第108話 3月14日
サバイバー協会で相談したものの結局よくわからなかった。
ただ可能性として俺はまだ成長限界を迎えてないかもしれないという事だけは少し希望が持てた。
家に帰るとすぐに葵がやってきたが、今日の事はなにも聞いてこなかった。
葵のことなので何か感じ取って気を遣ってくれたのかもしれない。
葵が部屋に帰ってから、こっそり外へと出て『アイスジャベリン』を上限回数まで発動してみたがやはり何の変化もない。
小ぶりな氷の槍がいつものように発動するだけだ。
協会事務所の人はレベルアップの過程の事象なのではと言ってくれが、なにをどうしてもそれらしい変化は一切見て取れないので、そんな都合のいい事は起こらないのかもしれない。
それから三日間はいつも通り過ごして依頼も毎日のように受けたが、別に弱くなったわけではないので、問題なくモンスターの討伐はこなす事ができた。
もうすぐ春休みだが、極力依頼をこなして、できることなら強力なスキルを模倣したい。
ただ今日に限ってはそれより大事な事がある。
今日はホワイトデーだ。俺にとっては初めてとも言えるイベントだがバレンタインデーにチョコレートをもらったからには必然的にホワイトデーにお返しをすることぐらいは俺でも理解している。
「おぅ、お前はいいよな、はぁ〜」
本田が気配を薄めるかの如く、その大柄な体躯を縮めながら一言言葉を発して去って行った。
「ダメだったのか……」
バレンタインデーに本田が教室内をウロウロしていたのは目に入ったが、結果がどうだったのかは確認していなかった。
たださっきのでわかった。
本田は誰からもチョコレートをもらえなかったんだな。
俺もあまり人のことを言えたものではないが、本田はその大きな体躯と同じくらい態度も大きい。普段の態度からどう見ても女性に優しい感じには思えないのでその辺を女の子も感じ取っているのだろう。
一方で新城は相変わらずモテるようで、既に複数の女子生徒に、教室でお菓子を渡しているのを見かけた。
本田は今でこそあれだが、最初は俺の中で新城と同列の存在だった。
ただ女の子の中では新城と本田は同列では無かったらしい。
そして俺は先日協会へ行った帰りにプレゼントを買っておいた。
以前時計をプレゼントしたしスタンバトンやナイフもプレゼントしたので正直なにをプレゼントすればわからなかったので、何件か店を周り店員さんに聞いてみた。
まず考えたのは貴金属だが、葵も学生でサバイバーなので身につける機会がほぼ無い。
店員さんに指輪ならいつでもつけておけると勧められたが、さすがに恋人でもない相手に指輪を贈るのはハードルが高すぎて断念した。
服も考えたが、俺にはセンスが破滅的に無いのと葵の服のサイズを知らないので断念した。
悩みに悩んで店員さんおすすめの財布を買うことにした。
金額はそれほど高くはないが、葵にぴったりの水色の財布だ。
俺のチョイスには全く自信がないので、店員さんの能力ににかかっている。
葵が喜んでくれるといいけどな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます