3.第二皇子の悲願

 見えない糸が張り詰めているかのようだった。ここ最近の内廷は静まっているものの、緊張感が漂っている。その理由が判明したのは、ある朝の藍玉らんぎょくとの会話だった。


「第二皇子派と第四皇子派があるそうですよ」


 紅妍こうけんの髪を梳きながら藍玉が話す。最近の宮城内にぴりぴりとした空気が流れているのを藍玉も感じ取っていたようだ。


「なぜ派閥が必要になるの」

「みな、二人のどちらかが次の宝座に座ると考えているからですよ。早々にどちらかの味方について良き立ち位置を得たいのでしょうね。たとえばわたしの蘇家でしたら、伯父上が秀礼しゅうれい様付きですので、第四皇子派になります」


 さらりと藍玉は言ってのけた。彼女の伯父にあたる清益しんえきは秀礼付きの宦官だ。秀礼が帝になれば安泰を約束されるが、融勒ゆうろくが帝になった場合は厳しい立ち位置になる。これは藍玉にも影響することだが、随分あっさりとした顔をしていた。


「蘇家は伯父上の判断に任せていますから。わたしはどちらでも構いません。このまま冬花とうかきゅうにいるのが一番です」


 そう言って藍玉はくすくすと笑った。

 しかし二人の皇子が争えば、後宮は二分されるだろう。帝は長く臥せっている。その分だけ次の話が出るものだ。


「永貴妃様は当然のごとく融勒様に。甄妃様は秀礼様の後見人になっているので秀礼様側になるでしょう」

「となれば、秀礼様と甄妃の口添えをもらって妃になったわたしは、第四皇子派として見られるわけか」

「そうでしょうね」

「面倒事に巻き込まれるみたいで、あまり良い気がしない」

「ですが、中立を保ちたくとも周囲はそう見てはくれませんよ」


 藍玉はそう言って、紅妍の髪を結い上げる。ここにきたばかりの頃に比べ、髪艶はよくなった。藍玉はまだだと手入れに燃えているが、紅妍の目からすれば美しい紅髪になっていた。


「でも、既に宝剣は選んでいますからね」

「宝剣が選ぶ?」


 どうも帝や皇子の話になると宝剣が出てくる。

 聞き返すと、藍玉は「わたしの知っている限りですが」と前置きをして話し始めた。


「髙の宮城には代々伝わる剣があります。普通の剣では祓えぬ鬼霊もその剣では祓えることから鬼霊祓いの宝剣と呼ばれているそうです。秀礼様がお持ちになっている剣ですよ」

「ああ、あれが……」

「あの剣は鬼霊祓いの才がないと扱えないのだとか。才のない者が持とうとしても振るうどころか持ち上げられないのですって」


 秀礼が宝剣を扱うところを一度見ているが、軽々とした扱い方だった。そこまで重たい剣のように見えない。

 すべての者が鬼霊の気を感じるわけではない。紅妍のような仙術師か感覚の鋭い者らである。紅妍が鬼霊の気配を感じ取る時は秀礼も同じく感じ取っている。おそらく秀礼は鬼霊に関する感覚が敏感なのだろう。才がある、というのも納得できる。


「それで、その剣を振るうことができるから何になる?」

「代々の帝は宝剣に選ばれ、宝剣を振るうことができました――ですから宝剣に選ばれ、所持できることはひとつの判断材料となります」


 つまり、宝剣を扱える秀礼が有利ということだろう。なるほど、とあいずちを打つ紅妍だったが藍玉は曖昧に笑う。


「けれど最後に選ぶのは帝です。永貴妃様の後ろ盾を持ち、諸侯らに幅広く信を得ているのは融勒様です。秀礼様は宝剣に選ばれるまで隠されていましたから、そういった点では劣ります。帝がどちらを選ぶのかわたしたちにはわかりません」


 紅妍が思っていたよりも秀礼は難しい立場にいるようだ。


(秀礼様は今頃何をしているのだろう)


 秀礼は他の美味しい果物を持ってきたいと燃えているようだが、紅妍の舌には蜜瓜の芳醇な甘さが残っている。次に会える時が待ち遠しいと考えてしまう。その理由について考えてみたが答えはもやがかかっているようで、うまく言葉にまとまらない。


(餌付けをされているみたいだ)


 あのように美味しいものを食べさせてもらえるのかと思えば楽しみなところもある。だが、秀礼が甘味を持ってこなかったとしても構わない。会えばそれだけで、紅妍の知らない世界が広がっていく気がした。


「あら。華妃様、秀礼様のことを考えています?」

「は――い、いや、そんなことは」


 心のうちが声にでていたのかというほど、藍玉が鋭く問う。どうやらお見通しだったらしい。


「先ほど、とても可愛らしく笑っていましたよ。頬も赤らんでいて美しゅうございました」

「違う。わたしは果物のことを考えていただけ」

「果物から秀礼様のことを思い出されたのですね。誤魔化してもわかりますよ。華妃様は秀礼様の前になると、意地を張ったり照れたりと表情がころころ変わりますもの」


 仕上げの簪を挿そうとしていた藍玉は「やはりこちらにしましょう」と厨子ずしから白歩揺を取り出した。


「今日の夕刻、秀礼様がいらっしゃるそうですよ。だから、こちらの歩揺に致しますね。先ほどのように微笑めば、紅髪に白蓮華の歩揺が映えて美しいでしょう」


 そこまではしなくてもいいと慌てる紅妍に、藍玉は楽しんでいるようだった。

 髪に歩揺が挿される。藍玉の言う通り、紅髪に白蓮華の花が咲いたようでよく似合うぶん、紅妍は困惑していた。


(でも、わたしは帝の妃であるから、皇子である秀礼様と親しくするのはよくないだろう)


 琳琳でさえ、第四皇子の近くにいる紅妍を嫌っていた。先日の融勒の口ぶりから察するに、彼もそれを知っているに違いない。案外、人は見ているものだ。そしてこちらの思惑とは異なる解釈をして広めていく。

 難しいと思う。本来ならばあまり接しない方がいいのだろう。けれど今日の来訪予定を聞いて、なぜか心待ちにしている自分もいる。




 昼餉まで時間がある、という頃だった。事前に断りもなく、冬花宮に輿がつく。


「華妃様」


 藍玉、そして霹児が部屋にやってきた。二人は紅妍の元にくるなり手を組んで揖する。


最禮さいらいきゅうの融勒様がいらっしゃいました」

「……融勒様が?」


 先日会った時は随分と素っ気ない態度を取っていた。それがどうして、冬花宮まで来たというのか。


「共に北庭園の七星しちせいていまで来て欲しいとのことです。華妃様にご相談したいことがあるとか」


 事前に文も寄越さずにきたということは喫緊の用か内密な話かのどちらかだろう。何にせよ永貴妃からの依頼がある。鬼霊に関する話かもしれない。紅妍は頷いた。



 内廷は最北に庭園がある。後宮にいる庭師でも最も腕のよいものがここの管理を任され、季節に合わせて草花が咲き誇る美しい場所である。ここは高木も植えられているので菩提樹ぼだいじゅえんじゅの木がのびのびと育っている。黄櫨はぜの木は季がくれば葉を色づかせて庭園を華やかにさせるのだろう。


 北庭園には二つほどの亭がある。そのうちの一つが池のほとりにある七星亭だ。亭は小さくこじんまりとした場所なので、庭散策の休憩として使われるような場所である。七星亭は十角の形をし、上には翠色に塗った屋根がのる。三方を開け放っているので風がよく通り、庭の美しい景観を楽しむには最適の場所だ。

 融勒と共に北庭園の七星亭に入る。融勒は供の宦官に告げた。


「人払いを。少し華妃と話したい」


 最禮宮の者や冬花宮の宮女には聞かせたくない話をするらしい。亭の椅子に腰掛けた紅妍は、息を呑んで話を待った。

 亭の周りから人の気配がなくなる。距離を開けたところで控えているのだろうが、そこまでは声も届かないだろう。融勒は外を見やり、誰もいないことを確かめてから口火を切った。


「華妃に相談したいことがあります」


 融勒はまっすぐに対面の紅妍を見る。


「鬼霊祓いの才はどのようにしたら得られるのか、教えてほしいのです」

「……鬼霊祓いの才とは、華仙術のようなものを?」

「何であれ構いません。今すぐに鬼霊を祓える力が欲しいのです。才が身につかないのならば、私が鬼霊を祓う術でもいい」


 そのような相談をされるなどまったく考えていなかった。そもそもこれは努力によって身につくものではなく、生まれつき才を持つか持たないかである。紅妍の場合は花痣という才を持つ者の印があった。花痣のない白嬢はそこまでの才がなく、花詠みもできない。


(なぜ、融勒様は鬼霊祓いをしたがるのだろう)


 先日は逆のことを言っていた。最禮宮の鬼霊を祓うなと言っていたのである。それが今日は自ら鬼霊を祓いたいと相談している。紅妍は訝しみながら融勒に訊いた。


「あの鬼霊を祓う気はないと言っていたのでは? あの鬼霊について困りごとがあるのならばわたしが出向きます」

「いえ。これは最禮宮の鬼霊とは別です。あれを祓いたくて相談しているわけではありません」

「ではなぜ」


 そこで融勒は口ごもってしまった。紅妍は頑なに融勒から視線を外さない。相談してきた理由を知らずに答えたくなかった。第二皇子と第四皇子の派閥問題がある以上、中途半端な動き方はしたくない。

 融勒はしばし考え、それからうつむいた。諦念混じりに呟く。


「私は、宝剣に選ばれたいのです」

「宝剣……ああ、鬼霊祓いの剣」

「あれは才を持つ者しか扱うことができません。私には持ち上げることすら叶いませんでした。どうしてもあれを振るえるようになりたい」


 融勒は手のひらに視線を落とす。おそらく、その手で宝剣に触れたのだろう。手のひらには融勒だけがわかる宝剣の重みが残っているようだった。


「もしくは今なら――鬼霊がついた今なら宝剣を持つことができるかもしれない」

「鬼霊がついた? まさか、それが最禮宮の鬼霊だと……」

「あれは最近やってきました。何も語らぬ鬼霊ですが、最禮宮に住み着いたということは私に潜んでいた鬼霊の才が開いたのかもしれない」


 紅妍は眉間に皺を寄せて話を聞いていた。


(鬼霊が住み着いたから才が開くなど、あるわけがない)


 自らが鬼霊の才を持っているからこそわかる。その程度で、鬼霊の気配に敏感になることはない。鬼霊は生者にそういったものを与えない。生にしがみつくだけの悲しい存在なのだ。

 けれど融勒は、最禮宮の鬼霊に心酔しているようだった。


「あの鬼霊は春燕宮と最禮宮を行き来します。最近はもっぱら最禮宮に留まっている。宝剣を握るべきは私だと奮い立たせてくれるかのように」


 そこまで話し終えると、融勒は紅妍に向かって頭を下げた。


「だからどうか、鬼霊祓いの才を得る術を教えてほしい」

「できません」


 融勒は鬼霊のことを誤解している。紅妍は冷ややかに答えた。


「鬼霊祓いの才は生まれつき得るもの。才のない者が祓う術はありません」

「……そんな」

「鬼霊が住み着いたからといって才は得られず、潜んだ才が開くこともない。鬼霊は痛みと苦しみに耐え、生に縛られる生き物。そこに住み着いたのはおそらく最禮宮の何かに執着を持っているからです」

「鬼霊が私の前に現れたことには意味があるはず。あの鬼霊は私に似ている。何か意味があるはずなんだ――そう、宝剣。私がもう一度宝剣に触れればきっと」


 宝剣は既に秀礼を選んでいる。だが融勒は宝剣を諦められないのだろう。鬼霊の才を欲しがったことも、鬼霊祓いを得たいことも、すべては宝剣を握るために繋がっているようだった。

 融勒は両手で、紅妍の手を掴む。すがりつく子供のように見え、その哀れさに紅妍の胸が痛んだ。


「もう一度、私が宝剣に触れる機会がほしい。華妃様から秀礼にお願いできませんか」

「いや……そのようなことにわたしは……」

「第四皇子と親しいという華妃様ならば、きっと秀礼も頷くことでしょう。どうか私のためにお願い致します」


 頭が痛くなりそうだ。紅妍は顔を歪ませてため息をつく。鬼霊のことならば良いのだが、厄介すぎることに絡んでしまった気がする。それに、どれだけ断っても融勒が諦めることはないだろう。


「……話すだけは話してみます。必ず成るとは約束できませんが」


 譲歩して出した答えだった。約束はできないが秀礼に話すことぐらいなら出来るだろう。

 これに融勒は表情を綻ばせていた。


(鬼霊が吉事を運ぶなんてないのに)


 鬼霊に喜んでしまうほど融勒は追い込まれていたのだろうか。次期帝になるべく宝剣を持ち上げろと、周囲からの圧力がかかっていたことは想像がつく。だからこそ、融勒も鬼霊の才を求めたのかもしれない。


(鬼霊が春燕宮と最禮宮を行き来していた……つまり永貴妃と融勒様の元を通っていたのか)


 鬼霊の身なりは後宮にそぐわない貧しいものだった。しかし、現れる場所が決まっているということは、そこに因縁もしくは想いを残しているということ。あの鬼霊は苦しみながら最禮宮にいる。

 紅妍は七星亭から北庭園を見渡した。風が心地よく、菩提樹の葉がさらさらと音を立てている。葉の揺れる音は、華仙の里でもよく聞いた。だからか、いやなことを思い出す。


(わたしは、この才などなければいいと思っていたのに)


 鬼霊の才を示す花痣を恨んで生きてきたのだ。それを求める融勒のことが、紅妍にはよくわからない。



 融勒は七星亭を出て行った。このまま最禮宮に戻るのだろう。輿を見送った後、紅妍も亭を出る。せっかく北庭園まで来たのだから少し見て回ろうと思っていた。冬花宮から連れてきた藍玉ら宮女たちを呼び、北庭園を歩く。


(秀礼様にどう切り出せばいいか)


 話すだけ、と言いながらも迷いがある。融勒が直接秀礼に話さず、紅妍を通そうとしていることから、融勒側は秀礼とそこまで親しくないのだろう。秀礼が、融勒のことをどう考えているのかはわからない。

 心のうちを憂いが占めている。この後秀礼が来ると聞いているが、それまで楽しみにしていたのが一転している。見上げれば空にも鈍色の雲がかかろうとしていた。


「華妃様、どうなさいました?」


 紅妍の憂いを察したらしい藍玉が聞く。見れば供に連れてきた他の宮女らも不安そうな表情をしていた。


「いや……大丈夫」

「何かありましたら言ってくださいね。空も雲り、風も出て参りました。そろそろ戻りましょうか」


 確かに風も出てきた。槐の葉が先ほどよりも騒がしい音を立てている。この分だと夜には雨が降るのかもしれない。


「では戻ろう」


 そうして踵を返そうとした時だった。同じく北庭園に訪れていたのであろう者が紅妍の方へとやってくる。


「あら。華妃様」


 しん琳琳りんりんだった。紅妍に恭しく礼をしたが、その目元は華妃である紅妍のことを見下すように冷ややかだった。


「密談は終わりましたの? 華妃様ったら融勒様とも親しくなさっているのね」

「……なぜ、それを」

「とぼけても無駄ですよ。わたし、見てしまったんですから。亭の方で華妃様と融勒様が親しくお話されているのを」


 琳琳の態度が冷たいものである理由はすぐに理解できた。琳琳は紅妍と融勒が七星亭にいるのを見てしまったのだろう。人払いをしていたといえ近くに宮女らが控えていたから、話を聞き取るほど近くには寄れないはずだ。遠くから二人がいるのを見ていたのかもしれない。


「秀礼様につくと思えば今度は融勒様……華妃様は随分と顔が広いのですね」

「何が言いたいの?」

「わたしは見たままを申し上げてるだけです。優柔不断の華妃様は、どちらの皇子が帝になっても良いように動いているのでしょう?」


 琳琳にとっては話の内容はわからずとも『華妃が融勒と密談していた』という現場さえあればいいのである。彼女は密談の内容を好き勝手に想像し、その口で語る。


(厄介な人に見られたのか)


 紅妍は顔を強ばらせた。対する琳琳はというと楽しそうにくすりと笑みを浮かべている。


「……くだらない話はいい、わたしは戻る」


 琳琳を相手にしても無駄だと考え、紅妍は背を向ける。だが琳琳は止まらない。


「今度は秀礼様の元にでも向かうのかしら。嫌ですわ、浅ましい」

「なにを――」

「でも残念なことね。秀礼様にはこの辛琳琳がいますもの。秀礼様をお守りするのはわたし」


 よほど秀礼を慕っているのだろう。攻撃的に紅妍を睨めつけていたまなざしは秀礼の名を語る時だけ甘くなる。陶酔しているのだ。


 そこへ藍玉が間に入った。


「華妃様、参りましょう。お時間です」


 琳琳に絡まれている紅妍に助け船を出したのだ。そのことに心の中で感謝しつつ、琳琳から去る。


(周りの人がどう見るかはわからない、か)


 琳琳はそれ以上追いかけてこようとしなかった。安堵しながらも、気持ちは晴れない。


(面倒なことにならなければいいけれど)


 北庭園の葉が揺れる。鈍色の分厚い雲は次第に空を覆い尽くし、そのうちにぽつぽつと雨粒が落ちてきた。


***


 秀礼は夕刻にやってくるはずだった。だがどれだけ待っても冬花宮の庭に輿が着く気配はない。空は雨模様となり、湿った空気が屋内にまで入りこむ。肌に纏わり付いて気持ちが悪い。


「なかなかいらっしゃらないですね」


 藍玉が言った。淹れたての茶をつくえに置く。このままでは秀礼が来るよりも先に夕餉の刻となりそうだ。

 そうしてしばし持っていると、震礼宮の者が訪れた。藍玉に通され、こちらの部屋にやってくる。秀礼が来たのだと思い立ち上がった紅妍だったが、やってきたのは清益しんえきだった。


「申し訳ありません」


 清益はそう言って頭を下げる。いやな予感がした。期待し緩んでいた紅妍の表情が翳る。


「今日は秀礼様は来られないかと」

「何かありましたか?」

「急な来客がありまして、その対応で忙しいのです」


 秀礼の身に何かあったのではないことにほっと息を吐きながらも、残念に思ってしまう。

 その様子を眺めていた清益はくすりと微笑んだ後、懐から文を取りだした。


「こちらは秀礼様からの文です。何でも、私のいない時に読まれるようにと言付かっております」

「わたしに、ですか?」

「ええ。どうやら大事なことが書いてあるらしく、読ませてはくれませんでした。ひどいものですねえ」


 一体何が書いてあるのだろう。紅妍は文を受け取る。

 読ませてくれなかったと言っているが清益は文の内容が思いついているのだろう。訝しむ紅妍に告げる。


「……明日、私は所用があって震礼宮を離れます。どうかよろしくお願いしますね」


 謎の言葉を残して清益が去る。その意味がわかったのは文を開いた後だった。

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