第11話不良の姉と天使の妹と。
ヤバい、ヤバいぜ!こんなに熱くなるなんてよぉ〜!
やっぱり――
――カラーズファミリーってのはホンモノだ!
私はこんなケンカがしたかったんだ。
男だろうが、女だろうが、気に食わない奴はぶっ飛ばしてきた!
気付いたら最強だと言われて地元で私に逆らう奴は居なくなった。
だからわざわざこんな所まできて、最強と呼ばれる奴にケンカを吹っかけたんだ!
「へへへ」
私は笑みをこぼす。
2発、腹と首にもらった。
正直めちゃくちゃ痛え!…けど、このまま1発も当てずに終われっかよ!
「諦めて帰る…なんて事は期待出来ないみたいだね」
目の前の黒髪の女は、本気を出してない。
私にはそれが分かる…だからこそ!だからこそなんだ!!
「青い雷獣…アンタは強いよ。でもな?私はもっと強い!!!」
そう啖呵を切り私は真っ直ぐ相手に走っていく。
「だあありゃあああああああ!!!」
そのまま相手の顔面目掛けて渾身の右ストレート!!
私の拳は確実に相手の顔面を捉えてる……筈だったのに虚しくも空を切る。
さっきからこの調子だ。
確実に当たるって所で瞬時に相手が消えるんだ。
「ねえ?君、名前何て言ったっけ?」
後ろから声がして私は驚きつつ振り向く。
そこには{ピョンピョン}とその場で跳ねる青い雷獣の姿があった。
「あぁ!?!」
「ボクに名前を教えてよ」
「私は――――
※
架御白(かみしろ)区、
この学校は架御白区の中でも1番荒れ果てた学校だ。
皆、所謂ヤンキーで、学校内では常に争いが起きていた。
当時その学校を束ねてた人物が居た、名を
だが、その左代は地面にぶっ倒れていた。
そして倒れてる左代の側には1人の女が立っていた。
赤色のクロワッサンの様なモヒカンで赤色のトップクに身を包んだその女の名前は練灯綾愛。新入生だった。
左代がやられ実質松能中のトップになった綾愛だが、納得する者は誰も居なかった。
1年の、それも女がトップなんて認めないって男達と同じ女ならワンチャンあるだろって思う女達…皆が敵だった。
しかし綾愛は、拳一つで向かってくる敵を倒して行った。
気付けば自分を慕う者も増えていてある時「そろそろチーム名決めませんか?」と提案される。
その提案を聞いた綾愛は自分の周りに集まった女達にこう言った。
「私達は女として終わってる!普通の女は恋愛やオシャレやメイクとかして綺麗を維持してる!その点私達はどうだ?毎日毎日喧嘩ばっかり、顔や身体はアザや傷だらけ…髪だってボサボサだ――
――そんな私達には"マドンナ"なんて言葉は無縁だ!!だからこそ私はっ!!
「私達がマドンナ?」
「なんだよそれめっちゃウケる」
「流石綾愛さんだ!すげぇー!」
こうして武闘派レディースチーム魔首領亡は結成される。
それから2年、綾愛は中3になり松能中学で綾愛に歯向かう人は居なくなっていた。
当時数十人だった魔首領亡も他校の配下も加え100人近くの大きな組織になっていた。
そんな時だった。
綾愛は部下の1人からカラーズファミリーについて聞かされる。
「なんだよ、そのカラーズファミリーってのはよ?」
「幸奇町は知ってますよね?あそこは子供の街と呼ばれ学校が沢山作られた。勿論私達のような不良も沢山いる。その不良達を影で束ねる組織がカラーズファミリーなんです」
「へぇ〜幸奇町の裏の番人って事か。それで?」
「なんでも、そのカラーズファミリーには青い雷獣と呼ばれる女が居るらしいんです」
「はっ!青い雷獣だぁ?んだそれ?厨二病全開のネーミングじゃねーかよ!!」
「でもその女メチャクチャ強いらしいんですよ」
なーんて話を聞かされたもんだからよ。私は青い雷獣を探したんだ。
だが、カラーズファミリーってのは特別に身分を隠してる訳じゃないみたいで簡単に見つかった。
その女の名前は
体も華奢と言うか、特別筋肉質と言う訳でもなく運動には適したスタイルではあるんだろうが……正直こんな女が喧嘩強いとは思えなかった。
だから私は「お前が青い雷獣か?」と聞いた。
その瞬間、先程まで普通の高校生だと思ってた女から明らかな殺気が放出され私は思わず後ろに跳んだ。
「へぇ〜ボクの殺気を感じる事は出来るんだね」
青い雷獣はそう言いながらも鋭い目で私を射抜く。
私の中のDNAが…本能が、こいつはヤバいと囁いてくる。心臓も{どくんどくん}と脈を打ち嫌な汗が流れてくる。
間違いない、コイツはカラーズファミリーの青い雷獣だ。先程まで普通の高校生に見えていたのに今はでっかく見え怪物の姿に見えてしまう。
対峙しただけで、こんな思いをしたのは初めてだ。
そう、私はもうこの女には勝てないと思ってしまっている。
「そんな格好して青い雷獣の名を呼ぶって事は、要件は一つしかないんだよね?」
青い雷獣は、一歩、一歩、ゆっくり私に近付いてくる。
私は青い雷獣が何をしても良い様に一つ一つの動作に釘付けになる。
いつ、何を仕掛けられても反応してやる!…と心では思っているのだが、身体は正直なのか
青い雷獣が近づく度に私の足は後ろに下がってしまう。
くそっ!!!
私はこんなにも臆病なのか?
喧嘩上等!!その思いで、毎日毎日拳を振るってきた。
なのにどうだ?今の私はこんなにも弱い。臆病者だ。
そんなの――
――私じゃねぇ!!!
パァァン
破裂音みたいな音が響いた。
目の前の女は驚いてるのか喜んでるのか少しニヤッと笑っている。
私は自分で殴った頬の痛みを噛み締める。
痛みはある。だが、不思議な事に頭がクリアになっていく。
先程までの恐怖はない。臆病な私は殴り殺した。今ここに居るのは松能中最強の女だ。
「私は
「キミ、面白いね。いいよ」
こうして私と青い雷獣の喧嘩が決まった。
※
東央中、某日。
「可愛い子を見つけただぁ〜??」
いつもの様に昼休みに屋上へ続く階段の踊り場に秋斗と居たら秋斗が「昨日メチャクチャ可愛い子発見した」と報告をしてきた。
そんな事よりエフェクターの事考えろよ…と呆れつつも俺は話を聞いた。
「マックとかさ色々ある大通りあるだろ?あそこの本屋から出てきたらさ?凄い格好してる子がいてさ?真っ白でフワフワしたスカートのさ?頭に何か付けて…えーと、ロリータファッションってやつ!
後ろ姿だったからさ、どんな人なんだろ?って見に行ったんだよ!そしたら…もうビックリしたね。金髪の長い髪で、人形が歩いてるってぐらい可愛い子だったんだよ!」
興奮しながら早口で秋斗は説明する。
ロリータファッションねぇ…俺は嫌ーな感じがしたので
「その女とは関わらない方が良いぞ」と忠告する。
「いやいや、今日の放課後その子を見つけ次第ナンパするから付いてきてよ!」
と、諦める気のない秋斗。
しかし、今の時代どんな格好をしても良いんだしアイツって事は無い筈だ。
念の為、付いて行ってやるか…
こうして俺は昼休みの内に今日の放課後のエフェクターの活動は各自自習と言い放課後、秋斗と街へ繰り出す事にした。
「この辺だったんだけどな〜」
4車線の道路を挟むように色々な店が展開している大通り。
勿論沢山の人達とすれ違う。俺達は放課後で小腹が空いた状態だが、我慢して秋斗の言うすっごい美人を探した。
俺には、その人物に心当たりがある。
出来れば関わりたくない奴、、なんだが、秋斗を1人で接触させる訳にもいかないので付き添ってるって訳だ。
勿論、俺の思ってる奴じゃない可能性もあるんだがな。
「お、おい!夏火!!!」
秋斗が俺の名を呼びながら肩を叩く。
「ん?見つかったか?」
「あぁ!ほらあそこ!」
秋斗が指を刺す。
その先には、白い服装でフワフワしたスカートを穿いてる金髪の女性の後ろ姿があった。
正直、遠すぎて服装や目立つ髪色しか分からない。
「い、行くぞ!!」
「あ、ちょっと待てよ秋斗ー!」
気合いの入った秋斗は、勇敢にも早足で向かう。俺は人混みの中、秋斗を見失わない様に追いかける。
目標のロリータファッションの女は、ゆっくり歩いてるみたい……と言うか多分わざとゆっくり歩いてるな。
って事は、やっぱりアイツなのか…と憂鬱な気分になりながらも俺達とロリータファッションの女との距離はドンドンと縮まっていく。
もう完全に目標を視認出来た!と言う距離で俺は何者かに腕を掴まれる
「いって!」
人混みの中、かなりの力で腕を引っ張られる。
「なんでオメーが居んだよ!夏火!!」
と、聞き覚えのある声が聞こえた。
俺は振り返ると赤いクロワッサンの様な髪型をして赤いトップクを纏った女性が立っていた。
「久しぶりだな…
この女の名前は
しかも
まあ、こんな格好の奴と関わりたくないってのは間違いない、現にこんなに大勢が歩く人混みなのに綾愛と俺の立ってる所は半径1mぐらい隙間があいていた。
って!そんな事はどーでも良いか。
「それより!ラブの方行くぞ」
俺は秋斗が気になったからロリータファッションの女…もとい、
ラブと綾愛は姉妹で、ちょっとヤバい姉妹なんだ。
綾愛は先程見た通りバリッバリのヤンキーだが、ラブは真逆でメチャクチャ可愛い。
いや、ほんとに黙っていれば人形と思うほど整った顔をしていて、ましてやロリータファッションをしてるもんだから人形が歩いてると思う筈だ。
そんなラブを見つけた男は間違いなくナンパをするだろう。今の秋斗状態だな。
それでラブは天使の様な対応をしながらナンパしてきた男を人気の無い所に誘導する。
男からしたらエロい事を考えるだろうな。
そんな浮かれた気分の所で、明らかにヤンキーな綾愛が登場するんだ。
「おい!私の妹に何してる!!」
ってな具合にね。まあ、簡単に言えば美人局を姉妹でやってんだよ。
だからさ?つまり秋斗は、今結構ヤバいんだよね。悪いけど笑っちまう程に。
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