第120話 オーダーバイキング

俺の着替えショーはそのまま続き、結局四軒ものお店を梯子することになってしまった。

ショッピングモールなので複数のお店を一度に回るのは当たり前なのだろうが、そもそもショッピングモールにほとんど来たことのない俺からすると、かなりハードだった。

自分から頼んでおいてあれだが、葵も女の子なのでお買い物に対する感覚が俺とは大きく異なるらしい。

俺だけなら一軒目で全部買い揃えて終わっていたと思う。

そもそも一人なら一軒目のようなお店には入れてないな。

やっぱり葵にお願いしてよかった。これで葵の両親にも変に思われずに済むと思う。


「凛くん、せっかくなのでランチを食べて帰りませんか?」

「そうしようか。お礼に奢るから好きなのを食べてよ」

「いいんですか?」

「うん、もちろんだよ」


わざわざ付き合ってくれたお礼にちょうどよかった。

お腹も空く時間になってきたので飲食店のエリアに向かう。


「すごいな……」


ファミレスさえほとんど行ったことがないので、もちろんショッピングモールで食事をするのは初めてだ。

和洋中のお店がずらりと並んでおり、しかも既にお店の外には人が並んでいるお店も見受けられる。

こんなに飲食店がいっぱいあるとは思っていなかったので、どのお店がいいのか見当もつかない。


「凛くん、食べたいものとかありますか?」

「俺はなんでもいいんだけど、葵の行きたいお店でいいよ」

「それじゃあ、あのお店はどうでしょうか? ランチは少し値段も安くなっているので」

「パスタとピザのオーダーバイキング」

「はい、注文すると出来立てが食べられるんです。おいしいんですよ」

「じゃあ、ここにしようか」


オーダーバイキング。言葉の意味はわかるが、バイキングもオーダーバイキングも初体験だ。しかもパスタとピザが食べ放題!?


お店の前に数人並んでいたので、椅子に座って順番を待つが十分ほどで席へと案内された。

お店の人が注文の仕方を説明してくれたが、タッチパネルで注文できるらしい。

早速タッチパネルを確認してみるが、画面にはとんでもない数のメニューがのっている。

ほとんど食べたことのないものばかりだ。


「凛くん、せっかくなので色々頼んでシェアしませんか? 小さめなのでいろんな味を楽しめると思うんです」

「じゃあ、そうしようか。葵が食べたいのを頼んでよ」


正直どれを頼んでいいかわからなかったので、助かった。

葵がタッチパネルでオーダーすると五分ぐらいでパスタがやってきた。


「早いな……」


感覚的には頼んだらあっという間に届いた感じだ。


「それじゃあ、取り分けますね」


葵が小皿にそれぞれ取り分けてくれる。


「うまいな……」

「はい、おいしいですね」


想像していた以上に出来立てパスタが美味しい。

パスタを食べているうちにピザも出てきた。

ピザも半分ずつにして複数の種類を食べてみるが焼きたてでおいしい。俺が今まで食べたことのあるピザの中でもダントツにおいしい。

これが1000円ちょっとで食べ放題!? 

明らかに俺の想像していたバイキングとは違う。

確かに食べ放題のバイキングへの憧れは昔から持っていたが、勝手なイメージで量と種類で勝負していると思っていた。

だけど、これは完全に味で勝負している。おまけに食べ放題! これはやばい。


「ふふっ、気に入っていただいたみたいでよかったです」

「葵はここに来たことがあったの?」

「はい、クラスメイトと来たことが、何度かあります」

「クラスメイト……」

「あっ、もちろん女の子ですよ。女の子!」

「あ、ああ……」


別にそういう意味ではなかったんだけど、パーティを組んでから葵がクラスメイトとどこかへ行くということがなかったので意外だった。

考えてみると葵は学校でも人気者だ。もしかしたらボッチの俺に気を遣って合わせてくれていたのかもしれない。


「いつでもクラスメイトとくればいいからね」

「凛くん……わたしとじゃお嫌でしたか?」

「いや、いや、いや、嫌なわけない。葵と来れて嬉しいよ。オーダーバイキングなんか初めてで、感動してたぐらいだから」

「よかった。じゃあまた一緒に来ましょうね」

「うん、葵さえよければ」

「良いに決まってるじゃないですか。春休みの間にまた来ましょうね」


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