第107話 相談

「なるほど、ご相談の内容はわかりました。少しお待ちください」


そう言って係の人は奥に戻っていったので、その場の座ってしばらく待つ事にするが五分ぐらいすると係の人が戻ってきた。


「お待たせしました。サバイバーの皆様のデータベースを確認していたのですが、まず山沖さんのスキル『フェイカー』ですが非常に稀なスキルと言えます。ユニークスキルというわけではありませんが、日本で同じスキルを持たれている方は十人に満たない数です」

「はぁ、そうなんですか」


同じスキルを持ったサバイバーを見た事も聞いた事も無かったので珍しいスキルだとは思っていたが、まさか日本の数人レベルのレアスキルだとは思わなかった。


「そして山沖さん以外の方は皆さんGランカーとなっていますので、このスキルを所持されている方でレベル11まで到達されているのは、現状で山沖さんただ1人となります」


やはり『フェイカー』を所持している他のサバイバーも俺と同様に苦労しているのだろう。よほど運が良くなければレベル1時点の『フェイカー』でモンスターを倒すことは難しい。


「つまり比較できる前例が無いと言う事なんです」

「え?」

「実は山沖さんが言われているような事例は聞いたことが無かったので確認もしましたが、他に事例がありませんでした」

「一件もですか?」

「はい、一件もありませんでした。ですので山沖さんのスキル特有の事例なのかとも思ったのですが、先ほど申し上げた通り、比較する対象がいないので確認のしようがありません」

「そうなんですか……」


日本で俺だけに起こったエラー。俺はどれだけ運が悪いんだろう。せっかくここまでレベルアップしたのに。


「ここからは、全くの私見となりますのであくまでも一つの意見として聞いてください」

「あ、はい」

「まず成長限界についてですが、確かにサバイバーの方には成長限界があります。それぞれ人によって限界値は異なりますが、山沖さんのは少し違う気がします」

「違う?」

「はい、普通成長限界を迎えるとレベルが上がらなくなるんです。レベルが上がってステータスが上がらないというのは、成長限界を迎えたのとは別種の理由なのではと思います」

「そうなんですか!? それじゃあどうして……」

「そこまではわかりかねますが、エラーについても同じく、もしかしたらエラーでは無いのではと思います」

「どういう意味ですか?」

「ステータスのエラーというのは今まで認められていません。山沖さんだけにそれが起こる事は考え難いです。しかもレベルアップの度に変化があったという事はエラーではなく、山沖さんのスキルのレベルアップに連動している事象なのでは無いでしょうか?」

「すいません。意味がよくわからないのですが」

「あくまでも一つの可能性ですが、レベルアップしてステータスが上がるかわりにスキルに変化を起こしてる可能性があるのではと推察します」

「でもスキル自体に変化はなにも……」

「あくまでも可能性ですので。あまりお役に立てず、すいません」

「いえ、相談にのってもらって助かりました。ありがとうございます」


相談を終え俺は協会事務所をあとにしたが、俺は成長限界を迎えたんじゃ無いのか?

それにステータスのあれはエラーじゃないのか? レベルアップによる変化だとしたら一体なにが変化してるんだ?

スキルの威力が増したわけでも使用回数が増えたわけでも無い。

協会事務所を訪ねてみたが答えをもらうどころか、今まで以上によくわからなくなってしまった。

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