第十五話 絆の一閃
一方、王宮前ーー
ヴォレリアとカルデアは迎撃をなおも続け、なおも作戦を考え続けていた。どのように敵を痛みつけるか。同じやり方では相手にバレてしまう。
なので、定期的に一手を変える。
「どうしますか、カルデアさん」
「そうだな、一回倒してから王子と合流する。そして、今とてつもないパンドラの箱を心の中で開けてしまったんだよね」
闘いながら、笑顔を作ってカルデアは言った。そして、剣で相手を弾き、一瞬のいとまを作った途端、話し出した。
「殺しちゃっても、いいんじゃない。数台から、話を聞きさえすればいいだけの話じゃないか」
そう言うカルデアの目は、空腹で飢え切ったライオンとか言う類のそう言う凶暴な性格の肉食獣が、数日ぶりに獲物となる草食獣を見つけた時のような目をしていた。
久し振りに倒せるのだ。殺しで、相手のお役に立てるようなチャンスが訪れているのである。ただ全員を殺すと言うわけではなく、数人くらいは生かしておくつもりだった。
ヴォレリアは少し変人を見るような目で彼を見つめてから、答えた。
「いいですね、その提案。乗りましたよ」
その返事を聞くや否や、凶器のような目になるカルデア。
「おしっ……、」
ヴォレリアは幼い頃に極めた剣技を久しぶりに取り戻せると思ったせいか、少しばかりの笑顔になった。カルデアも、その表情を伺ってみせた。
愛刀、《ベルナロク》をその手に握り、ヴォレリアは興奮して叫んだ。さっきとは人格を完全に入れ替えて。
「いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいでえええええええええぇぇぇぇぇぇすねぇェエエェェェェェェェェ! ここで会うたが、ひゃーーーーーくねぇ〜んめぃーだ! やってやりましょう」
おしっ、そうと決まれば。と、愛刀を握りしめた二人の剣士は、敵が襲いかかってくるのを合図にね、と決めた。
退屈が吹っ飛ぶ。久しい。カルデアにとっても、ジェボールにとっても。
数分経つと、敵が襲いかかってきた。斧を持った人型が、カルデアの腕を切ろうと狙う。
しかし、予想外が起きた。今にも腕を切られようとなったカルデアが、なぜか不敵な微笑みを浮かべていたのである。そしてその微笑みの矛先は、ヴォレリアである。
ーー今だ。
「私の《エイグロス》」
「僕の《ベルナロク》」
剣のつかを恐ろしい握力で握りしめ、力を剣の刃先に全集中させて込める。そして、その刃をお互いの剣に重ね合わせる。すると、二つの剣は眩いばかりの光を放ち、スライムのようにドロドロの半透明になる。と思うと、二つの剣は粘土のように融合し、一つの剣へと変貌した。
変貌した一本の剣を、二人は二人でともに握りしめる。
ザシュ、ザシュ、ザッシューン!!
スラスラと言う軽快な、だが重い勢いで斬撃を披露する。人型のものは斧を捨てて、バラバラになって砕け散った。
それどころか、攻撃の風圧で、周りにいた敵がいなくなっている。遠くへ行っている。しかし周りには、明らかにさっき殺めた奴のものではない血液も認められた。
「やっ、たのか」
その声に、ヴォレリアは喜んでうなずく。
しかし、その声の主人は、ジェボールだった。
「しょうがない。殺害が最善の選択なら、よしとしてやる。これが平和のためだと俺が認めたから、許してあげよう」
その言い方は、まるでお手柄お手柄という上から目線だった。
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