3章 胎動
第151話 アイスブラスト
「凛くん、もう少しで着きます」
「わかった」
朝から予想外の依頼だったが、二人で現場へと向かい、そろそろ目的地に着くようだ。自転車を傍にとめてモンスターを探す。
モンスターは大型のトロールだったのですぐに見つけることができた。
最近格上ばかりのモンスターと戦っていたせいか、以前ほどトロールから圧力を感じない。
「葵、敵はトロール一体だけかな」
「今のところは他のモンスターは見受けられませんが、最近途中で数が増えたりすることもおきているので、注意して戦いましょう」
「わかった。まずは俺がやってみるから葵は、そのまま待ってて」
「はい」
俺には試さなければならない事がある。
それは、突然使えるようになったスキル『アイスブラスト』だ。
あの時はCランクのゴブリンロードを倒すほどの威力を発揮したが、あれはたまたまだという可能性もある。
葵のサポートが受けられるこの状況でもう一度試しておきたい。
『アイスブラスト』の射程距離がよくわからないが、とりあえず『アイスジャベリン』の距離まで近づけばいけるだろう。俺はトロールに向けて走り出し、距離を詰める。
トロールもこちらを認識したが、やはり以前のような圧力は感じない。
自分ではこの状態がいい状態なのかどうかは判断がつかない。
トロールも油断ならないモンスターだ。それと対峙して緊張感が足りない気もするが、リラックスできていて動きは悪くないと思う。
「それじゃあ、いくぞ! 『アイスブラスト』」
トロールの頭部をめがけてスキルを発動する。
冷気がトロールの頭を中心に収束し、そしてはじけた。
「あ……」
冷気がはじけると同時にトロールの頭部もはじけ飛び、そのままトロールは消え去った。
「凛くん……トロールが一発で。そのスキルは……」
「あぁ、ゴブリンロードを倒した『アイスブラスト』だけど、まぐれじゃなかったみたいだ」
「すごいです。Eランクの中でも耐久力の高いトロールを。威力だけならDランカーいえ、Cランカーに迫るのではないでしょうか」
「いや、Cランカーはさすがに言い過ぎだよ」
「ゴブリンロードを倒していますし、トロールを一発でしとめることができるDランカーは限られると思います。それを考えるとやっぱりCランカーに近い威力があると思います」
葵に言われると、そんな気になってくるから不思議だが、確かにこの威力ならDランクのモンスターでも問題なく倒せそうな気がするので、Dランカー中位以上の威力はある気がする。
とんでもないな。
なぜ、急にこんなスキルが使えるようになったのかはいまだに分からないままだ。
もしかしたら他にも強力なスキルを使えるかもという誘惑にも似た好奇心で、スキルを換装してどうなるのか検証してみたい気持ちもあるが、『アイスブラスト』が消え去ってしまう可能性を考えると怖すぎてそれはできそうにない。
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