第115話 もふもふ
ロードサイクルで駆け抜ける。
外の風が気持ちいい。
ずっと座っていたので、ロードサイクルを漕ぐこの時間が嬉しい。
ただ今日の現場はそれほど遠くはないので、後少しで到着してしまう。
「凛くんそろそろです」
「わかった。ここから降りて歩こうか」
自転車を脇へ置いて現場へと歩いていくとモンスターらしき姿が三体確認できた。
「猫?」
モンスターらしきその相手の姿は、どう見ても猫。
距離がまだ結構あるのに、ここから姿が確認できているので普通の猫よりは大きいのはわかるが、どう見ても、もふもふの猫だ。
「葵、あれって猫?」
「猫ですね。でもあれは猫又でしょうか」
「猫又か」
猫又といえば日本の妖怪か。
確かにその猫の姿をよく見ると尻尾が二本生えているように見える。
「かわいぃ……」
「え!?」
横から葵の声が聞こえてきたが、聞き間違いでなければ「かわいぃ」と聞こえた気がする。
もしかして、もふもふ!
「葵! あれは猫じゃない、猫又だぞ!」
「それはわかっています。初めて見たのでちょっと驚いただけです」
「それじゃあ、さっさと片付けよう」
「え?」
「いや、だから、早く倒さないと」
「倒すんですね……」
「葵、あれはもふもふかもしれないけど、猫じゃない。猫又だ、モンスターなんだ!」
「それはわかっています」
あの猫又、一般的な猫に比べて毛が長くふわふわだ。
大きさも普通の猫より大きいので昨日見た虎の赤ちゃんを彷彿とさせるが、あくまでも人に害を及ぼすモンスターだ。早く倒すしかない。
『ライトニング』
猫又の一体に向けて雷を放つ。
「あっ……」
横からは再び葵の声が漏れてきた。
葵を見ると、明らかにショックを受けた表情で、雷の落ちた方を眺めている。
わかっているとは言っているが、これは無理かもしれない。
猫又がこちらを向いて毛を逆立てて唸り声をあげている。
一撃で倒す事は出来なかったようだが、ゆっくりしている時間は無い。
俺は、一人で三体を倒すつもりで臨む。
『エクスプロージョン』 『エクスプロージョン』 『エクスプロージョン』
猫又の能力はなんだ? 猫型のモンスターというだけか?
三体に向け爆炎を放ち様子を伺う。
炎はあまり得意では無いのか、大きく跳ねて逃げているが、その姿を追いかけると
「あれ?」
猫又が五体に増えている。
突然猫又の数が二体増えた。
俺が驚く間も無く、眼前の猫又は六体となった。
どういうことだ? 突然目の前で数が倍になった。
「凛くん! あれは猫又の能力である幻術です」
「幻術? どこからどう見ても幻には見えないけど、半分は幻術による幻なのか」
本体と幻の区別が全くつかない。
六体それぞれが質感を持ち別々の動きを見せている。
いきなり六体のモンスターに囲まれたような錯覚を起こし緊張が走る。
六体全てに意識を向ける事は難しい。
あとがき
ついに本日よりモブから始まる探索英雄譚1が発売です。
既にwebで購入いただいた方は本当にありがとうございます。
まだの方は是非HJ文庫の売り場を見つけて購入お願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます