第110話 終業式の後
「あ、凛くん! それではこれで失礼しますね」
俺が覗いているのに気がついた葵が砕け散った男子生徒を後にして俺の方へとやってきた。
「もういいの?」
「はい、大丈夫です。帰りましょう」
「それじゃあ帰ろうか」
さすがにさっきの事に触れる勇気も無いのでそのままいつものように帰ることにする。
「明日から春休みか〜。結局葵はどうするんだ?」
「はい、日本にいる事になりました。パパとママが来てくれるそうです」
「あぁ、そうなんだ。いつくるか決まってるの?」
「多分来週ぐらいだと思います」
「来週!?」
「はい、4月になるまでには日本にいると思います」
春休みは2週間程度しかないので、来週というのはなにもおかしくはないけど来週か。
「葵、俺葵の両親と会うような服を持ってないんだけど」
「別に普段着で十分ですよ」
「いや、そういうわけには……」
俺の普段着は今の季節分は無地のトレーナーにデニムのパンツ以外には無い。
今まで服にまで気を回している余裕もなかったし興味もなかったので、俺の私服は一般の高校生に比べて数も種類も圧倒的に少ない。
俺の当てにならない常識に照らしてみても、お金持ちの国モナコからやってくる葵の両親にヨレヨレのトレーナーにデニムはまずい。
なにかで第一印象でその後が90パーセント決まると聞いたことがある気がする。
「葵! 今週買い物に付き合ってもらえないかな。どうしても服を買いたいんだ!」
「そんな無理をしなくても、いつも通りの凛くんで十分です」
「ちょうど服を買いたいと思ってたところだったんだ」
「……そうですか。わかりました。私はいつでも大丈夫です。ありがとうございます」
俺の壊滅的なセンスでは新しく買っても大惨事を招く恐れもあったので、葵についてきてもらえるなら助かった。
葵のありがとうの意味がよくわからないがこちらこそありがとうだ。
「それじゃあ、早い方がいいと思うから明後日でもいいかな」
「はい、それじゃあ明後日買いにいきましょう」
早速葵にお願いして服を買いに行く事になったので、とりあえずこれで服の心配は無くなった。
家に帰ってからお昼ご飯を食べて、家で休憩しているとサバイブが鳴った。
『『ピピッ』』
「それじゃあ、準備して行こうか」
「はい」
このやり取りも何回目になっただろうか。
もう慣れたもので、葵とのルーティンがほぼ出来上がっているので、依頼が入っても特に焦ることもなく、討伐に向かう準備を始める。
それぞれの準備が整うと表で待ち合わせて、そのままロードサイクルにまたがる。
俺のステータスの件が何もわからず解決もしていないので、あとどれだけこれと同じことができるのかは、俺にはわからないが、今はこの感じが心地良い。
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