四半世紀以上前から続く明晰夢のお茶会

第２７会 エクスカリバーと共闘

　エクスと話が付いた頃、ウリエル様がクスクスと笑っていた。

　「何？逃げる相談？

　ミカエル様に泣きつけば何とかなると思った！？」

　暴風を巻き起こすウリエル。

　どうやら本気で殺しに来るらしい。

　「エクス、力を借りてもいいかい？」

　「え？主様、私を使ってくれるの？」

　「本気のウリエル様ってミカエル様に並ぶんだ。

　特にミカエル様に技を仕込まれてるから手が抜けないんでね。」

　「……うんっ！」

　天からダーン！と大剣が突き刺さる。

　エクスカリバーだ。

　エクスがキラキラ輝いて剣に戻る。

　「こういう時、僕の小説の主人公ならどうするかな。

　一撃で終わらせるんだろうけど、僕に出来るだろうか。」

　「あはははは！自分の小説の主人公！？

　結構根暗な事してるのねぇ！

　そんなんで天使に勝てると思ったら大間違……、え？」

　スパーンと暴風をエクスカリバーを振り抜いて引き裂く。

　「なっ！？」

　「ま、根暗なのは認めますがね。

　槍、出さなくていいんですか？

　神槍ロンギヌス、まぁカシウスかもしれませんが。」

　「何で知ってるの！？」

　「出してもらわないと困るんです。

　多分耐えられませんよ。

　その根暗な技を使いますんでね。」

　「ククク、死にたいようね！

　いいわ！出してあげる、ロンギヌス！」

　天に舞ったウリエルが綺麗な長い槍を召喚する。

　「やってみるか！究極四閃！」

　一気に腕を引き絞り、切っ先を突き出す。

　しかし、ウリエルに変化は無い。

　「あっはははは！何やってるのよ！バカじゃないの！？」

　「大剣流石にこの技では重いな、それに技を名乗らんとダメか。

　放たれると怖い技なんだが。」

　「はい、死ーんだ！」

　ウリエルが槍を振りかぶって一気に降下してくる。

　「……ふうーっ、姫龍閃が究極四閃！万里疾閃！」

　同じように切っ先を引き絞り、突き出す。

　「無駄……！へ？」

　バリバリバリ！と黒い稲妻がウリエルに向かう。

　「何これ！？」

　ドーン！と大きな衝撃を食らってウリエルが叩き落とされる。

　「がはっ！う、ぐっ……！がふっ！」

　立ち上がろうとするが地面に崩れ落ちるウリエル。

　「口ほどにもありませんね、ウリエル。

　まぁ貴女の攻撃も人智は超えていますよ、速度も威力も。

　でも人智レベルです。

　シュライザルの衝撃は見えなかったようですね。

　黒い稲妻は見えましたか？

　あまりの威力で次元の裂け目が出来た結果です。」

　「シュ、シュライザル……ですって……！？」

　「名前を聞かなかった貴女の失策です。

　多少は聞きかじっているんじゃないですか？

　呪われし二刀の持ち主です。

　精霊使役数では神以上です。

　２３万ですよ。

　天使では５万が限度でしょう。

　それでもシュライザルは私を屈服させなかった。

　自分の限界を知りたかっただけだった。

　守るためにしか戦わない。

　まぁ、単純に女の子に甘いだけかもしれませんが。」

　「ミカエル様、その言い方酷くないですか？」

　「ふふ、ウリエルにロンギヌスを出させたのは先程の技が我々が自動で張っている魔法障壁を容易く破れると踏んだからですね。

　あんな細いロンギヌスに向かって大衝撃を放つとはいい精度をしています。

　それでもウリエルにはこのダメージですからね。

　散々バカにされたのに、貴方は甘いです。

　……まぁ、嫌いではありませんがね。」

　「うぐっ……、立てない……！」

　「はい、ウリエル様、手を貸します。」

　「要らないわ！」

　パンッ、と差し出された手を払いのけるウリエル。

　「ありゃま。」

　「あっ、こいつ何てことを！」

　剣から出て来たエクスが怒りの表情でウリエルに歩み寄る。

　「エクス、だめ。」

　「何で！？酷くない！？

　文句言うなら負かせて見ろって言ったくせにいざ負けたら強がって！

　勝手すぎない！？」

　「僕だって同じ立場なら悔しいよ。」

　「主様はそれ以前にそんな発言をしない。

　いつも自分以上に相手を思いやってる。

　だから、私はこの天使を許せない！」

　「でも、ダメなんだよエクス。」

　「どうして！？」

　「……ウリエル様はね、僕の憧れでもあるんだ。

　だから、許したい。」

　「むぅ、主様がそこまで言うなら……。」

　「……だそうです、ウリエル。

　シュライザルの憧れだそうですよ？」

　「うぅ、うえーん。」

　「はりゃ、泣いちゃった。」

　「あらら、ウリエル様すみません。」

　「ぐすっ、何でこんな強い奴が優しいのよー！」

　「え？」

　「あーっ！この天使、私の主様を取る気！？」

　「はいはい、そこまで。」

　リーフェが何やら綺麗な瓶を持って来て場を制する。

　「……何よそれ。」

　涙を拭きながら厳しい視線を送るウリエル。

　「高橋メロディ製カンデラ入りラムート狂い酒～。」

　「リーフェ、何それ。」

　その言葉にビクッと反応したのはミカエル。

　何かありそうだぞ？