第126話 荒ぶる精霊

「遠薙さん、今のは……」

「凛くんたちもいるからちょっと張り切っちゃった〜」

「これが風姫……」

「え〜葵ちゃん照れちゃう」


あれだけ俺と葵が苦戦したハーピーを、それも二体同時に一瞬で倒してしまった。

Bランカーの実力をみくびっていたわけではないが、遠薙さんの想像以上の力に唖然としてしまった。

ハーピーはそれぞれ離れた場所を飛んでいたのに、一撃で両方のハーピーが落ちた。

『ウィンドブレイク』と言っていたが、広範囲攻撃スキルか? しかもハーピーを一撃で倒す程の威力。


「遠薙さんさすがですね。今回は助かりました。ありがとうございます」

「いいのよ。この前のお礼だから。それより凛くん、あれはなにかな〜」

「あれって言うのは……」

「最初にハーピーをしとめたスキルのこと」


そうですよね。本当はわかっていました。


「あれは……『風舞』ですかね……」

「やっぱりそうよね。凛くんが私と同じスキルを使っててびっくりしちゃった。凛くん前回会った時は、使ってなかったでしょ。どういうことか説明してほしいな〜」

「はい」


これはしっかりと説明するしかないな。

葵の方を見ると複雑そうな顔をしているが、しかたがない。


「実はさっき使ったスキルは遠薙さんのスキルです」

「私のスキル? どういう意味かな〜」

「俺のスキルは『フェイカー』というスキルで、人のスキルを模倣できるんです」

「模倣できる?」

「そうです『風舞』もこの前遠薙さんが使っているのを見て模倣したんです。気を悪くしたらすいません」

「別に盗まれたわけでもないし気を悪くするとかはないわ。それにしてもスキルを模倣できるって反則じゃない? うらやましい〜」

「いや、俺の模倣は劣化版なんでうらやましいとかそんなんじゃないんですよ」

「いえ、劣化していたとしても『風舞』をあっさり模倣できるって規格外よ。やっぱり凛くんにはなにかあると思ったのよね〜」


どうやら嫌がられてはいないようなので一安心だが、葵同様に遠薙さんの過剰評価が過ぎる。


「もしかしてクインタプルもそのスキルの?」

「そうです模倣できるスキルホルダーが五個なんです」

「もしかしてレベルアップでスキルが増えてるんでしょ。凛くん、君ならAランカーになれるかも。もしかしたらいつかSランクにだって届くかも」

「遠薙さん冗談はやめてください。俺はただのEランクですよ?」

「冗談なんかじゃない。そのぐらい凛くんのスキルは、サバイバーの常識を超越してる。すぐに私なんか追い越されちゃいそう」

「そんなのあり得ませんよ」

「凛くん! よかったら私とパーティ……」

「遠薙さん!! そこまでです!」


風が風の精霊が今までにないほどに暴れている。

精霊使いではない俺にすら具現化した精霊が見えそうなほど荒ぶっている。



あとがき

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