第118話 さらばもふもふ

雷が猫又を捉えてその身を焦がす。


「フ〜ウギャア〜」


ふぁふぁだった毛は黒く焦げ、もう、もふもふではない。

猫又が最後の力を振り絞るように炎の塊を二発放ってきたので『エクスプロージョン』で迎え撃つが、葵も『エクスプロージョン』を放ち二発とも無効化に成功した。

撃ち終わりを狙って『ボルテックファイア』を放つ。

炎雷が猫又を捉え消滅へと追いやった。


「凛くん、ごめんなさい」

「ああ、謝る必要なんかないよ」

「いえ、わたしのせいで凛くんに負担をかけてしまいました」

「この程度、負担なわけないだろ。こんなの何回でも問題ないから」

「凛くん……」


俺が葵にどれだけ助けられていると思っているのだろうか。

この程度の事は、お礼にすらならないと思う。


「やっぱり猫っぽいのがダメだった?」

「はい……。モンスターなのはわかっていたのですが、目の前のふぁふぁを見てしまうとどうしても攻撃する事ができませんでした。ごめんなさい」

「いや、全然いいんだけど、やっぱり女の子には厳しかったかもしれないな。見た目は、ほとんど大きな猫だったもんな。普通の猫でも食べ過ぎで巨大化するとあんな感じになりそうだし」

「次からは頑張ります」


ある意味精神攻撃にも近いものがあるので、葵がすぐに攻撃できるようになるのは難しい気がする。もし今後ももふもふタイプのモンスターが出た場合は、俺が攻撃役を担当した方がいいだろう。

それにしても猫又の尻尾は思っていた通り二本だった。尻尾が二本のモンスターがいるという事は九尾のキツネとかもいるんだろうか。

九尾の狐が相手だとしても葵には無理そうだな。

猫以上にもふもふのような気もするし、尻尾もきっともふもふだろうから攻撃できないだろう。

愛らしい姿に反して猫又は結構強かった。攻撃力はそこまででもなかったが、幻術を使った分身にはかなり惑わされてしまった。結局最後まで幻体を見破る事は出来なかった。

魔核を三つ拾い集めてロードサイクルで家へと向かいが、よほど先程の戦闘がショックだったのか、葵は一言も喋る事なく家へと着いた。


「それでは凛くん、早速続きを始めましょう」

「え!?」

「ですので、復習の続きをやりましょう」


確かに討伐以外は、勉強する事にはなっていたがやっぱりやるのか。

葵の切り替えの速さに驚いてしまう。

さっきまで落ち込んでいたはずなのに、今は微塵もそんな事を感じさせない。


「葵、もう大丈夫なのか?」

「なにがでしょうか?」

「いや、いいんだ。勉強……しようか」

「はい、そうしましょう」


その後、晩御飯を挟んで二十二時までしっかりと勉強する事になってしまった。

春休みの初日から勉強と依頼をこなして、まるで優等生のような生活ぶりだ。

去年の春休みはここに引っ越して来たばかりで、勉強なんか一分たりともしていなかったので一年で生活が激変してしまった。

寝る時に今日の事を思い返して、自分のことなのに妙に感心してしまう自分がいた。

明日は葵と服を買いに行く予定だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る