第123話 空を飛ぶモンスター
上空を翼の生えた人型のモンスターが飛んでいた。
大きな翼に人を思わせる頭部と雌であろう身体を持ち、足には大きな鉤爪が見て取れる。
「あれはハーピー?」
「そうですね。あのような特徴を備えたモンスターはハーピーしかいません」
サバイバーになってから初めての空を飛ぶモンスターだ。
「葵、戦ったことは?」
「ありません。Eランクの中でもかなりレアモンスターです」
上空の敵と地上の俺たち。上空の優位性は計り知れない。
まず俺のスキルのうち『ライトニング』とおそらく『エクスプロージョン』は届かない。
『ボルテックファイア』ならいける気もするが、上空を舞う敵に命中させるのは容易ではないだろう。
『風舞』の射程限界がよくわからないが遠薙さんの前で使う事は憚られる。
「私がやってみます『エクスプロージョン』」
葵がオリジナルの爆炎を放つが、オリジナルの火力をもってしてもやはりあと少し届かない。
「それなら! 『ウィンドカッター』」
葵が風の刃を放つ。俺たちの持つスキルの中で一番ハーピーに有効に思える一撃だ。
ハーピーがホバリングしながらその場で翼を羽ばたかせると、翼の前方に風が巻き起こり葵の攻撃が打ち消されてしまった。
「あ〜初めてだと難しいよね〜。よかったらこの前のお礼にお姉さんが手伝おうか〜?」
「いえ、大丈夫です。これはわたしたちが受けた依頼なので遠薙さんは、そちらでみていてください」
「そう、じゃあお手並み拝見させてもらうね〜」
感じる。周囲の風の精霊がざわついている。周囲の空気が一気に緊張する。
「葵、ハーピーは一人じゃ難しい。二人で倒そう」
「はい」
葵の『ウィンドカッター』が単発でダメなら二人でやるしかない。
落としてしまえば、それほど脅威はないはずだ。
「葵は『ウィンドカッター』を続けて。俺も併せてスキルを放つから」
「わかりました」
葵の『ウィンドカッター』とほぼ同時に『アイスジャベリン』を放つ。
先程同様に羽ばたきによって葵のスキルが相殺されるが、俺の『アイスジャベリン』も巻き起こる風を突破することができず、ハーピーへとダメージが届く事はなかった。
「まだだ! 『エクスプロージョン』」
以前のレイドで『エアロバースト』と『ウィンドカッター』をイメージして葵の『ウィンドカッター』にあわせ爆炎を放つが、俺の爆炎では威力が弱く、葵のスキルに負けてしまい、あの時のようにシナジー効果を発揮する事はなかった。
これで残る可能性は『ボルテックファイア』と『風舞』だけになってしまった。
想像以上に上空の敵と戦うのは難しい。
「凛くん!」
上空を旋回していたハーピーが再び羽ばたくと上空から複数の羽根がこちらに向けて飛んできているのが見える。
『エクスプロージョン』
眼前に迫る羽根に向けて爆炎を放ち、攻撃を防ぐ。
爆炎を逃れた羽根が地面のアスファルトに突き刺さる。
アスファルトに刺さる羽根。あれを身体に浴びたらただでは済まない。
あとがき
モブから始まる探索英雄譚1巻発売から10日が経過しました。皆さんのおかげでなんと書籍売上ランキングで今HJ文庫で1番人気!です。2巻発売まであと1ヶ月半、まだの方は2巻の発売に備えて、1巻を是非買ってください。お願いします。
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