第6話物語の始まりはすぐやってくる

あれから皆は戻ってくる事なく授業開始のベルが鳴った。

秋斗とは同じ教室だから戻って来た秋斗に視線を送る。秋斗は自信満々なドヤ顔を披露し握った右手の親指を立てる。

どうやら何かしらの戦果は得た様だ。


そしてあれよこれよと放課後になり、俺たちは約束の屋上に続く階段の踊り場に集まる。


「いや〜〜凄かったな!演劇部!!!」


第一声に秋斗が喋る。


「うん。一言で演劇って言っても色々あるんだね。」

次にみぃが口を開く。

「あ、そうだ夏火?」


「ん?どーしたみぃ?」


「演劇部の人達にエフェクターの事話したんだけど良かった?」


「問題ない」


「そっか。それでね?私思ったんだけど…」


「ん?なんだよ」


「私、演劇部に入って良いかな?」



そのみぃの発言に俺も秋斗もふゆこも口を揃えて「はぁぁ?」と驚きを隠せなかった。


「ちょ、ちょっと待てよ!それってエフェクター抜けるって事?」

あまりの衝撃に秋斗が質問をする


こっちは空いた口が塞がらないと言った表情をしてるのに対し当の本人は{キョトン}とした表情だ。


「え?抜けないよ??」

と、みぃは言う


「じゃあ何で演劇部に?」

次は俺が質問した。


「だって演技の勉強にはもってこいじゃない?…え?私なんか変な事言ってる?」


そこで俺たち3人は{ハッ}とする。

なんなら目が合ったぐらいだ。


なるほど、灯台下暗しとはこの事か!

みぃの言ってる事は一理ある。演技の勉強をするには演劇部!これは当たり前の事だ。

だったら……


「秋斗も一緒に演劇部入れよ」

俺はそう提案した。


「えっ??俺も??」


「秋斗とみぃが演技の勉強すれば俺とふゆこは2人に教われば良いだろ?それに2人はメインだから演技が下手いと色々マズイ。」


「とか言ってコミュ症だから他人と関わりたくないとかそんな事じゃないでしょうね?!」


みぃからの鋭いツッコミがくる。

図星過ぎて俺は何も言えない。


「だあぁー!!んだよ!そー言う訳ぇ!?だったら最初からそう言えよ!!分かった!俺と季節がバッチリやってくる!」

色々と察した秋斗が承諾してくれて内心ホッとした。


「じゃ、じゃあ私は??」


秋斗とみぃの今後の課題が決まったタイミングで、ふゆこが口を開く。


「みぃと秋斗が演技の勉強をしている裏で、俺とふゆこは編集やカメラとかの勉強をしようと思う」


それに、ふゆこにはがあるしな…


こうして俺達は2手に分かれる事になった。

みぃと秋斗が演劇部に行くのを見送り俺とふゆこは階段の段に座り会話をする


「とりあえずパソコンをもう1台だな」


「パソコンかぁ…」


「持ってないのか?」


「多分家を探せばあると思うよ。でも古いタイプだから使えたとしても…」


「今はスマホでもパソコン型のやつもあるけど、今使ってるのは?」


「これは普通のだから厳しいかも」

そう言った後にふゆこは「あ、でも…」と言葉を繋げる


「お姉ちゃんなら用意できるかも」


「へ〜姉が居るんだな」


「うん。私より全然優秀でね…とても頼りになるんだ」

ふゆこはそう言いながらもどこか悲しそうな顔をする。

どうやら姉に劣等感を抱いてるみたいだ。


「ちょっと待ってね電話するよ」

そしてふゆこは立ち上がり屋上へと続く扉を開けオレンジ色の世界へ消える。


その光景を見て

「もう日が沈み出したのか…」

と俺は呟いた。


時間的にみぃと秋斗は1時間ぐらいしか活動出来ないだろう。

ふゆこもパソコンが無い以上、編集の勉強は出来ないし…今日はもう解散かな?


ふと、握っていたスマホを見る。

スマホのメモ帳には、ドラマの脚本やキャラクターの設定などを書いてある。

来年撮る予定の作品の脚本を見ていく。

全体的には2割程度しか出来てないし、これもまだまだ修正しないといけないだろう。


今はもう10月も終わろうとしている。

何でこの時期だったんだろうな…全然時間が足りない。



「用意できるよ」


「うわああぁぁぁ!!!」


「ちょ、ちょっと夏火!?」


俺は急に話しかけてきたふゆこの声に驚いて階段から落ちそうになる。

だが、すぐにふゆこが腕を引っ張ってくれて何とか体勢を立て直す。


「いきなり話しかけんなよ!!」


まだ心臓が{ドクドク}と脈を打っている。

危うく俺の人生が終わるところだったぞ。

と、思うのと同時に(まあ、ここから落ちても死なないけどな)と冷静な自分がツッコむ。



「ご、ごめんね?気付いてないと思わなくて…」

申し訳なさそうにふゆこが謝罪する。


「いや、ごめん、考え事してて気付かなかった。それで?パソコン用意出来るって?」


「あ、そうそう。それでね?ちょっと頼みがあるんだけど…」

バツの悪そうな顔をするふゆこ


「ん?頼みって?」


「あのね?エフェクターの事お姉ちゃんに話したんだけど…それでね?」




数時間後、俺はファミレスで2人の美女の目の前に居た。1人はふゆこだ。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る