第3章 その5

 室長の言う支配だが、本当にそんなことがあり得るのだろうか。消費者からすれば、成績アップ、志望校合格が最優先。実際にそこに至るための指導なのは認める。が、だからと言って室長の支配力が伝搬するとは思えない。他の塾だって同じような業務なのだから。

 では、他の卒塾生がそれほどまでに何事か支配らしきことをしているかと言えば、そうとも思えない。だとしたら……室長の支配とは? 例えば、他に室長のような存在がいたとして、塾ではなく他の業種で同じようなことをしていたら、どうだろう。そのビジネスモデルや関係書籍が拡大する。それを模倣したり、取り入れたり。アレンジしたとしても、そのオリジナルが消滅することはない。だとしたら、それは・・・・・・支配ということにならないだろうか。はたして不満足な哲学者はこの現代まで不満足扱いされ重宝がられると予測していたであろうか。こうして閃いたからと言って俺は「アウレーカ」と叫んで、裸のまま浴場から走り出したりはしないが。

 三月八日。俺と青海さんの合格発表の日。朝から漠としてこんなことを考えるのは落ち着かないからである。飯がどんな味かさえもよく分からんかったくらいだから。とはいえ、昼食を摂ると眠気が襲ってくるのは、今日も変わらんことなのだが、昼寝をしている場合でもない。

 合格発表予定時間。俺はスマホを起動させる。合格番号発表のページへジャンプ。受験票と見比べて――

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