第160話 新たな可能性

しばらく動きまわっていると、身体の発光が消えてしまった。

おそらく効果が切れたということだろう。

時間にして二〜三分といったとだろうか。


「凛くんすごいです」

「葵、よくわからなかったんだけど」

「パパのスキル『瞬光』を使えてます。なんとか目で追うことはできましたが、劇的に速度が上がっています」

「え……」


葵からは速度が上がったように見えたのか。


「山沖くん『瞬光』はそういうスキルなんだ。自分自身の感覚はほとんど変わらない。普段通り動けばいいんだ。だけど周りよりもスピードは上がってる。さすがに僕が使うよりもかなり減速はしているようだけど、基本的な身体能力が上がればそれだけ倍化してスピードも上がるから、山沖くん次第ではもっと有効に使えるようになるはずだよ」

「はい、ありがとうございます」

「僕の場合、使えるスキルはこれひとつだから近接戦に特化して昇華したんだけど山沖くんの場合は違う使い方も可能かもしれない」

「どういうことですか?」

「僕はやったことがないからわからないけど、他のスキルとの併用だよ」

「他のスキルとの併用……」

「そう。『瞬光』で近づいて他のスキルでしとめる。もしこれが可能なら、条件さえ揃えばどんな敵ともやれると思うんだよね」


たしかに俺の近接戦のスキルは素人同然なのでスピードが上がったとしてもすぐには役に立たないかもしれない。だけどもし他のスキルと併用が可能なら劇的に戦闘能力が向上することを意味するかもしれない。


「そんなことができるんでしょうか」

「まあやってみないとわからないからやってみてよ」

「すいません、使えるのはさっきの一回だけです」

「まあ、それはしかたがないかな。だけど僕もほとんどの戦いで一回以上使うことってないから、それほど気にすることじゃない。だけど明日はちょっと注意しておいたほうがいいな」

「注意ですか?」

「今は感じないかもしれないけど、このスキル思ってる以上に身体に負担がかかるから。鍛えるまでは次の日に大変なことになる。覚悟しておいた方がいい。まあ山沖くんの場合スキルが減衰しているからリバウンドも減衰してるんじゃないか」


覚悟がいるほどのリバウンド? そういえば部屋でも数日寝込む場合もあるって言ってたけど、今はなんともない。身体に痛みもないし本当にそんなものがあるのか? 案外弦之助さんのいうように威力が減衰したせいでリバウンドも軽いのかもしれないのでこのまま何もない可能性もある。


「それじゃあ山沖くんが動けてるうちに、さっさとランチに行こうか」

「そうね。それじゃあタクシーでいきましょう」

「ママ、何を食べにいくの?」

「久しぶりの日本だからお寿司にしようと思うだけど凛くんお寿司大丈夫?」

「はいもちろんです」


大丈夫かと聞かれても回転寿司なんか行ったこともないので答えようもないが、夢の回転寿司だ。断るという選択肢はない。


「え……ここって」


クリスティーナさんに連れられて、寿司店に着いたが、そこは俺の憧れていた廻るお寿司ではなく廻らないお寿司。

見るからに高級そうな寿司店に入ることになってしまった。

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