物語全体に死の香りが漂っていて、決して明るい話ではないのに鬱々としないのは、物語全体が花で彩られているからか。口語体に近い文章が多い印象の中で正統派小説的(こういう言葉があるかは謎ですが)な文体がものがなしい雰囲気とヒロインや後宮という舞台装置の美しさを際立たせています。人物の心情や行動原理の描写も細やかで、フィクションの中でも確かに生きている存在感が感じられます。書籍化されたとのことで、本棚にいてもらいたい一冊です。