第2話3人目

2037年某日。

広い家のリビングでデカいテレビから音が漏れる。


「今日紹介するのは、人気ネオエイターのエフェクターです!エフェクターは男女5人から成るグループで、その人気は凄まじいものです」

アナウンサーと思われる女性の声が響く。


「エフェクター!知ってますよ〜うちの娘が大好きでね〜」

「あっ!私の息子も好きだと言ってます!」


「エフェクターは今までにない事をしたネオエイターなんですよ。何をしたか分かりますか?」


「分かりますよ〜。ドラマでしょ〜??初めて見た時はビックリしましたよ」

「ですよね〜。まさかtubeNEOで、あんな本格的なドラマが見れるなんてね〜」

「私の知り合いの脚本家が怒ってましたよ。あんなに質の良いドラマ作られたら商売上がったりだ!って」


「…と、このように評価の高いドラマを作ってるのがエフェクターです」



「見てみて!テレビで紹介やってるよ!」

デカいテレビの前に置いてあるソファに座る茶髪の可愛い感じのギャルが嬉しそうに言う。


「みぃはしゃぎ過ぎだろ」

それを少し離れた場所に立っている男性が呆れながら言う。


「そんな事言って夏火も嬉しいから見てるんでしょ!?」


「編集してたからその休憩だっての」


「ハイハイ、そう言う事にしときますよ〜だ」






2031年某日、東央とうおう中学校。


夏火なつか〜?居る〜?」


そんな声が響く昼休みの教室。

教室に居た生徒達は皆して端の方に座る男性を見る。

そして思い思いに口を開いていくのだった。


「あ、あれ季節美衣子きせつみいこじゃん!やべー可愛い!!」

「夏火って戰刃いくさばの事だよな?あの2人どんな関係だよ?!」

「季節さんってもしかしてあんな根暗と付き合ってるの?趣味悪いわね〜」


そのどれもが夏火に対する悪口みたいな物だ。


「はぁ…」

わざと聞こえる様に言ってるのか聞いてて気分の良い言葉じゃないので、ため息をつき夏火は美衣子に近付く。


「おい!急に来るなよ!とりあえず静かな所行くぞ!」

そう言って夏火は美衣子の腕を引っ張り静かな場所に行く。



「この辺で良いか」

そう言って美衣子の腕を離す


「も〜!ちょっと強く掴んだでしょ?いったぁ〜」

夏火に掴まれてた腕をさそりながら文句を言う


「お前なぁ!いきなり教室に来るなよ!」


「なんでよ!?」


「見ただろ?あの光景。お前の様な人気者が隠キャを訪ねてきたらそうなるだろ!?」


「はぁ?隠キャって何よ?夏火だって昔は、明るかったじゃん!」


「昔の事は良いんだよ!それで何の用?」


「はぁ??何の用って!昨日アンタが誘ってきたんでしょ?ネオエイターに!その事に決まってるでしょ!!」


「あぁ…それか。誰か新メンバー見つけたとか?」


「そう簡単に見つかんないわよ!てかさメンバーは5人って言ってたけど、どう言う振り分けなの?男女比率は!」



男女比率か……そう言えば考えてなかったな。

今は俺とみぃの2人…だけど俺は主役を張れるタイプじゃない。って事は1人はイケメン欲しいよな?みぃと釣り合うぐらいのイケメンだ。

じゃあ、残り2人は……


「ちょっと!!」


考え込む俺の肩を叩くみぃ


「なんだよ!?」


「今考えてるよね?」


「るっさいなぁ!今考えてるよ!」


はぁ…と呆れるみぃ。


「でも次の狙いは決まってる」


「おっ!?誰なの?」


「イケメンだ!!!男のイケメン!!!」


「イケメンねぇ……」


「何だよ?含みがあるな?」


「顔ってそんなに大事かな?って」



そんな呑気な事を言うもんだから俺は少し怒りながら言う


「あのなぁ!?ヒロインはお前なんだよ!んじゃお前に釣り合う奴じゃなきゃダメだろ!お前分かってんのかよ!自分の――」


と言葉を続けようと思ったが{ハッ}と我にかえる。

自分が何を言おうとしたか振り返り少し照れ臭くなる。痒くもない鼻頭を掻いちゃったりもする。


急に黙り込んだもんだからみぃが訝しむ。


「夏火?どーしたの?急に黙って!」


「と、とにかく!イケメンなんだよ!」

これ以上突かれるとめんどくさいから口早に話を終わる


「あ、ねえ?もう一つ良い?」


「ん?なんだよ」


「ドラマの脚本するって言ってたけど、ジャンルとかは決めたの?」


「そこはもう決めてる」


「えっ!うそ!!タイトルは?どんな物語なの?」


「そこは追々な。まだ変わるかもしれないし」


「えー?ちょっとぐらい良いじゃん!教えて教えて〜」

と俺の腕を引っ張り駄々をこねるみぃ


正直間近で甘えるように駄々をこねるみぃを可愛いと思ってしまう。

しかし決して!俺の気持ちは揺るがない!!!



絶対に言わないぞ!!!



「ラブコメだよ」


俺はボソッと言う。


「ラブコメなの!?じゃ、じゃあ……その……アレあるの??」

急にボソボソと小声になるみぃ


アレ?……アレって……??

ちょっと考える。ラブコメでアレ??



…………



…………



キスシーン(アレ)かぁぁぁあああああああああ!!!!?



「ばっ、ばば、ばっか!!な、なな、ないよ…」

動揺してしまう俺。

そして無駄にみぃのキスシーンを想像してしまい胸が{ドキドキ}と脈を打つ


「そ、そそ、そっか……。ファーストキスが芝居じゃ嫌だったから良かった」

みぃも動揺してるのか、とんでもない事を口走る


「え?えっ?ふぁ、ファーストキスって、お、おま、お前まだやってなかったのか?」


「は?……はぁ?そ、そそ、そう言う夏火はど、どーなのよ…」


「俺もまだだよ!!!」


「そ、そっか……夏火もまだなんだ……」



そして辺りが静まり返る。

お互い無言だ。

どうしたら良い?この空気。でも変にみぃを意識してる気がする。

だってよ?お互いファーストキスもまだなんだぜ?ならほら……「ここで済ますか?」なんて言ってみるのもアリなんじゃないか?


いやいや待て待て!落ち着け俺!!!落ち着け!!!

こんな事をする為にみぃに話しかけた訳じゃないだろ!!妹の為だ!

そうだ……妹の為だ!!俺は金を稼がないとダメなんだ!

今は余計な事は考えるな!!


「ね、ねえ?夏火」


「な、なんだよ!?」


沈黙を破ったのはみぃだった。

さっきまで顔を紅くしていた筈のみぃは、今は不思議そうな顔をしている。


「歌が…聞こえる」


そう{ポツリ}と言いみぃは目を瞑る。

俺もそれに釣られ目を瞑り耳を澄ます。



「ぼーくらはー翼を失ーくしたー」


耳を澄ますと微かに歌声が聞こえた。


「俺も聞こえた!」


「凄い綺麗な声だよね」


そしてお互い顔を見合わせ頷き合う。

お互いの考えを理解した2人は歌声のする方へ駆けて行く。

学校の中で走るのは危ないので、その辺は気を付けながら急ぐ。



「この世はー罪で出来てるー背中の羽はないけれどー」


どんどん歌声が大きくなってのを感じ正しい方向へ来てるのだと確信する。


「ぼくらにはー罪をゆるせるー」


廊下を駆け、階段を登り、、そして屋上へと通じる扉に手をかける

ガチャ



扉を開ける音と同時に歌声が止まる。


屋上は雲一つない綺麗な青空に包まれその中に1人の女性が立っていた。

その女性はこちらを向きながら驚いた表情を見せる。


「ご、ごめんなさい」

隣のみぃが謝罪を口にする


「あ、そ、そんな謝らないでください」

みぃの謝罪を聞いた女性は慌てながら口を開く。


「あの、私達歌声を聴いてここに来たんです」

みぃがそう言うと女性は顔を紅くしながら

「ひゃっ!?聞こえてたんですか!?」

と、歌ってたのは自分だと白状した。


「す、すいません!うるさかったんですよね?ほんとにすいません」

と謝る姿を見てみぃは

「そんな…とても綺麗な歌声でしたよ」

とフォローする。


「そんなそんな、私なんかの歌声が良いわけ…」

と首を横に振りながら否定する姿は謙遜にしては大袈裟だ。

多分彼女は自分の歌声の価値を理解してないらしい。

だから俺は

「いや、めちゃくちゃ綺麗な歌声だったよ!ホントに!」

 と、強く賞賛する。


お世辞じゃないと理解したのか{ホッ}としたような顔をして

「ありがとうございます」

と、彼女は言った。


そんな時、みぃが肘で俺の横腹辺りを{トントン}と突いてくる。

そして小声で

「上履き見てよ。青色だよ?」

と言う。


ウチの学校は上履きの色で学年が分かる様になっていて、1年は緑、2年はオレンジ、3年は青になっている。

つまり上履きが青色の彼女は同学年と言う事になる。

しかし同学年と言えど、三つ編みに眼鏡の彼女に見覚えは無かった。

それはどうやらみぃも同じだったらしく


「えっと、3年だよね?私、季節美衣子きせつみいこ

そう自己紹介をしながら彼女に近付く。


俺もそれに釣られ

「俺は戰刃夏火いくさばなつか

そう自己紹介をしながら近付く。



「は、はい!3年です!私は先守冬子さきもりふゆねです!」

と言って大きくお辞儀する。


そんな彼女のを俺は見逃さなかった。

くの字に曲げてお辞儀をし、体を起こす瞬間、、、大きな物が揺れた。

それは今まで見た事ない様な揺れ方をし、重力なぞ知るもんか!と言ってる様な気がした。

そう!その揺れた物は――オッパイだ!!!

少なくとも同学年では見た事ないぐらいの立派な物だ。

なんとなく隣のみぃを見る。

みぃも決して小さい訳ではないが、やはり先守冬子と自己紹介した彼女と比べたら……


「可哀想」


「え?夏火何か言った?」


そうみぃに言われ声に出してしまった事に気付く。


「い、いや、何もない何もない!」

慌てて否定する。


「いつもここで歌ってるの?」

みぃが先守に質問する


「い、いつもって訳じゃないけど…時々…」


「なんか勿体ないな!」

思った事をそのまま俺は口に出した。

俺の言葉を聞いたみぃも先守も言葉の意味が分からず不思議そうに見てる。


「よし!決めた!!先守冬子!我がエフェクターに招待する!」


「えっ?えっ?」

何の事か分からず戸惑う先守


「ちょ、ちょっと待ってよ!次入れるの男じゃなかったの?!」

ごもっともな事を言うみぃ


「そんなの後でも良いだろ!今はこの出会いを優先すべきだ」


「出会いって…アンタ分かってる?今の今まで話した事ないのよ?」


「だからだろ?変に知ってるより全く知らない方が良い事もある。それに…」


「それに何よ?」


「歌が上手い人材は欲しかったんだよ。本当に。」


「ドラマに歌関係ある?」


「あるよ!あるだろ!?」


そんな会話をしていたら

「あ、あの〜」

と先守が恐る恐る会話に入ってくる


「あぁ!ごめん!で、どう?エフェクター入ってくれない?」


「えっと、えふぇくたあ?って何ですか?」

本日2回目のごもっともな意見を言われる。


こうして俺とみぃは先守にネオエイターを目指してる事を説明し、そのメンバーに招待したいと伝えた。



「事情は分かりました!何だか面白そうですね!私で良いんですか??」


「勿論!!」



こうして3人目のメンバーを確保した。






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