第122話 姫は女子大生

遠薙さんにマップを転送してから準備を始める。

無用に時間を使ってしまったので早く向かいたいところだ。

最短で準備を済ませて表に出ると既に葵が待ってくれていた。

今回かなり急いだつもりだったが葵はいつも俺よりも先に準備を終えて待っていてくれる。

本気で着せ替えマジックでも使っているのかと勘繰ってしまいそうになる。


「それじゃあ向かおうか。だけど本当に遠薙さん来るかな」

「あの方は来ると思います」


葵の言葉の根拠はよくわからないが、まあ現場に着けばわかる事だ。

ロードサイクルで向かうが今日はいつもよりも風が強い気がする。


「凛くん、そろそろです」

「うん、わかった」


俺と葵は自転車を降りて目的地へと向かうが、まだ遠薙さんの姿は見えないので間に合わなかったのかもしれない。


「モンスターはどこだろう」

「移動したのか、見当たりませんね」


周囲を歩いてみるが、モンスターの姿が見えない。おそらく直前で移動したのかもしれないので、慌てて周囲を探索する。

小走りにモンスターを探していると、後方から軽いエンジン音が聞こえて来た。


「凛く〜ん、間に合った〜」


後方を見ると遠薙さんが、お洒落な原付に乗って近づいて来ていた。


「遠薙さん本当に来たんですね」

「凛くんひど〜い。お姉さん約束した事は守るんだから」

「遠薙さんの移動手段は原付なんですね」

「そうよ〜この子可愛いでしょ」


この子……原付のことか。


「遠薙さんって普段何をしている人なのか聞いてもいいですか?」


結構頻繁に連絡が入るし、原付の感じもあまり社会人という感じがしないので思わず聞いてしまった。


「え〜私に興味が湧いて来たのかな〜」

「いや、そういうわけでは……」

「遠薙さん! 冗談はやめましょう。笑えません」

「葵ちゃんもきびしいわね。私はね〜女子大生よ。女子大生」

「遠薙さん大学生だったんですか?」

「そうよ。これでも去年のミスキャンパスなのよ。凛くんは高校二年生になるから大学生にはまだ二年あるのね。残念〜お姉さん凛くんと一緒にキャンパスライフを送ってみたかったのに〜」

「え〜と、遠薙さんは何年生なんですか?」

「次で3回生。あと二年で卒業しちゃうの〜」


次で3回生という事は二十歳ぐらいなのか? 妙にお姉さんぶっているけど、そこまで俺と変わらない年齢だったらしい。

二十歳でBランクか。すごいな。


「凛くん、遠薙さんは置いておいてモンスターを探しましょう」

「ああ、そうだな」

「モンスターがいないのね。お姉さんも手伝っちゃう」


モンスターを探して廻るがなかなか見つからない。


「あ〜だから見つからなかったのね〜。それにしても珍しいわね。凛くん、敵モンスターはあそこにいるわよ」


遠薙さんの指差す方向に目をやると確かにモンスターらしき姿が見て取れる。

そのモンスターは空中を空を飛んでいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る