第143話 魔核がいっぱい

「凛くん、本当に助かったんですね」

「ああ、助かった。葵、歩ける?」

「はい、問題ありません」

「それじゃあ、もしもの事があるとまずいから、さっさとここは立ち去ろう」

「そうですね」

「せっかくだから魔核は拾っていこう。そういえば、今度 新城にゴブリの魔核を二個渡さないといけないな」


新城のやつ、永野さんに格好をつけたのか、それとも単純に忘れていたのか、自分で倒したゴブリンの魔核を回収せずに帰ってしまった。

俺は地面に散らばった魔核を集めて回る。

小さい魔核が三十四個、中ぐらいの魔核が二個、そして一際大きな魔核が一個の合わせて三十七個もの魔核が落ちていた。

新城が倒してくれた二体を差し引いても、俺と葵だけで35体ものモンスターを倒したことになる。


「凛くん、その大きな魔核は……」

「ああ、ゴブリンロードの魔核だよ」

「じゃあやっぱり凛くんが倒したんですね」

「まあ、なんとかね」

「でも、どうやって……」


葵の疑問も当然だ。葵が気を失う直前まで俺はほとんどのスキルを使い果たして、圧倒的なゴブリンロードの前に完全に手詰まりだったのだから。


「それが、よくわからないんだけど『アイスジャベリン』を『エクスプロージョン』に換装して使おうとしたら『アイスブラスト』っていう見たことないスキルに変わって、どうにかそのスキルで倒したんだ」

「『アイスブラスト』ですか?」

「そう『アイスブラスト』冷気が集まって爆発する感じのスキルなんだけど、かなり強力だった」

「凛くんは、そのスキルを見たことはないのですか?」

「それが全くないんだ。こんな強力なスキルなら絶対忘れない」

「不思議な事があるものですね。だけど凛くんがゴブリンロードを倒したことは間違いなのですから、すごすぎます」

「最後はスキルが尽きて新城に助けてもらったけどね」

「それはびっくりしました。でも彼らにも今回ばかりは感謝ですね」

「ああ、スキルなしじゃゴブリン二体の相手は無理だったから本当に助かったよ」


本当に新城が現れなかったらと思うと、今更ながら寒気が走る。

アニメでいうところの主人公や正義のヒーローが現れるタイミングでの登場に、性格はあれだが新城はそういう星のもとに生まれたんじゃ無いかと真剣に思ってしまう。

魔核も回収したので、さっさとその場を離れることにする。

運良く助かったが、さすがにこれ以上はモンスターを相手にはできない。


「葵、魔核が俺たちの分だけで35個もあるんだけど、一体いくらぐらいになるんだろう」

「そうですねまずゴブリンの魔核が一個一万円で三十二万円、Dランクの魔核は一つ三十万円として六十万円、そしてCランクのゴブリンロードの魔核ですがおそらく五十万円はくだらないかと思います。全部で最低でも百十二万円以上あると思います」

「百十二万!?」


確かにゴブリンロードの強さを考えると納得の金額ではあるが百十二万円か。とんでもない金額だな。

二人でわけても一人五十万円以上だ。

Cランカーともなれば日常的にこれ以上に金額を稼いでいるということか。

上位のサバイバーは計り知れない。

だけど、お金ももちろん嬉しいが、とにかく今は助かったことを喜びたい。

命はお金では買えない。なにより葵が無事で本当によかった。


あとがき

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