第159話 瞬光

「どうだろう。見てみるかい?」

「はい是非お願いします」


こんな機会は二度とないかもしれない。不安はあるが断るという選択肢はない。


「山沖くんの話だと威力が減衰するってことだから、負担も軽くて済むんじゃないかと思うだよね」

「はい」

「それじゃあ、早速表に出てやってみようか」


弦之助さんに連れられて、表の通りに向かう。


「戦うわけじゃないからここでいいかな。それじゃあやってみるから山沖くんは一応構えててよ」

「はい」

「それじゃあいくよ。よく見てて。『瞬光』」


弦之助さんがスキルを発動すると、弦之助さんの身体がぼんやりと光を放っている。

次の瞬間光がぶれたと思った瞬間、俺の眼は弦之助さんの姿を見失い、次に認識した時には弦之助さんの手刀が俺の首に当てられていた。


「あ……」

「どうだい? 結構すごいだろ? これでもまだ全力じゃないよ」

「うそ……でしょ」


全く見えなかった。完全に俺の認識できる速度を超えていた。

それがまだ上があるのか?

見えない攻撃をかわせるはずはない。これがAランカー。すごすぎて理解が追いつかない。


「それじゃあ早速、模倣してみなよ」

「はい」


問題はどのスキルと換装するかだ。

現在の俺のスキルホルダーはこんな感じだが、


スキル  『フェイカー』《ウインドブレイク3》《ボルテックファイア3》《ライトニング7》〈《アイスブラスト9》〉《風舞5》


『アイスブラスト』は外せない。そして残りのスキルは全て、神木さんと遠薙さんというBランカーのスキル。正直どれも外し辛い。

回数的には『ライトニング』が七回なので、この中では威力が若干劣る。

だけど、今まで俺のメインスキルと言っても過言ではないスキルだ。

う〜ん、『ライトニング』か『風舞』か……

幸い『アイスブラスト』が九回使用できる。

やはり外すとすれば『ライトニング』しかないか。


「じゃあやってみます。『瞬光』」


スキルを模倣して発動した瞬間、自分の身体がうっすらと光っているのがわかる。

どうやら模倣することに成功したらしい。

試しに動いてみるが特に変化は感じられない。ダッシュしてみるがいつもと変わった様子はない。

どういうことだ?

発動したけど俺には使いこなせていないということなのか?

ステータスを確認してみる。


スキル  『フェイカー』《ウインドブレイク3》《ボルテックファイア3》《瞬光0》9《風舞5》


間違いなく『ライトニング』に置き換わって『瞬光』が表示されている。

回数は0だ。使えるのは今使用している一回のみということだが、Eランカーの俺がAランカーのスキルを一度だけでも使用できるのは奇跡的なことかもしれない。

だけど、肝心の使用している『瞬光』の効果がよくわからない。

特に、体が軽いわけでも、馬力が上がった感じもしない。

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