第177話 天使な彼女

「う、う〜ん」


いけない。俺は寝てしまったんだ。

頭がボ〜ッとする。

そういえば葵がお風呂の用意をしてくれてるはずだ.起きないと。

あれ? だけど俺は床で寝てしまったはずだけど、この頭に感じる柔らかな感じは……

クッションの様な無機質な感じじゃない。

柔らかくてあったかくて……

いつまでも夢の中にいる事ができる様な……

やばい。

起きないといけないと思いながらも、夢心地な状況にまたまどろみながら意識を手放してしまった。


「う、う〜ん」


結構寝てしまったのか、段々頭がスッキリしてきた。

うん?

俺が寝ているのは確かに床だけど、この頭を乗せている柔らかい感じ。

明らかにいつも使っている枕の感じじゃない。

これは……。

わかってしまった。

俺にはわかってしまった。

だけどなんで?

確か、葵がお風呂の用意をしてくれている間に我慢できずに眠ってしまったはず。

だけど、この頭の下にあるのは確かに人の太もも。

この部屋に俺の他にいるのは葵しかいない。

つまりはこの柔らかいのは葵の太もも!

そして俺は今葵の膝枕で寝てるってことだ!

まずい。

いやまずくはない。

むしろ幸せだ。すごく幸せだけど、このままずっとこうしているわけにもいかない。

葵に俺が起きたことを知らせないといけない。

それも自然に。


「う、う〜ん」


「凛くん、お疲れですね。こんなにぐっすり眠られて」

「……」


頭上から葵の声が聞こえてきた。

そして、ふわっと俺の頭を葵の手が撫でてくれたのがわかった。

幸せだ。これが、ナデナデというやつだと思うけど、滅茶苦茶恥ずかしい。

顔が熱い。

葵は俺が起きていることに全く気がついてないのか、そのまま頭をナデナデしてくれる。

顔だけじゃなく全身が熱くなってきた。


「凛くんはすごいですね。どんどん強くなって先に行っちゃいます。ドラゴネットを倒すなんて。きっとこれからもっと強くなって、そのうち私なんかじゃ一緒にいられなくなるんでしょうね……」

「葵! そんなことない! 俺は葵がいるから強くなれたんだ」

「え!?」

「あ……」


葵がおかしなことを口走るから、我慢できずに思わず声を出してしまった。


「凛くん、もしかしてずっと起きてましたか?」

「いや、ずっとってわけじゃないけど」

「じゃあ、どこからですか?」

「どこからって、今さっきだけど」

「もしかしなくても聞こえてましたよね」

「まあ……」

「もしかして私が凛くんの頭を……」

「まあ……」


葵の顔を見ると、真っ赤になっているのがわかるが、それと同じくらい自分の顔が真っ赤になっているのを感じる。

この状況、恥ずかしすぎて居た堪れない。

だけど、葵が俺の事を思ってくれている気持ちは心から嬉しい。

やっぱり葵は俺にとっては天使だ。

 

あとがき


フェイカーを読んでくれてありがとうございます。

投稿再開から思っていた以上に読者の方から反響があり驚いています。

とりあえず不定期連載という形でもう少し続けてみようと思います。

よろしくお願いします。


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