第152話 対空スキル
「凛くん避けて!」
トロールを倒して完全に気が抜けていたところに、突然葵の声がしたので咄嗟に反応し、後方へと飛び退く。
俺が今までいたその場の地面に羽根がささっている。
この羽根はまさかハーピーか。
すぐに上空へと目をやると二体のハーピーが旋回しているのが見えた。
「トロールだけじゃなかったのか」
「やっぱり、最近モンスターの出現の仕方が今までとは違っています。気を抜かずにしとめましょう」
「大丈夫。俺にまかせて」
以前ハーピーと戦った時にはかなり追い詰められてしまったがあの時よりも数も少ないし、何よりも俺にはあの時は使えなかった対空スキルがある。
ハーピーの攻撃に気をつけながら、注意深くハーピーの動きを観察するが、二体はバラバラに旋回しているので交わる瞬間は無さそうだ。
「葵、下がってて。『ウィンドブレイク』」
俺は二体同時にしとめることは諦めて、一体に狙いを絞りスキルを発動する。
見えない風がハーピーを覆い、そしてハーピーの意識を刈り取り墜落へといざなった。
「もう一体、これで終わる。『ウィンドブレイク』」
二発目のスキルが発動しその直後にハーピーが地面へと墜落した。
「凛くん、すごい……」
「いや、遠薙さんのスキルのおかげだよ。上空の敵もこのスキルのおかげで楽に倒せるようになったんだ」
前回、葵と2人がかりでもあれほど苦戦したのに、今回はあっさりと倒すことができた。俺の劣化『ウインドブレイク』でもハーピーに対しては絶大とも言える効果を発揮することができた。
まあ『ウィンブレイク』を使える回数も限られているので、もっと数が多ければ今回のように上手くはいかなかったかもしれない。
他にモンスターがいないか周囲へと注意を巡らせて、その場で臨戦態勢を保つがどうやら今度は本当に終わったようだ。
「凛くん、終わりましたね。それにしても凛くんはもうEランカーの範疇には収まっていないです。Dランカー以上、やっぱり今の段階でもCランカーに届くんじゃ……」
相変わらず葵の評価が高くて返答に困ってしまうが、Eランカーの俺がCランカーに並ぶってさすがにそれは過大評価が過ぎる。
「それじゃあ、魔核を拾ったらそろそろ帰ろうか」
「はい、わかりました」
俺たちは地面に落ちた魔核三個を拾ってから家路につく。
「葵のご両親っていつ頃来るんだろう」
「特に何も言っていませんでしたが、昨日には日本に着いているはずなのでそんなに遅くはならないと思います」
「じゃあ、やっぱり寿司の出前を」
「凛くん、大丈夫です。時間にもよりますけど、よかったらみんなで食べに行きましょう」
「ああ、そうだね。そうしよう」
もう少しで家に着くので早く準備しないといけない。
自然とペダルを漕ぐ脚にも力が入った。
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