第138話 ゴブリンロード
ゴブリンロードが剣を構えこちらへとゆっくり向かってくる。
『アイスジャベリン』では傷一つつけることが出来なかったので、俺に残された手段はやはり『ボルテックファイア』一発のみ。
「来させません!『エクスプロージョン』」
ゴブリンロードを爆炎が襲った。
「葵!? 逃げろって言っただろ。今ならいける」
「お断りします。凛くんを置いてわたし一人で逃げる気はありません」
「……ッ、じゃあ逃げるんじゃなくて救援を、救援を呼んできて!」
「救援要請は既に済ませました。土地勘のないわたしが探し回って見つかるとは思えません」
「ガアアアアアアアアア〜!」
ゴブリンロードが吠えた。大気が震える。ただの咆哮なのに身体が竦む。明らかに今までの敵とは格が違う。
『エクスプロージョン』
再度葵が放った爆炎がゴブリンロードを直撃する。
ゴブリンロードに深傷を負わせることはできていないが、確かに嫌がっているのが見てとれる。
氷の槍は避けることすらしなかったことを考えると、もしかして炎に弱いのか?
なら、俺の炎雷も可能性がある。
葵のスキルがあれば、俺の『ボルテックファイア』でなんとかなるか?
僅かな可能性が頭に浮かぶ。
ただ今の一撃でゴブリンロードの目には葵の姿がはっきりと写されている。
やばい。さっきの攻撃で完全に葵のことをターゲットにしてしまった。
この近距離でゴブリンロードに狙われては、逃げるのは難しいだろう。
ゴブリンロードが腰を落として、駆けた瞬間、地面が爆ぜ俺たちとの距離が一瞬で縮まった。
「速いっ!」
巨体のくせにグレムリン並みのスピードだ。このままでは葵がやばい。
「そう簡単には負けません『エクスプロージョン』」
葵がカウンターで迫ってくるゴブリンロードにスキルを放つ。
「ガアッ!」
カウンターで決まったのでゴブリンロードは、爆炎を避けることはできずに、直撃を避けるために咄嗟に腕で頭部を庇い、その場で爆炎を耐え切った。
ダメージは確実にあるが、このままでは葵が狙われる。
『アイスジャベリン』
少しでも時間を稼ぐ。俺に残されたスキルを発動するが、やはりゴブリンロードには効果がない。
もう猶予はない。
「やらせるかっ。『ボルテックファイア』」
俺は葵の前に走り込み、すぐさま最後の炎雷を放った。
「ギャガアアアァ!」
炎雷が直撃するが、ゴブリンロードは咆哮と共に剣を縦に構えて耐え切った。
「くそっ! 葵引いてくれ! スキルが切れた!」
もう少し至近距離から撃てれば結果は違ったかもしれないが、俺にとって必殺とも言える最後の『ボルテックファイア』が防がれてしまった。
予想できた結果だが、俺にはもう、ゴブリンロードに対抗する術は残されていない。
完全に詰んだ。
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