第164話 影響

『アイスブラスト』が発動する瞬間、誘導されるようにグレムリンが射程に入り爆ぜた。


「凛くん、さすがです」

「ああ、ありがとう。弦之助さんのスキル凄いな」


正直考えていたよりも遥かに凄い。

以前あれほど苦戦したミルメコレオとグレムリンをあっさりと倒すことが出来てしまった。

確実に今までよりも強くなっている。


「パパのスキルだけじゃないです。使いこなせている凛くんがすごいんです。ミルメコレオとグレムリンを一人で倒すことが出来るのは限られたサバイバーだけです。わたしも置いていかれないように頑張らないといけませんね」

「いや、大袈裟だよ。それに葵を置いていかれるって、そんな事あるはずないだろ。むしろ俺がついていくので精一杯なんだから」


『瞬光』を使える前からDランクのモンスターとはある程度やれていた。

そして『瞬光』が使えるようになった今ならCランクのモンスターにも相性によっては届くかもしれない。

ただやはり問題はスキルの使用回数だ。

スキルホルダーを『瞬光』にひとつ回したことで、絶対的なスキルの使用回数が心許ない。

今回は大丈夫だったが、以前のように数で押してこられれば対応できない気がする。


「凛くん、大丈夫ですよ。わたしもいます。二人でやれば大丈夫です」

「え……」


顔に出ていたのだろうか。

俺の考えていたことがわかっているかのように葵が声をかけてくれる。

そうだ。今は一人じゃない。

スキルの回数の問題は葵がフォローしてくれる。

ああ、俺はダメだな。やっぱりソロが長かったせいで、すぐ一人でどうにかしようと考えてしまう。

葵とチームでどうしていくかを最優先に考えるべきだ。

そう考えるとやはり『瞬光』を身につけることが出来たのは幸運以外の何者でもない。


「葵、これからも頼んだよ」

「はい、もちろんです」


俺たちは魔核を拾ってから、家へと戻ることにしたが、初めて実戦で『瞬光』を使った影響か自転車を漕ぐ脚がいつもよりも重い。

これが弦之助さんが言っていた副作用か?

ただ、漕げないほどでもないのでどうにか部屋まで戻ってくることが出来た。


「凛くん、身体が重そうですね」

「うん、やっぱりわかる? 昨日使った時は何も感じなかったんだけど、実戦で使うと反動があるのかもしれない」

「あんなでも一応Aランカーですからね。凛くんもすぐには馴染まないかもしれませんね。でも、あれだけ戦えていたんですから大丈夫ですよ」

「そうだな」


葵が俺を気遣って声をかけてくれる。


「それじゃあ、少し休憩したら勉強を始めましょうか」

「あ……うん」


気遣ってくれているのは間違いないが、それは別なんだ。

そこについては葵はかなり厳しい。

葵の言葉に従って、休憩してから勉強に取り掛かるが、いつもにくらべて集中できない気がする。


「凛くん、どうかしましたか? 少し眠いですか?」

「いや、そうじゃないんだけど。頭がうまく働かないというか、頭に入ってこない感じなんだ。別にさぼって言ってるんじゃないからね」

「そうなんですね。今まで凛くんがそんなことを言ったことはありませんし、もしかしたら『瞬光』の影響があるのかもしれません」


確かに今までにない変な感じなので、スキルの影響が出ているのかもしれない。

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