第136話 決死戦

この数をどうにかするにはあと一回使用できる『ウィンドブレイク』しかない。

ウィンドブレイクならうまく誘い込めば範囲内のゴブリンは全て倒すことが可能だ。

問題はゴブリンファイターやゴブリンロードにも効果があるのかということだ。

遠薙さんがオリジナルの『ウインドブレイク』を使えばおそらくゴブリンロードでも倒せる気はするが、俺の劣化版ではそれは望むべくもない。


「葵! ゴブリンを一箇所に誘導して!」

「わかりました」


ひと言だったが、葵に俺の意図は伝わったようで葵がゴブリンに向けてスキルを放ち始める。


『エクスプロージョン』


葵が爆炎を放ち、徐々に範囲を限定していくが、ゴブリンロードは特にこちらを気にした様子も見せない。

先程ゴブリンに対して『ウィンドブレイク』を使ったのでおおよその有効範囲はわかっている。

ゴブリンは葵の攻撃に、その数を減らしながら徐々に範囲を狭めていく。


「そっちにはいかせません。『エクスプロージョン』」


今しかない!

全てのゴブリンが範囲内に入ったわけではないがゴブリンロードを中心に密集状態ができている。


「決まってくれ!『ウィンドブレイク』」


祈るような気持ちで最後の一回を発動する。

発動と同時にゴブリンがその場へと崩れ落ちる。

その数は五体。

やはりゴブンロードとゴブリンファイターには耐え切られた。

だがゴブリンファイターの一体は、膝をついているのでそれなりのダメージを与えることができたはずだ。

残るはゴブリン一体と残りの三体だ。


『ウインドカッター』


すかさず葵が攻撃を繰り出しゴブリンの首を刎ねた。

残るは三体のみとなった。

だがこの三体が問題だ。

さすがにゴブリンロードもこちらを敵と認定したようで、手に持つ斧を構えこちらを睨んでいる。


「葵、なんとかあのゴブリンファイターを倒そう」

「まかせてください」


ゴブリンロードは後回しだ。

最悪ゴブリンロード一体なら二手に分かれれば葵は逃げ切ることができるかもしれない。

俺達はダメージを負っているゴブリンファイターをターゲットにする。

ゴブリンファイターなら至近距離から『ボルテックファイア』を浴びせれば倒せるのは、以前の戦いで実証済みだ。

装備はないが、ゴブリンファイターの懐に入る。それしかない!


『アイスジャベリン』


氷の槍を発動して牽制しながら、ゴブリンファイターへ向けて走り出し距離を詰める。


「わたしが相手です。『エクスプロージョン』 『エクスプロージョン』」


葵がゴブリンロードと残りの一体に向け爆炎を放ち、俺への意識を逸らせる。


「おおおおおおおあぁぁぁ〜!」


雄叫びをあげ手負いのゴブリンファイターへと突っ込む。

どれだけ虚勢を張ろうとも怖い。

プロテクターもスーツもつけていない状態で格上のモンスターへと突っ込んで行く。

死ぬほど怖い。

腹の底から雄叫びをあげなければ、身体が強張って動かなくなってしまいそうだ。

決死の覚悟でゴブリンファイターの前に立つ。


「うぉおおおおおお!『ボルテックファイア』」

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