第137話 限界突破の先

ゴブリンファイターの正面から炎雷を放つ。

決死の攻撃はゴブリンファイターを直撃し、その身を焦がし胸部に大きな穴を開ける事に成功した。

致命傷を受けたゴブリンファイターはそのまま地面へと崩れて落ちた。


『ギャアアアア〜!」


仲間が攻撃をくらい倒されたのを見たもう一体のゴブリンファイターが怒り狂って、葵のスキルを突っ切り俺の元へと迫って来ようとしていた。

あわてて『アイスジャベリン』を放つが、弾かれて時間稼ぎにもならない。


「凛くん! させません!『ウィンドカッター』」


葵が俺を助けようとして風の刃を放ちゴブリンファイターに手傷を負わせるが、止まらない。


『風舞』


俺は最後の『風舞』を放ちゴブリンファイターを迎撃する。

スキルの発動と同時にゴブリンファイターに向かって風が収束していくが、スキルの発動にゴブリンファイターのスピードが勝り捉えきれない。


「ガアアアアッ」


『風舞』により左腕と半身を大きく損傷してはいるが止まらない。


「凛くん!!」


葵の声が聞こえた気がするが俺の意識は迫ってくるゴブリンファイターに集中していた。

これを外すと俺は死ぬ。

絶体絶命とも言える状況で俺の集中力は極限まで高まっていた。

もしかしたら以前、極限の一夜漬けをして限界突破を果たしたことで、集中力と精神力も鍛えられたのかもしれない。

右の拳を振りかぶり、俺を叩き潰そうとして迫ってきたゴブリンファイターが漫画のようにスローに見えたりすることはないが、動きはしっかりと予測できる。

その場から後方へ一歩だけ下がり、この日二発目となる必殺のスキルを放つ。


『ボルテックファイア』


俺を攻撃しようと拳を振りかぶり、完全に無防備となった頭部に炎雷が命中し、その命を焼き尽くした。

やった……

これで残るはゴブリンロード一体のみ。

なんとか俺のスキルが尽きる前に望んでいた形までは持って来ることができた。

残る『ボルテックファイア』は一発のみ。しかもCランクのゴブリンロード相手に確実に効くという保証はない。


「葵! 逃げろ! 今なら逃げられる!」


今ならまだ俺のスキルは残っている。俺が引きつければ、葵だけならなんとか逃げる事は可能だろう。

これが俺の望んだ状況。


「無理です! 逃げるなら二人で!」

「俺も後から逃げるから、先に逃げろ!」

「ダメです。逃げるなら一緒に逃げましょう」


俺だって一緒に逃げたいのは山々だが、眼前のゴブリンロードがそれを許してくれるとは到底思えない。


『アイスジャベリン』


俺だけに意識を向けさせるためにスキルを発動するが、ゴブリンロードは手に持つ剣を振るうことすらしなかった。

俺の放った氷の槍は間違いなく、ゴブリンロードに命中した。

命中したのにゴブリンロードは完全に無傷。

俺の放った『アイスジャベリン』はゴブリンロードに傷一つつけることは叶わなかった。


あとがき

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