第170話 そんな都合よくは
「葵、トロールだな」
「はい、ここからでも見えますね」
俺たちが現場へ向かうとトロールの姿がかなり遠方からでも確認できる。
しかも数は五体。
既にかなり暴れたようで、いくつか周辺の家が破壊されているのが見える。
「急いだ方がいいですね」
「ああ、そうみたいだけど、かなり気がたってるみたいだから慎重にいこう」
トロールは既に何度も倒した相手で、脚を止めさえすれば、今の俺たちにはそれほど脅威では無くなっているが、興奮状態のモンスターは想定外の動きをみせる可能性もあるので慎重に臨む。
ロードサイクルを端に置き、トロールに見つからないように近づいていく。
セオリーでは足下への攻撃だが、今の俺のスキル構成では適当なものがない。
「葵、まず俺が先頭のやつに攻撃してみるからフォローを頼む」
「わかりました」
俺が選択したスキルは『アイスブラスト』。
以前トロールを一撃でしとめることができたので、今度もトロールの頭を目掛けてスキルを発動する。
スキルの発動と共に眼前のトロールの頭部へと冷気が集まりそして爆ぜた。
頭部を失ったトロールは一言も発する事なく崩れ落ち消滅してしまった。
「凛くんさすがです。Eランクのトロールは全く相手になりませんね。トロール相手ではフォローも必要ないかもしれません」
「いや、そんなことは……」
俺のランクはEランクなのでトロールとはかなり近しい力関係のはずだが、明らかに俺のスキルがEランクの威力を超えている。
前回同様トロールを一発でしとめる威力が十分にあることが確認できた。
一体が消滅して、残りのトロールが俺を認識したのがわかる。
巨体をゆらしながら、俺の方に向け走ってくるのが見え、四体のそれは周囲に地響きを起こしている。
『アイスブラスト』
俺は迫ってくるトロールに向け順番にスキルを発動し倒していく。
二体目を倒した段階でこちらを警戒し頭部を腕で庇いながら突進してきたので、間髪をいれずにスキルを連発する。
一発目で防御している腕を破壊し、二発目でガラ空きとなった頭部をふき飛ばす。
残りのトロールは二体だが二体同時にタイミングを合わせて襲ってきた。
「やらせません。『ウィンドカッター』」
一方の敵は葵が足止めしてくれたので、俺は飛び上がって押しつぶすように向かってきたトロールを相手取る。
「そこで止まってろ! 『風舞』」
風がトロールを押し止め切り裂くと同時にトロールがバランスを崩しその場へと落ちた。
そのせいで民家の塀が押し潰されてしまったが、こればかりはどうしようもない。
「わたしだってトロール程度に手間取るわけにはいきません! 『エクスプロージョン』」
俺の背後で葵の声と共にスキルが発動し、命中した音が聞こえてくる。
俺もその場へと落ち、ゆっくりと立ちあがろうとしていたトロールの脳天へと向けスキルを発動する。
「これで消えてなくなれ! 『ボルテックファイア』」
炎雷が一直線にトロールの脳天へと飛んでいき炸裂した。
頭頂部へと直撃した炎雷はトロールの皮膚と骨を焦がし脳へと達し消滅へといざなった。
「これで終わりです。『エクスプロージョン』」
葵も追撃のスキルを発動しトロールをしとめる。
今回の戦闘で『瞬光』を調整しながら使おうと意気込んできたが、実戦でそんな思い通りにはいかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます