第178話 やっぱり葵はえらい

「り、凛くん、起きたのならもうお昼過ぎなので、お風呂に入ってくださいね。上がったらお昼ご飯ですから」

「あ、うん」


手元にあったサバイブを確認すると時刻は2時を回っていた。

葵の膝枕が気持ちよかったおかげなのか本格的に眠ってしまっていたらしい。


「ふ〜ドラゴネット強かったな〜」


結構寝たのに湯船に浸かると、身体の疲れがジワ〜っと溢れ出してくる。

Eランカーの俺からしたら遥か格上のモンスターであるドラゴネットに勝てた事は素直に嬉しいし達成感もある。

だけどあれでCランク。

竜種最下級。

今回はどうにかなったけど、あれより上位のモンスターとは勝負になるイメージは全く湧かない。

今の俺がどう足掻いても届かない。

ドラゴネットとの戦いでレベルは1つ上がったけど、そういう問題じゃない。

起き抜けに葵は、葵が俺に置いていかれるような事を呟いていたが、おそらく葵も今回の戦いでレベルが上がったはず。

葵はDランカー。先にCランカーへと至るのは葵だろう。

今のままだと置いていかれるのはEランカーの俺の方だ。

今日ドラゴネットを相手にして咄嗟に『瞬光』を使ったがまだ使いこなせているとは言いがたい。

おそらく劣化版とはいえ『瞬光』の力はあんなもんじゃない。

もっと上手く使えば可能性はあるはずだ。

それに『ボルテックファイア』にも現れたエラー表示。

まだ試せてはいないが今の段階では特に変化はないはずだ。

ただ俺の予想が正しく、もしこれがエラーではなかったとしたらどこかのタイミングで『アイスブラスト』と同様の変化を起こす可能性がある。

もし『ボルテックファイア』が同様の変化を見せるならドラゴネットであっても倒せる。

劣化版『アイスブラスト』の元来の威力とエラーを起こした今の『アイスブラスト』を考えると、『ボルテックファイア』なら必殺となり得る。

あくまでも今は俺の願望に過ぎないが、逆に俺が葵と肩を並べて先に進めるとしたらこの2つの可能性しかない気がする。

でも可能性があるだけでも俺にとっては……


「あ〜今考えてもどうしようもないんだよな〜。そろそろあがろうかな」


お風呂から上がると葵がお昼ご飯を用意してくれていた。


「それじゃあ、一緒にいただきましょう」

「うん、いただきます」


あ〜幸せだ。やっぱり葵の作ってくれるご飯は何度食べても感動的に美味しい。お昼からこんなにおいしいご飯をいっぱい食べて大丈夫なんだろうか。


「食べ過ぎて太るかも」

「凛くんは少し痩せ型なので、いっぱい食べた方がいいです.それに栄養バランスもきちんと考えて作っているのでいっぱい食べても大丈夫ですよ」

「そうなんだ、ありがとう」

「いえ、凛くんがおいしいそうに食べてくれると嬉しいですから」


葵の気遣いが身に沁みて嬉しい以外ない。


「それじゃあ食べ終えたら勉強しましょうね」

「え!?」

「まだ3時前ですから今からやれば、それなりにはかどります」

「そう……なんだ」

「はい、毎日の積み重ねが大事ですからね」

「……はい」


ドラゴネットと戦ったとしてもやっぱり葵は葵ですごかった。

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