第8話季節は夏?それとも…(前編)

「ねぇ!君達ってドラマ撮ってるんだよね?」


こんな始まりはどうだろう。きっと物語と言うのは、こう言う風にイキナリ始まるんだろうな。

ここから始まっても支障は無いが、少しだけ時間を巻き戻そう。



季節は夏…と言っても10月なので秋寄りの夏だ。

もう秋に向かわないといけないのに世の中は、まだまだ暑い。地球の温暖化と言うのが原因の様だ。

セミだってまだまだ現役だと主張してるぐらいだ。

そんな中、俺は学校へと行く。まだ中3の学生だからな、当然だ。

 朝一番からこの嫌な暑さ…テンションなんて下がりまくり。良く言うだろ?残暑が厳しいざんしょって。全くその通りだ。


そんな変な事を考えながらも俺はみぃを待っていた。

別に約束なんてしていないのだが、近所に住む幼馴染だから一緒に登校するのは変な事じゃないだろ?



いや、

いやいやいや、



変な事だわっ!!!

俺は自分で自分に突っ込む。

付き合ってもないのに一緒に登校なんて不味いだろ!!

しかも俺は所謂インキャ、かく言うみぃは学年のマドンナでヨウキャ。そんな2人が一緒に登校??…絶対ダメだろ!!


じゃあこう考えよう。

俺とみぃは一緒にネオエイターを目指す仲間!その仲間と一緒に登校するのはどうだ?

何も変じゃないよな??

 そう自分に言い聞かせて俺は、みぃが来るのを待つ。

て言うか、普通にエフェクターの活動についての話がしたいから待ってるだけだし、深い意味はないしな。

なーんて、思っていたらみぃがやってきたので挨拶をする


「よっ!」

右手を上げ気軽な挨拶をする。

てっきり向こうも「よっ!」って返してくれると思ってたのに何故かシカトされる。


「お、おい!待てよみぃ!シカトは良くないぞ?」

なんて言いながら追いかけるが、みぃは早足で先に進む。

も、もしかして俺……避けられてる??

そう思ったら追いかける気もなくなった。 


俺……なんかしたかな??

思い返してみても心当たりはない。

そー言えば二日前、みぃに話しかけたんだ。


「最近演劇部の方どうだ?」


「ごめん夏火、今急いでるから」

そう言ってみぃはそそくさと教室を出た。


昨日は確か昼休みに

「よお!これからエフェクターの溜まり場一緒行こうぜ!」と話しかけたら「今からご飯だから」と断られた。



…………





……………




え?俺ずっと避けられてんじゃん!!!

むしろ今気付くか??俺鈍感過ぎっ!?!

は?何で?何で避けられてんの??え??全然意味分からん。何で怒ってるんだ…??



「なーんて事があったんだけどさ…秋斗何か知ってる?」

下駄箱で見つけた秋斗を捕まえて相談する。


秋斗は一瞬、何か知ってると言う様な顔をしたが「ごめん俺も分からんわ」と言った。

それに続けて「俺からも探り入れるから何か分かったら言うよ」と言い教室へと向かった。


俺は疎外感を感じながらも一旦忘れようとエフェクターの事を考える事にした。

教室へと向かう最中にポニーテールの女性に「ねぇ!君達ってドラマ撮ってるんだよね?」と話しかけられる。


唐突な出来事に俺は言葉が詰まった。

そもそもこいつ誰だ?

青色の上履きって事は同年なんだろうけど……


「脚本は誰が考えてるの?」

俺の動揺等知った事じゃないと言ってるかの様に更に質問される。

とりあえず主導権を握られまいと「俺だよ」と即答する。


「ふーん。だったら教えてあげる。全然面白くないよ」


んなっ!!なんだこいつ!いきなり現れて面白くないだと??

一生懸命考えたんだぞ!それを……


「ねぇ?君はドラマって見た事ある?」


「多少はな」


「やっぱりね!だからあんな粗末なストーリーなんだよ」


ぐぬぬ…そろそろインキャで温厚な俺もキレそうだ。好き勝手言いやがって…


「演技もダメダメね。まるでなってないわ」


「あ、あとはカメラワークもダメ!…あれ?全部ダメじゃん!あははは」


「あのなあ!!!――――



と言いかけた時にキーンコーンカーンコーンとベルが鳴る。


「あ、教室行かないと。君も遅刻になっちゃうよ?ちゃお!」

そう言ってそそくさと女は行った。


なんだよ!好き放題言いやがって!俺は、ぶつけるはずの感情をぶつけ損ねて苛々したまま教室に行くのだった。



多分きっとそうだ。この朝の時の苛々がまだ尾を引いてるんだ。

苛々が残ったまま授業を終え昼休みの時間になると教室中がザワザワしだした。

俺は何の事だ?と思いながらも俺には関係ない事だからとすぐに興味を失う。


「どうやら松岡が季節に告るらしいぜ」

後ろからそんな声が聞こえてきた。


松岡と言えば確か隣のクラス…じゃなかったか?秋斗程とは言わないがイケメンでバスケ部の主将……ん?秋斗??

俺は秋斗が教室に居ない事に気付く。

教室はザワザワ五月蝿いし、秋斗を探しに行くか…。

そう思い俺は席を立ち教室を出る。


教室を出た所でアテは無い。なので自然とエフェクターの集会所…屋上へと続く階段の踊り場に来てしまったが……誰も居ない。

ふむ…ふゆこぐらいは居ると思ったが、、、まあ良い別の所を探そう。


適当に廊下を歩いていると「体育館に続く渡り廊下だってよ!」「マジ?松岡勇気あるな」……なんて会話が聞こえて来る。

秋斗もそこへ行ってるかもしれないと思い俺は渡り廊下へ向かう。


階段を降りて行くと1階には沢山の野次馬が居て渡り廊下へ行く事は難しかった。

 そもそも秋斗が、みぃの事を気にするのだろうか?そんな疑問が過り別の場所へ行こうとした時に微かに声が聞こえてきた。


「あ、秋斗くんあのね…?」

女性の声だ。

声がしたのは渡り廊下とは反対の位置にある下駄箱付近。

俺はそっと行ってみるとそこには、秋斗と女が居た。流石の俺も馬鹿じゃない、この状況すぐに理解した。

反対側の渡り廊下に皆が意識を向けてる裏で、誰にも気付かれず告白するって事か……なるほど、って事は、この女と松岡は裏で繋がってる可能性もあるな。


「私ずっと秋斗くんの事が好きだったの!だから…付き合ってください!!」


おおぉぉ〜言った!!!

秋斗さあどうする!?!

俺は何故かドキドキしながら秋斗の言葉を待った。

相手の女は名前は分からんけど普通に可愛い子だぞ?断るのは勿体ないと思うがな。



「ごめん!気持ちは嬉しいけど俺まだ彼女とか作る気ないんだよね」


断ったああああぁぁぁぁぁ!!!

マジか!断ったのか!?おいおい秋斗…お前断ったのか!!あんな可愛い子振れるのかよ!!

そうだアイツ、イケメンだったあああぁぁぁ!!!だから振り方が慣れてるんだよ!!って事は、告られるのも慣れてるって事か!?!

クソ!!羨ましいぜ!イケメンはよぉ!!


そんな事を考え心で血の涙を流してたら振られた女が泣きながら俺の横を通って行った。



「覗き見は褒められた事じゃないな」

その言葉に俺は{ハッ}と秋斗の方を見る。

「覗き見するつもりは無かったんだけどね」なんて言い訳をしながら。


「俺なんかより向こう行った方が良いんじゃないか?」


「みぃの所か?何で俺が?」


「良いのか?季節が松岡と付き合っても」


「付き合う付き合わないは、みぃが決める事だろ?俺には関係ないよ」


「流石――彼女持ちは違うな」



――は?


イマナンテイッタ??


彼女持ちって言った??



誰が??



秋斗は誰と喋ってる??

俺…だよな??え?って事は俺に彼女持ちって言ったのか???



は???



困惑する俺に気付いたのか「この前ファミレスで高校生の人と一緒に居ただろ」と秋斗が言った。


この前ファミレス…??

ファミレス行ったのは、ふゆこと秋子さん……あ、いや、あきこさんと話した時だ。

もしかしてこいつ!!!あきこさんの事言ってんのか!?!


「ばっ!ばばばばか!!あきこさんは違うぞ!!!ふゆこのお姉さんで彼女じゃねーよ!!」

俺は急いで訂正する。

正直なところ、あんな美人が彼女なら鼻高々だけど嘘はつけない。って言うか嘘ついたら殺されるよ…マジで。


「はぁ?じゃあ何で2人っきりでファミレスに居るんだよ?」


「2人っきりじゃねーよ!!ふゆこも居ただろ!!」


「は?居なかったぞ??」


その返答に俺は困惑する。

あきこさんと居たと言う事は、ふゆこも居たはずだ。なのに何で??

 も、もしかしてふゆこって幽霊だったり??

いや待て待て幽霊だとしても2人にもふゆこは見えてる、あの場の時だけ見えなくなるなんて事はない。


「それ私がトイレ行ってた時じゃない?」

後ろからそんな声が聞こえてきて

「うぎゃああぁぁ!」俺は驚きのあまり変な声を出してしまう。


「そんなに驚かなくても…」

声の主はふゆこだった。

俺は{ドクンドクン}と脈を打つ心臓を落ち着かせる為に「ふぅ…」と深呼吸する。


「いきなり現れるなよ!!」

なんとか声を絞り出す。

「あはは、ごめんね」とカラカラと笑うふゆこ。


「―に、してもふゆこがトイレ行って2人きりになったタイミングを目撃…なんて事あるんだな」

秋斗は、そう言いながらもどこか納得している様子だ。


「まあ、そう言う事みたいだな」

俺がそう言うと、ふゆこが俺の腕を引っ張って「夏火行かないの?」と言った。


「みぃの所?」


「そそ!」


「悪いけど俺行かない。なんか今日虫の居所が悪くてさ」


「えっ?」

ふゆこと秋斗は驚きながらお互い顔を見合わす。


「苛々するんだよ。ごめん今日は購買でパン買って1人で過ごすよ」

朝の苛々をずっと引きずってる。

このままじゃダメなのは分かってる…だから俺はその場を去った。






俺の朝は演劇部の朝練から始まる。

ひょんな事から俺はメンバーの季節と一緒に演劇部に入る事になった。入ったと言っているが、部長の高橋の意向で体験入部と言う事になってる。

中3のそれも11月だからな、色々と考慮してくれたらしい。

だが、顧問には説明してないから顧問が居る時は部室に来てはいけないと言われてる。

 まあ、顧問は掛け持ちしてるから演劇部には全然顔出さないみたいだけど。

それで、俺は季節には内緒で演劇部の朝練に参加させてもらってる。

エフェクターの中で俺が演技下手なのを自覚してるからだ。


「そうだ、実はね僕等何かよりももっと演技上手い人が居るんだよ」

朝練が終わり休憩してる時に部長の高橋が汗を拭きながら言った。

他の部員も『あぁ、あの人ね…』と言った顔をしている。


「へ〜そんな上手い人が居るんだ?演劇部の人?」そうやって俺は返すと高橋を首を横に振り「僕に愛想尽かして辞めたんだ」と悲しそうに言う。


「いや、部長は悪くないですよ!」と他の部員がフォローをし出す。

話を聞く限り性格に難がありそうな人物のようだ。


「でも彼女は本当に素晴らしい演技をするんだ。演じると言う事に一生懸命で、何より楽しそうにするんだ。見てる観客を物語に引き入れるような…そんな演技をするんだよね」

高橋は嬉しそうに説明する。

他の部員達も「たしかに凄い演技しますよね。僕も引き込まれました」と言い出す。


「そんな凄い人なら会ってみたいな。名前は?」

俺がそう言うと高橋は「同学年の春野って女子知らない??」と聞いてくる


女子…女子で春野かぁ…。俺は女の子の知り合いは沢山居る、、けど春野なんて名前の女は知らない。


「いや、聞いた事ないなぁ…」


「5組だから5組の人に聞いてみなよ」



そうして俺はと言う情報を手に入れた。

朝練が終わり部室を出た、多分この時間は夏火が登校してくる頃なので俺は下駄箱へと向かう。

下駄箱へ向かうと丁度登校してきた夏火に出会い季節の事を聞かれる。俺は心当たりがあるが知らないフリをした。


3時間目が終わり4時間目への準備をする15分休憩の時に昼休みに松岡が季節に告白するらしい事を聞いた。

季節の好きな人は夏火だ。間違いなく松岡はフラれるだろう…だが、肝心の2人が、すれ違ったままだ……なんとかしないとなー。

2人からしたら余計なお節介なのかもしれないが、メンバー同士でイザコザがあるのは面倒くさいんだよな。


「三浦くん恵美えみが呼んでるよ?」

同じクラスの女子がそう声をかけて来た。

教室の入り口を見ると隣のクラスの笹塚ささづかが立っていた。


「ありがとう」教えてくれた子に感謝し俺は笹塚の元へ行く。

「ごめんね?いきなり来て」笹塚は申し訳なさそうにしていた。


「いや、嬉しいよ?会いに来てくれて」

自分でもチャラいと思ったが、こう言えば喜んでくれるのを知ってるから仕方ないんだよ。


「あのね?昼休み下駄箱に来てくれないかな?」


「え?下駄箱??何で??」


「聞いてほしい事があるの…」

恥ずかしそうに言う仕草を見て俺は勘づいてしまう。

「分かった」俺がこう言うと安心した顔を見せ自分のクラスに戻っていく笹塚。


そう言えば笹塚と松岡って同じクラスだ。

…………なぁるほどぉ…読めたぜ??お互い大変だな…なぁ?季節…。


そして昼休みになる。

俺は嘘はつかない。その言葉に偽りはなかった。

でもよくよく考えたら嘘っぽいよな。

今は彼女作る気は無いって……じゃあいつなら良いんだよ!ってツッコミたくなるよな。

…さて、そろそろ声をかけるか。


「覗き見は褒められた事じゃないな」


どうせ夏火の事だ季節の事を気にはなるが、本人に会うのはしたくない…なら秋斗やふゆこにでも探りを入れてみようって感じで探してたらこんな現場に遭遇してしまったってとこか。


夏火との会話が続く。

そんな中俺はハッキリさせときたい事を聞いてみようと思った。

なので自然とその話に持っていく――


――今だ!!!



「流石彼女持ちは違うな」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る