廃人転生~『農民』は最弱だからと実家を勘当されたけど、ゲームの知識で最強へ成り上がって見返す~
破滅
第一章
やりこんだゲームの世界に転生!
ゲームをしていたら、いつの間にか死んでいた。
『Jobs Recruit Online』通称『JRO』
1000を越える種類の職業がある剣と魔法の世界で就職し、就職した職業で得たスキルを持って、更に強い職業へ転職しキャリアアップしていく。
しかし現実世界のそれとは違い、職業を手に入れた後はレベルを上げたり、NPCとのイベントを熟せば必ずスキルが手に入るし、職業レベルがカンストすれば、多少の課金は必要だが必ずキャリアアップする形で転職が出来る。
大学時代、やりたいことも見つからず、コミュ障故に友だちも作れなかった俺は、そこそこ偏差値の高い大学に入ったにも関わらず『学生時代に力を入れたことは?』の質問に対する返答が見つからず、その他面接での応答や夏インターンでもコミュ障を発揮しまくった結果、大学三年生の7月から始めたリアルの就活は全滅した。
それから俺は『JRO』に狂ったようにのめり込んだのだ。
大学時代、友だちを作れなかった俺は家でひたすらゲームをして過ごしていた。
特に好きなのはレベリングだった。敵を倒し、経験値を得る。時給換算して一番効率の良い場所でレベルを上げながら、攻略wikを眺めている時間に一番幸せを感じていた。
そんな俺が、就活に失敗し無限とも言える時間を手に入れたのだ。ゲームに人生を捧げるようになったのはある種当然の流れだったと言えるだろう。
一日のプレイ時間は平均して20時間。
幸い、他県の大学に進学した都合で親に邪魔されないものの、家賃の月三万円を始めとしてその他生活費諸々は親からの月12万円の仕送りで賄っている。
今は通ってこそ居ないものの、親に「就活浪人する」と嘯いてなんとか仕送りを継続している状態なのだ。
その状態だって、遠くないうちに立ちゆかなくなる未来は目に見えていた。
『JRO』の人気がそんなにないから、一年間ほど毎日20時間以上プレイして得た情報を元に、攻略wikの管理人をやっていたけど月平均5万円にも満たなかったし。
生活保護を受給できるかどうか。最悪鬱病のフリをして精神科医から診断書をだまし取ろうか。そんなことを考えている、そんな日々を過ごしていたある日。
俺は、前触れもなく死んだ。
いや、前触れはあったのだ。就活に失敗して自棄になった俺は『JRO』の世界に狂ったようにのめり込んだ。
『JRO』をプレイしているときだけは辛い現実を忘れることが出来たし、何より、職業を取得し、レベルを上げることでどんどん強くなっていく――数字として可視化できる形で報われるあのゲームにのめり込んでいる時間は凄く楽しかった。
そんな俺は毎日20時間以上、暗幕カーテンに日光を遮断された部屋で夢中になって『JRO』に没頭していた。
食事はカロリーメイトとエナジードリンク。睡眠時間は日平均二時間未満。
そんな生活を半年以上も続けていたんだ。そりゃ、血栓の一つや二つ出来たっておかしくないし、心臓だって止まってしまうだろう。
心臓が止まれば、血液の流れが滞れば人間は死んでしまうのだ。
あぁ、昔は。数年前は、ゲームにのめり込むあまりに血栓ができて死ぬ奴が居るなんて馬鹿なんじゃないかと思っていた。
でも、俺が全く同じ理由で死ぬなんて、傑作だ。
死ぬと言うのに俺は不思議と気分が良かった。いや、不思議じゃないか。人は死ぬとき、死の苦痛から逃れるために脳内麻薬をドバドバ分泌するらしいのだ。
曰く、死ぬのは性行為の200倍は気持ちが良いことなのだとか。
生まれてこの方彼女が居たことがない俺には解らないけど。
あぁ、楽しい。気持ち良い。
人生はクソだったけど、好きなゲームに没頭しながら辛い現実に直面する前に死ねるなんて、俺は幸せ者だなぁ。
そんなことを思いながら、俺は死んだのだ――
◇
「おお、生まれたぞ! 男の子だ! でかしたぞテレジア!」
「えぇ、あなた」
目が覚めると、赤髪灼眼の筋骨隆々な日焼けしたおっさんと、紫髪蒼眼の美人さんが俺を喜ばしそうに見つめていた。
? どう言う状況だ? ……俺は確かに死んだはずじゃ……
いや、そもそも死んでいない? なんてことはない。そもそも友だちの居ない俺の部屋に訪れる友だちも居ないし、両親も俺の部屋を訪ねてくることなんてない。
倒れたら、基本死んで腐り果てて近隣住民に「悪臭がします」と連絡されて初めて気付かれるような存在なのだ。
となると、これは今際に見た夢? いや、夢じゃないな。根拠はないけど、感覚的に流石にこれは夢じゃないと解る。
となると、転生? 死んだし、輪廻転生的なアレなのか?
俺の家は確かに仏教を信仰していたし、俺自身も悟りなんて何一つ開いていないから仏になることもない。……前世で徳を積んだ覚えもないから俺みたいな人間は、虫けらとかに生まれそうな気もするけど……いや、案外最も徳の低い生物が行き着く先が人間なのかもしれないな。人間ってクソだし。
一先ず、俺が輪廻転生したと仮定するとして……俺はどこに生まれたんだ?
生まれたばかりの視力は0.6程度と聞くが――薄ぼんやりとした視界に映るのは炎のように赤い髪のおっさんと紫の髪の女性。
喋っている言葉は日本語っぽいが、見た目は日本人離れしている。特に鮮やかすぎる髪の色は日本人離れどころか、地球人離れすらしていた。
染めてるにしてもセンスが悪い。DQNの子に生まれたのか? 少なくともこんな髪色の地球人が頭がおかしくないはずがないのだ。
ん? いや、待てよ? ……俺は、このおっさんの顔をどこかで見た覚えがあった。
どこだっけな?
「ハイト! お前の名前はハイト・デュークハルトだ!!」
「う、うえぁぁあああああ(デュ、デュークハルト!?)」
デュークハルトって言ったら『JRO』における超武闘派侯爵家じゃん!
アイリーン・デュークハルトを始めとして数々の強キャラNPCがこの家から排出されている。となると、このおっさんはアルジオ・デュークハルトか!!
強さ自体はそこまでだけど、それでも推奨レベル50帯のクエストで知り合える割には素ステータスが高水準だし、職業もかなり有用な部類と言える『将軍』の持ち主!
ってことは、俺はデュークハルト家の子供として生まれたのか?
ってことはつまり俺は『JRO』の世界に転生したってことなのか!?
マジか! 神展開きtらんだけど!!
そうか。俺は大好きだった『JRO』の世界に……。
生憎、ハイトなんてキャラの名前は知らないけど……全キャラ把握している自信はあったけど、俺がまだ知れてないキャラなのか、普通にモブだったのか、或いは俺が転生したことによって生じたオリキャラなのかは解らない。
でも、そんなことはどうでも良い。
なにせ俺は『JRO』の世界に転生したのだ!!
やりこむしかない。精一杯楽しむ以外の選択肢なんてないだろう!
目指すはカンストを越えた最強! 攻略wikiを運営していたが故のこのゲームに対する知識があればそれは不可能ではないはずだ!!
今まで信じてなかったけど、ありがとう! 天照大神様! 仏陀様! 俺、この世界でなら全力で生きられるよ!!
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