第150話 2章終話 Eランカーの自分
結局、寝るまで落ち着かなかったが、翌日に向けて早めに寝ることにした。
眠ろうとすると、頭の中に空想上の葵の両親が出てきて、身体に力が入ってしまう。
元々人とのコミュニケーションが得意な方ではないが、特に大人の男性とは学校の教師以外にほとんど接点を持ってこなかったので、葵のパパと上手く話せるのか今から心配だ。
葵のパパか。楽しい人だとは言っていたが、どんな人だろう。まず会ったら最初はボンジュール……
いや、日本語の方がいいかな。そもそも、パパとママのどっちがモナコに縁があるんだったっけ。
そんなくだらないことをずっと考えているといつのまにか眠りについていた。
「あぁ、もう朝か」
目を覚ますと、既に部屋は明るくなっていて時計を見ると6時50分になっていた。
結構よく寝たので、頭はスッキリしているが、俺はついに、その日を迎えてしまったらしい。
俺はすぐに起き上がると身支度を始める。今日はいつもとは違う、葵に選んでもらった服を着る。
慣れないので違和感たっぷりだが、これで少しはまともに見えるだろう。自分で言うのもなんだが馬子にも衣装だ。
葵はまだ部屋には来ていないが、もう起きていると思う。
何時に来るんだろう。あ〜緊張してきた。
『ピピッ』
その時聴き慣れた電子音が部屋に響いた。
「あっ!」
やってしまった。この大事な日にサバイバーの端末設定をOFFにするのを忘れてた。
普段学校に通っている時は、この時間依頼を受ける事は無いので、今日まさかこのタイミングで依頼が入るとは思ってもいなかった。
だが、さすがに精神集中が必要な今の状況で、普段通り依頼を受けることは難しいな。
よし、今日は断ろう。そうしよう。
そう考えた瞬間、部屋のチャイムが鳴って、葵がやってきた。
「凛くん、依頼ですね。朝から頑張りましょう」
あ〜俺の端末が鳴ったということは、もちろん葵の端末にも反応があったということだ。
葵の、この元気な感じは当然依頼を受けるの前提だ。
この葵の顔を見て、精神集中したいから、いまさら断ろうとは言い出せない。
「そうだね。頑張っていこうか。じゃあ俺は服も着替えないといけないから、少し待ってくれる?」
「私も準備してから表で待ってますね」
「うん」
朝からせっかく、新しい服を着ていたが、この格好でモンスターのところへ向かうわけにはいかないので、もう一度普段の格好へと着替え直す。
装備も整えて部屋を出ると、いつものように葵が待ってくれていた。
葵の両親のことは気になるが、依頼を受けたからには依頼に集中だ。
「それじゃあ、向かおうか」
「はい!」
気を引き締めなおして、俺と葵はいつものようにロードサイクルに乗って現場へと向かう。
この感じが、今は当たり前のようになっているが、葵のおかげで俺は以前よりも強くなれた。
つまずきもあったかもしれないが、今LV 12のEランカーのサバイバーとして頑張る事ができている。
葵と一緒なら、もっと先を目指す事ができる。今、そう信じる事ができる自分がいる。
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