第142話 現れたサバイバー
声の方を見るとやはりいた。
俺のクラスメイトだった新城とその取り巻きだった女の子だ。
なぜ新城がここにとは思ったが、渡りに船とはこのことだ。
「新城、助けてくれ!」
「うん? 誰かと思ったら山沖か。まさか救援要請を出したのはお前か。それにそこに倒れているのは、若葉さんじゃないのか?」
「そうだ。ゴブリンの群れに襲われて手に負えないから救援要請を出したんだ」
「プッ……もしかしてゴブリンの群れってそいつらのことか? 二体でも群れといえば群れだけど」
「いや、そうじゃない。だけど今はそれはいいから、このゴブリンを頼む!」
「ふ〜っ、山沖の頼みとはいえ、若葉さんもいるんだこの場で助けないわけにはいかないからな。いくぞゴブリン。俺の必殺をくらえ! 『アイスジャベリン』」
オリジナルの『アイスジャベリン』がゴブリンを襲う。
そういえば『アイスジャベリン』は新城から模倣したんだった。
完全に頭から抜けていたが、やはりオリジナルだけあって俺の放つそれよりも威力は上だ。
「グアギャア〜」
「しぶといやつだな、だがこれで終わりだ『アイスジャベリン』」
二発目の氷の槍がゴブリンに突き刺さり、消滅へと追いやった。
「きゃ〜新城くんカッコいい! じゃあ私も負けてられない『グランドマッシュ』」
取り巻きの女の子、確か永野さんだったか。彼女がスキルを発動すると、地面の土がゴブリンに向けて隆起して拘束し始めた。
彼女は土系のスキル使いなのか。
「やるな〜。それじゃあとどめは俺がもらうよ」
「は〜い」
「俺の糧となれ! 『アイスジャベリン』」
氷の槍は身動きの取れなくなったゴブリンの頭部を捉え、消滅へと追いやった。
「やっぱり、ゴブリン程度じゃ今の俺の相手にはならないな。まあ当然だけどね。ははは」
「そうよね〜新城くんの敵じゃないよ」
これは……
助かったのか?
ゴブリンが新城たちによって葬り去られたということは、そういうことだよな。
でもなんで新城がこんなところに……
「新城、なんでここに……」
「俺たち動物園でデートしてたんだ。そしたら救援要請が来たから、慌ててきたってわけさ。それにしても若葉さんもいてゴブリンごときにやられるとは、どうせお前が足を引っ張ったんだろ」
「まあ、否定はできない」
「う…ううん、凛くん」
「葵!」
新城と話している間に葵が目を覚ました。
よかった。
「凛くん、ゴブリンロードは……」
「大丈夫だ。もう倒したから」
「若葉さん、気がついたようだね。間に合ってよかったよ。ゴブリンは僕が倒したから安心してくれていいよ」
「えっ……彼は」
「ああ、新城が救援に来てくれたんだ。ゴブリン二体を倒してくれたんだよ。本当に助かったよ。新城ありがとう」
「そうなんですね……助けていただいてありがとうございます」
「ははは、当然のことをしたまでだよ。ゴブリンなんか俺の敵じゃないよ」
「新城くん、そろそろ戻ろうよ。もっと動物見た〜い」
「ああ、そうだね。それじゃあ」
「永野さんもありがとう。助かったよ」
「は〜い、それじゃあね〜」
結果として俺たち二人の窮地を救ってくれた新城たちは、そのまま動物園へと戻っていった。
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