第124話 風使い
『ボルテックファイア』をこの距離で当てる自信はない。ここは『風舞』を使うしかないか。
後方に控えている遠薙さんに一瞬目線をやるが覚悟を決めてハーピーへと視線をすぐに戻す。
「葵、もう一度『ウィンドカッター』を頼む」
「わかりました。まかせてください『ウィンドカッター』」
翼を羽ばたき葵のスキルを相殺するタイミングを見計らい俺もスキルを放つ。
『風舞』
スキルを発動したが、目測を誤ったようでハーピーは無傷だ。やはり上空への攻撃は距離感が分かりづらく難易度が高い。
「当たってくれ!『風舞』」
距離感を修正して再びスキルを放つ。
「ピイイイイィィ」
今度は収束した風がハーピーを捉えその翼を切り刻み、飛ぶすべを失ったハーピーはそのまま地上へと落下して消滅した。
どうにか勝つ事ができたが、ハーピーは強かったというか手強かった。
EランクモンスターだがDランクモンスターと戦っている時と同じぐらいしとめるのに手こずってしまった。
「凛くん今のって……」
後ろから遠薙さんの声が聴こえてくる。目の前で二回発動したんだからそれはわかるよな〜
「あ〜遠薙さん、これはですね。説明……」
「凛くん! あれ!」
葵の切羽詰まったような声に慌てて上空を見るが、なんとそこにはハーピー四体が旋回しながら飛んでいた。
「一体だけじゃなかったのか?」
「最初から五体だったのかもしれませんが、さっきの個体が喚んだのかもしれません」
いずれにしても、先程まであれほど手こずったハーピーがあと四体出現した事実は変わらない。
『風舞』は既に二回使用したので、発動できるのはあと二回。
残りは『ボルテックファイア』と他のスキルでなんとかするしかない。
ハーピーの一体が旋回しながら羽根を放ってきた。
『エクスプロージョン』
爆炎を放ち飛んでくる羽根を焼き払うが、間髪入れずに他の個体が羽根を飛ばしてくる。
「くっ、数が多すぎる。『エクスプロージョン』」
やばい、このままだと確実に削られる。
「葵、攻めよう、このままじゃまずい」
「はい」
とにかく出来るだけ数を減らさないと、上空から四体に攻撃されるのは圧倒的に分が悪い。
「墜ちなさい。『ウィンドカッター』」
葵が狙ったハーピーを目掛けて俺もスキルを発動する。
『風舞』
一体目で距離感を掴めたおかげで、今度は一発目でしとめることが出来た。
先程と同じようにハーピーは地面へと墜落して消滅した。
次を倒すべくすぐに攻撃態勢に入るが、俺たちの攻撃を見て警戒を強めたのか残るハーピー三体の旋回スピードが上がった。
「『ウィンドカッター』凛くんすいません」
葵が先程と同じように風の刃を放つが、ハーピーは翼で打ち消す事はせず、そのまま急激に上昇して躱した。
明らかに俺の攻撃を警戒して翼で風を起こす選択をしなかったように見える。
高度を上げた状態からこちらへ向けて羽根を放ってくる。
「またか。『エクスプロージョン』」
俺と葵は爆炎で炎の壁を作りつつ、その場から移動して回避するが残りの二体も乗じて攻撃を放ってくる。
「葵!」
「『エクスプロージョン』はい。大丈夫です。」
やはり守勢に回ると一気に押される。
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