第113話 天使はふぁふぁが好き

ゴブリンファイターを倒して家に戻って来た。


「明日からなんだけど、余裕があれば一日に二回は依頼を受けれたらと思ってるんだけど、どうかな」

「凛くんがそれでいいなら私はいいですよ」

「できれば春休み中に模倣スキルの入れ替えもしたいと考えてるから、他のサバイバーと会える機会を増やしたいんだ」

「わかりました」


依頼の回数を増やせば、それだけ他のサバイバーと遭遇する機会が増えるはず。

この春休みの2週間でどうにか強力なスキルを模倣したい。

とりあえず明日からの予定も決まったので、今日はテレビを見ながらゆっくり過ごす。

最近葵と一緒に動物の出ている番組を見ることが増えている。

たまたま、動物の赤ちゃんが出ているテレビ番組を見ていた時に葵が今までにない反応をみせ、ニコニコになっているのを見てから、なんとなく動物の出ている番組を見るようになった。


「ふぁあ、かわいい……」


テレビには虎の赤ちゃんが映っているが、葵は吸い込まれるように画面に見入っている。

俺ももちろん虎の赤ちゃんはかわいいと思うが、それよりも横で子供のような反応を見せている葵の方がずっとかわいいと感じてしまう。

葵の横顔をチラチラと見るが、虎の赤ちゃんを見る事に集中していて全く気づく様子はない。


「ふわふわです。あ〜よちよち歩きです。あ〜かわいぃ……」


葵は本当に動物が好きなんだな。普段見せる感じとは全く違う表情を見せている。学校でもこんな態度は見たことがない。

こういうのをギャップ萌えっていうのだろうか。

いつもの凛とした葵もかわいいと思うが今の葵も本当にかわいい。

もし天使がいるとすれば、無邪気に動物の映像を見ている今の葵はまさに純真な天使ように見える。

動物の番組を見るたびに、こんな感じの葵を見ることができるので、最近この葵の姿見たさも手伝って動物番組を見る機会が自然と増えてきている。


「葵は虎が好きなのか?」

「いえ、そういうわけでは……」

「犬と猫ってどっちが好きなの?」

「どちらがという事はありませんが……」


どっちも好きなのか。


「まあ、赤ちゃんは特にかわいいな」

「そうなんです。ふぁふぁなのがいいですよね。もふもふ感がなんともいえませんよね。あの虎さんもぬいぐるみみたいです」

「そういえば葵はぬいぐるみとか好きなの?」

「い、いえ、さすがに高校生になってぬいぐるみが好きとかはないです」


ああ、ぬいぐるみが好きなんだな。葵の部屋の中を見たことがないのでわからないが、もしかしたら葵の部屋はぬいぐるみであふれていたりするのかもしれない。

それにしてもこんなにわかりやすい葵も珍しい。


「よかったら今度動物園でもいかない? 俺あんまり行った記憶がないから行ってみたいんだけど」

「動物園ですか? はい、是非行きましょう! いつがいいですか? 明日にしますか?」

「明日? 春休みが始まったばかりだし、少し調べてからでいいと思うけど」

「じゃあ明後日は凛くんの服を買いに行くので明明後日にしますか? 凛くんと動物園ですね。あ〜楽しみです♪」


思いつきで動物園に誘ってみたが、思った以上に葵の反応がよかった。

明らかに普段よりもテンションが上がっている。

動物園に行くのは小学校の時の遠足以来だな。

テレビの映像でも、あんな感じなので、葵が本物の動物を見てどんな感じになるのか今から楽しみだ。

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