第169話 デメリット
結局ポーションで体調が回復してから一日中勉強することになってしまった。
不思議と長時間の勉強にもかかわらず、思いのほか捗った気がする。
なんとなくだがポーションによって脳がクリアになった気さえする。
勉強しながら、もしかしてポーションを使えばテスト前の一夜漬けが捗るんじゃないかと邪な考えが頭をよぎったが、さすがに弦之助さんからもらったポーションをその為に使用することはできない。
正直『瞬光』を使うことに抵抗はある。
またあの状態へ戻るかもしれないと考えると自然に身体に力が入り、心が拒否反応を示す。
弦之助さんは徐々に慣れると言っていたけど、自分の場合どのくらいで慣れることができるのかはよくわからない。
感覚的に一分使用するともうダメな気がする。
数十秒、三十秒以内の使用で有ればなんとかなる気がする。
ただ、体感の時間の流れが変わってしまうので、『瞬光』を使いながら正確な時間を知るには、戦いの最中時計を見るしかない。
そして『瞬光』は電化製品ではないので、つけたり消したりは自由にできない。一度使用してしまうと時間の経過で効果が失われるまでは、ずっと発動状態になる。
つまりは、『瞬光』を限定するには自分で意図的に動きを止めるしかないが、なにかしらの方法を考える必要がある。
明日以降に試してみようと考えているが、勉強が捗るという副産物的な効果を発揮したポーションにも、常習性以外にもデメリットと呼べるものがあった。
「う〜ん……眠れない」
ポーションで活性化された脳がベッドに入っても休まらない。
目が冴えて眠れない。
想像もしなかったデメリットに苦戦しながら眠ることができたのはベッドに入ってから数時間経過してからだった。
「凛くん、凛くん、起きてください。朝ですよ」
「う、う〜ん。あれ? 葵……」
「凛くん、起きれますか? もしかしてまた身体が動かないとかありますか?」
「いや、大丈夫。もう朝なのか」
頭がボ〜ッとするが、俺が起きないので葵が起こしてくれたらしい。
それにしても眠い。
「よかった。また昨日みたいに動けなくなってしまったのかと心配してしまいました」
「ああ、ごめん。昨日寝るのが遅くて」
「凛くん、体調管理も大事です。あまり夜更かしは控えてくださいね」
「夜更かしっていうか、眠れなかったんだ」
まだ眠いけど、身体の調子は完全に戻ったようだ。起き上がっても痛いところはどこにも無さそうだ。
「葵、今日は依頼がくれば受けようと思うんだけど」
「凛くん、身体は本当に大丈夫なんですね」
「うん、心配かけたけど、もう大丈夫だよ」
「わかりました。凛くんの体調を見ながら、依頼を受けましょう。もし調子が悪いようなら私が戦います」
「いや、本当に大丈夫だから」
起き出していつものように、葵の作ってくれた朝ごはんを食べてから勉強していると十一時過ぎにサバイブへと依頼を告げる着信が入った。
『ピピッ』
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