第125話 風を操る者

スピードと高度を上げた三体を倒すには、どうにかしてスキルを直撃させ落とすしかない。

敵の攻撃に注意を払いながら上空の敵へとスキルを放つ。


「当たれよ!『ボルテックファイア』」


炎雷が一直線に上空のハーピーに向けて飛んでいくが、直線的な軌道が読まれてあっさりと躱されてしまった。

やはり単発で上空の敵に当てるのは難易度が高すぎる。


「追い込んでしとめましょう。わたしが『ウィンドカッター』で誘導するので、凛くんがしとめてください」

「わかった」


葵がハーピーの一体に向けて『ウィンドカッター』を連発して右方向へと誘導していく。

他の二体の攻撃は俺が『エクスプロージョン』で防ぎながらスキルを放つタイミングを図る。


「今だ!『ボルテックファイア』」


今日二発目の炎雷はハーピーの頭部を捉える事に成功して、頭部を失ったハーピーは地面に落ちる事なくその場で消え去った。

これであと二体。

仲間が消滅したのを確認したハーピー二体は、攻勢を強め交互に羽根を放ってくる。


『エクスプロージョン』


これはかなりまずい。

俺の『エクスプロージョン』の使用上限が近づいてきた。

葵のスキルを発動する時間を稼ぐためには、俺がハーピーの攻撃を防ぐ必要があるが、このままではそれも出来なくなってしまう。

徐々に追い詰められてきている状況に焦りを感じてしまう。


「凛く〜ん、葵ちゃ〜ん、初見でハーピー三体を倒しただけでも大したものだと思うけど、そろそろキツイんじゃない?」

「遠薙さん、全く問題ありませんので、そのまま見ておいてください」

「凛くん、葵ちゃんはこう言ってるけど?」


葵はまだ余裕があるのかもしれないが、スキル的に俺が手詰まりなのはどうしようも無い事実だ。

今一番大事なのは、モンスターを倒し、俺たちも無傷で帰る事だ。


「遠薙さん、助けてもらっていいですか?」

「もちろんよ♪」

「凛くん!」

「葵じゃなくて俺の問題なんだ。俺じゃ残りの二体を倒せない」

「大丈夫です。わたしが倒します」

「葵、ごめん」

「凛くん……わかりました」

「じゃあ、チャチャッと片付けてしまいましょうか。終わったら凛くんともお話ししたいし〜」


遠薙さんは、戦闘中とは思えない緊張感のない感じで、俺たちの方へゆっくりと歩いてくる。

まあBランカーの遠薙さんにとっては、空中にいたとしてもEランクのハーピーなどとるに足りない相手なのかもしれない。


「くるくる動き回ってめんどくさいわね。一度に済ませちゃうから〜『ウィンドブレイク』」


遠薙さんがスキルを発動した瞬間、それまで上空を高速で旋回していたハーピーが二体ともに動きを止めて落ちた。


「あ……」


遠薙さんのスキルが発動したのはわかったが、なにがどうなってハーピーが落ちたのか俺には全くわからなかった。

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