第119話 着せ替え
今日は朝からショッピングモールへとやってきている。
「凛くん、どんな服がいいでしょう」
「そうだな〜恥ずかしくない服で」
「別に凛くんがどんな服でも恥ずかしいなんて事はないです」
「じゃあ、ちょっとよそ行きというか、大人っぽい感じの服がいいかな」
俺としてはどんな服でもいいけど、葵の両親に会っても恥ずかしくない服が希望だ。
ストレートに言うと気を遣わせそうなので、それっぽい希望を葵に伝える。
「わかりました。大人っぽい感じですね。凛くんはどちらかというと童顔なので、あまり派手なものより落ち着いた感じの方が似合いますね」
そこから葵とモールの中を歩いて回って数件のお店に入った。
「これもいいです。あ、でもこっちも似合いそうです。やっぱりこっちの方が……」
葵が店内の服を次々に手に取っていく。
「葵、そんなにいっぱいは……」
「凛くん、早速試着させてもらいましょう。すいませ〜ん、こちらの服を試着お願いします」
葵がお店の人に声をかけて、試着室へと連れて行かれることになった。
「じゃあ、こちらからお願いします」
「は、はい」
そこからは、俺の着せ替えショーが始まってしまった。
葵の持ってくる服を順番に着ていき、葵に見てもらう。
「うん、いいです」
「じゃあ、これにしようかな」
「いえ、凛くんせっかくなので色々着てみましょう」
「わかったよ」
正直自分では似合っているのかもわからないので、この場は葵にまかせるしかない。
次の服に着替えて再び葵の前に行って見てもらうと
「うん、これもいいですね」
「じゃあ、これがいいかな」
「凛くんまだいっぱいあるのでお願いします」
「はい」
確かに用意された服はまだまだある。
先に着た服も悪くなさそうだったし、もういいんじゃないかなと思うが葵も付き合ってくれているので試着を続ける。
「葵、着てみたけどどう?」
「うん、いい感じです。これもキープですね」
キープって、一体何着選ぶ気なんだ?
「これもいつもの凛くんと雰囲気が変わっていい感じですね。うん」
「葵、これにしようかな」
「凛くん、あちらもお願いします」
「はい」
そもそも服を試着した経験がほとんどないのに、今日だけで一生分の試着をしてしまいそうな勢いでどんどん服を着替えていく。
新しい服に着替えるたびに葵が
「うん、いいです」
と言ってくれるので、全く嫌な気はしないが、全部いいですと言われるとどれを選んでいいのかわからなくなってしまう。
「凛くんには、こちらの服が一番似合っていると思います」
「それじゃあこれにするよ」
ようやく葵のお眼鏡にかなう服が見つかったようだ。
「凛くん、今日は何着の予定ですか?」
え!? 何着って事は一着じゃないって意味だよな。
「別に決めてないんだけど」
「それじゃあせっかくなので三着ぐらいいいですか?」
「それはもちろんいいけど」
「じゃあ、このお店ではその服にしましょう。次はあっちのお店に行ってみましょう」
「はい」
どうやら、まだまだ終わらないらしい。
俺としては、葵に服を選んでもらえるだけでありがたいので文句はない。
あとがき
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