第2章 その3

 なんてことを言っていたのがうらめしく、受験勉強は進んだが、まだ全然改善されていない、虫眼鏡以下の己の観察眼を痛感したのは、それから二日経ち学校が始まったというのに、青海さんの欠席という事態に直面したからである。

 学校の授業などうわの空で、彼女の空席がやたらに乾いた空間として見えてしまった。

 恐らく無念を背負いながらの欠席なのだろう。とは察せられるものの、あるいは体調を慮った親御さんによってセンター試験まで自宅で療養するとかという展開では、まさかあるまい。

 女子たちの噂話に聞き耳を立ててみれば、初期の風邪のような症状が続いており、微熱、悪寒、気だるさ、腹痛などが治まっては再発するの繰返しらしい。

 点滴を打ったとは青海さん自身が言っていたことだが、まさかそれが効いていないということであろうか。医者であるお父上がそんなことで治療をあきらめるとは全く思えないし、きっと抗生物質なりを処方して経過観察といったところであろうか。

 などと思っていると、なぜか「やあ」といった軽い拍子で、俺の脳内に浮かんできたのは室長であった。そう言えば、青海さんが室長は医学部出身だと言っていたな。妖怪なのに医学部を出ているという理由は後回しにしておいて、まがりなりにも日本で五本の指に入る医学部を卒業し、しかも聞けば教授陣から期待を寄せられていた節がある。ならば、室長に青海さんの体調回復の方法を聞いてみるのもいいかもしれない。その際、周りに他の人がいなければ、人間の医学的見地に加え、妖怪ならではのエッセンスを披露してくれるかもしれないのだから。

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