいの新技見ただけで半べそかいてたのは、どっちだったかしら!!」


 両者が叫び終わらないうちに、青と赤のオーラが、道場の真ん中で激しくぶつかり合う。

弾かれ、空中で方向転換し、そして再び衝突。

何度も、何度も。

窓ガラスが割れんばかりの衝撃波と咆哮に、ソロ太は思わず耳を塞いだ。そこからはもう、二人の、目にも留まらぬ技と技の応酬が始まった。


 ソロ太は、息を飲んだ。


 なんだよこれ……。

 二人とも、まだ僕と同じくらいの歳なのに……。


「調子はどうだい? ソロ太くん……」

「あ、先生……」


 ふと気がつくと、ソロ太の後ろに先生が歩み寄っていた。先生はソロ太の肩にそっと手を添えた。


「面白いだろう? どうだい? キミもやってみる気になったかい?」

「先生、僕、ぼく……」 

 不意にソロ太の目が泳いだ。恥ずかしそうに、もじもじと体をくねらせる。

「でもぼく……こんなのできっこないよ! 無理だよ! こんなの、やったこともないし……」

「先生も最初は、電卓使ってたんだぜ?」

「え……!?」


 思いがけない言葉に、ソロ太の顔が上がる。逆光の向こうで、先生がニッと笑った。


「そうなの!?」

「そうだよ。便利だからね、電卓。だけどいつしか……ちょうど君と同じ歳くらいだったかな? 先生が始めたのも」

「そ、そうなんだ……」

「ソロ太くんを誘ったのは、キミが、できると思ったからだよ」


 真っ直ぐな眼差しで少年を覗き込む。ソロ太は頬を紅潮させた。

 道場の窓際には、先生が若いころ獲得したトロフィーや賞状が、所狭しと並べられている。


 全国大会優勝3回。

 世界選手権優勝7回、準優勝1回。

 銀河トーナメント優勝1回。

 超銀河団コンテスト優秀賞2回。

 

 その先生が、マスター・盤田盤大ばんだばんだいが、ソロ太に白い歯を浮かべた。


「ソロ太くん。キミも彼らといっしょに、算盤そろばんで全国を目指さないか?」


 ソロ太がゴクリと唾を飲み込んだ。


 数秒間の沈黙。それからゆっくりと、ソロ太が口を開いた。


「先生、その、算盤そろばんってやつを習ったら……」

 声はまだ、震えていた。だけどソロ太の両目が、その透き通るように真っ直ぐな瞳が、しっかりと盤大先生の目を見つめ返していた。


「ぼくもあんな風に……オーラをまとって戦えるようになりますか……!?」

「なる!!!!!」


 こうしてソロ太の、算盤そろばん少年少女たちの青春の幕が上がった!!!!!!



『そろばん王・ソロ太!』


全国28局ネットで、毎週火曜夕方6:05分〜放送!

(※一部地域を除く)


絶対見てくれよな!! 君もレッツ、ソロbang!!!(BANG!!!)

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