第116話 猫又
目の前の六体の猫又がほぼ同時に尻尾から炎の塊を放ってきた。
葵は半分が幻術によるものだというが、どう見ても炎の塊は六つ見える。
「葵!」
「大丈夫です! しっかり見極めて避ければいけます」
葵の言葉に従い炎を凝視するが、全くわからない。
無理だ!
『アイスジャベリン』 『アイスジャベリン』 『アイスジャベリン』
向かってくる炎のうち正面の三つに向けて氷の槍を放ちその場から離脱を図る。
『バシュウッ』
炎と氷の槍の一本がぶつかって水蒸気を上げながらその場で小型の爆発を起こす。
残りの二本は炎をすり抜けるのが見えた。
二本は幻術か!
結果俺は三つの炎を消す事に成功し、無事攻撃を避けることが出来た。
葵は『ウィンドカッター』を一発放つだけで、炎の攻撃から上手く回避していた。
「葵、もしかして見えてるのか?」
「はい、偽物の方にはなんとなく違和感があります」
違和感? 俺にはそんなものは全く感じられない。全て本物にしか見えなかった。
「凛くん! もう一度来ます」
再び猫又が炎を放ってきたので先程同様に『アイスジャベリン』を放ち回避する。
猫又の放つ炎は俺のアイスジャベリンでも防ぐ事ができる程度の威力なのでスキルとしては大した事はないが、ただの人である俺がくらえば無傷ではすまない。
そして幻術で生み出された幻影は、本体と全く同じタイミングに攻撃を放ってくるので厄介極まりない。
さっきのでアイスジャベリンを既に六発使用してしまったので、次は同じようには防ぐ事ができない。
「葵! このまま避けていても状況が悪くなるだけだ、こっちから攻めよう」
「わかりました。私は右側の三体を狙います」
俺は左の三体を狙う。即座にスキルを一体の猫又に向けて放つ。
『ライトニング』
雷が猫又の一体を捉えるが、雷はすり抜けて地面へと落ちる。
あれは幻体か。
一番真ん中のやつは幻体なのがわかった。
なら左右のやつが本体か?
『ライトニング』
左手の猫又に向けて再び雷を落とすが、またもや雷は猫又の姿をすり抜けた。
こいつもか!
という事は一番右側が本体。それに葵の方に二体いる事になる。
早く倒して葵のフォローに入る必要がある。
三度『ライトニング』を放とうとした瞬間
「きゃっ……」
この声はまさか……
葵の方を見ると俺の心配は的中していた。
葵は猫又を前に攻撃を当てる事ができずに、猫又に攻め立てられていた。
先程『ウィンドカッター』を放っていたので安心してしまっていたが、よく考えるとあれは猫又の放った炎に向かってスキルを放っていた。
葵は猫又本体への攻撃は一度も行なっていなかった。
あれほど猫又は猫じゃないと言っておいたのに、残念ながらその効果はなかったようだ。
「葵! すぐに助けるから!」
時間をかけている暇は無い。
「さっさと消えて無くなれ! 『風舞』」
俺は一番右側の猫又に向けて『風舞』を放つが収束した風の刃は猫又を切り刻む事はなかった。
あとがき
ついにモブから始まる探索英雄譚1が発売になりました。
既にwebで購入いただいた方は本当にありがとうございます。
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